司馬遼太郎「功名が辻(3)」文春文庫

公開日: : 最終更新日:2013/03/20 書評(書籍), 司馬遼太郎



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(3)でも最初のほうは秀吉の話ばかり。仮想園遊会や醍醐の花見。登場人物は秀吉や家康などとポピュラーなので若干退屈。しかし、この辺の時代の描写にこれまであまり接していなかったせいか、それなりに楽しめた

秀吉が死に、関ヶ原が近づくに連れ、千代と一豊の活躍に話が戻っていく。上杉征伐のため関東にある一豊と大阪に留まる千代との連絡

本書では、戦国武将のパーソナルブランドに焦点が当てられている。信長は「革新、必勝、冷酷」秀吉は「人間味、奇想天外、大盤振る舞い」。家康は「温厚篤実、律儀、重厚、陰気」。一豊は「素朴、律儀、忠義、楽天、恐妻」。これら自体は有名であるが、本書では特に強調されているような気がする。これらが周囲の者にアピールして結果に繋がっていくというのが一つのテーマになっているようだ

(1)についてはリンク先を参照

(2)についてはリンク先を参照



p56.どの案をみても秀吉は、「いかん、世に在ったことじゃ」といった。すでに先例のあったような催しはやりたくない。「奇抜な!」といって人が手を打っておどりあがるような趣向をかれは望んでいる

p122.「企画力」があるのだ。千代はこの醍醐の花見をみて、つくづく、(この人が天下を取ったはずだ)とおもった。天下取りも構想力なのである

p143.「男とは、猟師型と農夫型とがある、と申します。大むかし、国土がひらけなかったころ、男どもは。猪や兎を追い、できるだけ多くの獲物をとるために身を粉にして山野をかけまわり、智恵をしぼってさまざまのわなを考案し、そのあくない新しいものへの獲得欲のために世がここまですすんできたと申します。農夫型の男もおなじです。大むかし、百姓は一枚でも田を多くつくるために林を伐りひらき、またあたらしい作物を雑草の中からみつけてはそれを苦心して育て、ここまで富んだ国土ができました。男の進取欲のあらわれだと思います。その欲望が、猪や田だけにとどまるはずがございませんでしょう。あたらしい女をみれば、それを得ようとするのが、男を動かし駆りたてている本然な欲望だと思います」

p173.幕末、この家から出たのが、乾退助であった。岩倉具視が忠告したので、乾姓をすて、先祖の板垣姓にもどり、板垣退助と名乗った

p182.「あれが展覧会のはじめだと思いますし、考えてみれば千代は服飾デザイナーのはじめだったようでもあります」

p198.「げんにあの方は、林羅山という学者を高禄で召しかかえておりましてな、ほかの諸侯のまねのできぬところです。あのひとがもし天下をおさめるなら、かならず文教をもっていするでしょう」

p240.家康は、平和を極度に怖れていた。このまま無事平穏がつづけば、豊臣体制がそのままつづくということになる。つまり、家康の位置も死ぬまでかわらぬ、ということになる。乱が、おこらねばならぬ

p264.「封書をしたまま、関東の殿様にお送りします」と千代はいった。この一言がのちに伊右衛門をして大封を得せしめた、と後世ではいう。千代にすればどうせ家康に付く、と方針がきまった以上、中途半端はいけない、徹底して味方すべきだとおもっていた。それには、石田方からきた公文書も見ない

p314.「そのあと、いまの山内対馬守が封のまま文箱を出した一件も申せ。されば律義者で通った対馬守さえ二心なくわが君に加担した、ということで、人はわれも遅れじとあらそって忠勤をはげむ心になるであろう。こういうときの人の心の不安は、存外、そういうことで一決し、まとまるものだ。さらに対馬守夫人のわれは自害せんという覚悟のほどをしたためた文面も披露せよ。されは、大方の者も、妻子を思う心を切りすてるであろう」





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