金出武雄「素人のように考え、玄人として実行する」PHP文庫

公開日: : 最終更新日:2011/09/19 書評(書籍)



ページを繰るたびに新鮮な刺激を受ける。コンピューターと人、発想の仕方、研究の仕方。素朴な分析と深い考察。ある書店に平積みになっていたこの本のタイトルに強い共感を覚えて購入。その期待に違わない読み応え。予想外の収穫。これで680円はバーゲン



p44. MITミンスキー教授「みんなの言うことの反対をしていればよい。みんながよいという考えに大体ろくなことはない」

p59.メッセージのある研究をしろ!他者を驚かせ、触発させるような心を動かす研究をしろ!

p62.よくできる人は、研究や仕事を始める前に、これをやったらこんなものができる、こんなふうに社会の役に立つだろう、さらに、人に「いいでしょう」と言う、その言い方まであらかじめ決めているのではないかという感じがする

p73.”Keep it simple, stupid”。ネイセイヤーに対して「終わる前にうまくいかない理由をぐだぐだ考える暇があったら、早くやれ。最後までやってから、ダメだったらダメでした、と言えばいいのだ」

p89.アーサー・C・クラーク「科学者があることは可能であると言明した時は、彼はほとんど間違いなく正しい。彼が不可能だと言った時は、非常に高い確率で間違っている」

p93.夏目漱石が英語教師をしていたとき「教師たる余が今、教壇で逆立ちをするのはPossibleであるが、Probableではない」

p95.「つまらないアイデアだから先生に聞いてもらうほどではない」、「素晴らしいアイデアを思いついたのだが、まだ完成していないから口外しない」。いずれもはなはだ疑問。経験的には、そういう人のアイデアが後で実を結んだというのを耳にすることは少ない

p99.アイデアを人に話すと盗まれないか?「相手は知らなかった。ということは、あなたよりもあとから考え、やり始めたということだ。しかも先にいいことができてしまった。これは何を意味するか。敵のほうが頭がよく、やり手であることが証明されたようなものだ。つまり、相手のほうが先に何かやる確率が、もともと高かったのだ。結局、言っても言わなくても、いずれ向こうに負けただろう。この場合は、あきらめたほうがよろしい」

p112.数学者アダマールが書いた「発見の心理」で紹介された事例。フランスの大数学者ポワンカレが、ある日馬車に乗ろうとステップに足をかけた瞬間、あるひとつの重大な問題の解法を思いついた。それはポワンカレが日頃その問題を持続的に考えていて、それが積み重なり、閾が開き、解法がポンと飛び出たと解釈すべきという。実際、ポワンカレの話を聞いたほかのフランスの数学者が何度も馬車のステップに足をかけたが、良い考えはひらめかなかった

p130.コンピュータの計算能力は人の1万分の1から、ひょっとすると100万分の1

p131.「ひも」も計算する?「計算」というのは、①その内容自身と、②それをどう表現するかと、③どんな道具を使って実行するか、の3つはわけて考えるべき

p143.チェスでディープ・ブルーに負けたカスパロフは「新しい知性を感じた」と言った。人とコンピュータを同次元においている。負けた時、彼がきわめて不機嫌だったことがそれを証明している。もし、腕相撲自慢が大型電気モーターに負けた時のように、別次元のものと見たのだったならば、不機嫌にはならなかっただろう

p171.記憶力には、覚える力と引き出す力の2つがある。いくら覚えても、それを引き出せなければ役に立たない。しかし、覚えていないものは引き出しようがない。つまり、その両方を鍛えないと、記憶力は生きてこない

p174「将棋を直感で指す」と羽生善治は言った。羽生さんは6歳の時に将棋を覚えたそうだが、習い覚えたころは、「こう指すと、こうなって…」と、実際に手を使ったりして駒を動かしていたのではないか。脳の中の神経細胞であるニューロンのある組み合わせが毎回毎回発火していたが、その発火の仕方がいつも同じなので、そこに結合が生まれる。ファームウェア化したのだ

p218.私の本当の貢献は彼らを信じることだった。「あの時、タケオが心配そうな顔をせずに『できる、できる』と言い続けたことが、自分たちが最後まで仕事ができた理由だ」と言ってくれた

p278「タケオ、あのチェルノブイリのロボットをすぐに日本にもって行こう。日本の人は喜ぶだろう。われわれが提案しようじゃないか」

p281.NRCの報告書によると、9・11同時テロのとき、インターネットは初めから最後まで、多少速度が落ちても、その機能をほぼ完全に維持できた唯一の通信手段だった

p285.インターネット社会。共同研究は互いが競争意識を持つぐらいの緊張感が強いもの同士のそれが成功する。弱いもの同士が集まったのではろくなことにはならない

p289.アメリカが発表した対テロ協力20カ国に日本の名前がなく、パウエル国務長官が「あれはミスだった」と誤った。「ミスだった」ことに日本としての問題がある。これがイギリスなら、タイピストですら「イギリスがありませんが、いいのですか」と言ったはず

p301.リーダーシップ。NASAの前長官ゴールディン氏「あのやかましい犬を黙らせろ!私が金を出したのは、あいつががたがた言ったからではない。あなたのロボット研究所がよい仕事をしているからだ。誤解するな!」しかし、それがひとしきり済むと…

p305.「学生の運命を1人の教授が決定するのは不公平であり、教官全体で正しく評価すべきである」「これから先、見込みのない学生には早く別の道を探させたほうが本人のためである」

p307.テニュア制は昇進の最低速度を決めているのであって、最高速度は無制限なのである。「5年以上在籍したものに限る」などと、最高速度を決めたがる日本のシステムとは逆



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