日下公人「『人口減少』で日本は繁栄する 22世紀へつなぐ国家の道」祥伝社

公開日: : 最終更新日:2012/09/15 書評(書籍), 日下公人



20050814073812





この著作は非常に愉快。きわめて幅広い実例と提案がある。いずれも興味深く、読み進めていくのに飽きることがない。プレインフィールドからの議論をしているが故に、どの話も逆説に満ちている。自分の先入観を壊してくれ、視野を広げることができる

少子化とその対策について頷くことしきり。金と暇がいくらあっても子どもが欲しいと思わなければできない。その直接的なメリットが見えにくくなってきたことから、それへの認識が薄れてきており、悪循環に陥っているように思う。乱暴ではあるが持論である「深く考えずにフィーリングで結婚して子どもを作ってしまえ」というのに近い記述もある

これだけの本に2000円弱の金額を惜しむことはない。購入する必要がある



p21.アメリカはイラク戦争でクロネコヤマトを真似して兵站をした

p23.民間軍事会社は世界に約100社あり、1年間の売り上げの総計は13兆円以上になる

p25.官庁にいる男たちは、女心を知らない。自分たちの周囲にいる女性官僚や大学同期といった、学歴もプライドも年齢も高い女性たちから女心を垣間見ているわけで、顰蹙を買うことを承知で言えば、”男性化した女性”に情報源が偏っている

p26.20代女性に「金と暇ができたら子どもを産みますか」と聞くと「まだまだ遊びたいから産みません」と言う。それならばと「遊びたくなるような、いい男がいますか」と問うと、彼女たちは一様に困った顔をする。少子化問題とは、よい男がいない、よい女がいないという単純な男女問題から考える必要がある。金と暇は根本的には出産とあまり関係がない

p27.10年働き、3年休むというように、遊ぶときと働くときが循環すればいい

p30.蒸気機関以降の西洋的な物差しを当てはめて、江戸時代は前近代的であるとして不当におとしめる学者がいたが、人々の道徳や社会の本質においてはずっと上等だった

p33.日本列島では過去1万年に4回、人口が波打つように増減した。上智大学の鬼頭宏教授はこの人口の変化を「文明システムの交替」と関連しているとの仮説を掲げている

p37.人口が減ると生産性の高い土地や生産性の高い職業が残ることとなり、一人あたりGDPが高くなる。生活に余裕が生まれる。その蓄積を社会全体が持つようになると、非生産的な仕事に従事する人を抱えることができるようになる

p38.経済学の教科書には、デフレ下では失業者が増加すると書いてある。しかし、日本の場合、完全失業率は4%台で歯止めがかかって、人数はほぼ横ばいである

p39.高速道路は数%交通量が減っただけで、ガラガラに空く。これは人口とインフラの関係を示す端的な例で、「2倍の余裕」のためには「半減」する必要はなく、ほんの数%減少するだけで、目に見えて余裕が生まれるのである

p40.少し前までは一生の夢だった海外旅行も、今は何度でも楽しめるようになり、団体での物見遊山から、建築物や遺跡、音楽、歴史など、テーマを持って旅行する年配の人も激増した。心の豊かさが増していることの証拠

p41.少子化が進んで「国力が衰える」とはどういうことか、計算した人はいない。そこにもまた問題が潜んでいる。子どもが減るのは寂しい、と感じる素朴な感情に訴えて進められる少子化対策には、悪名高い開発優先のバラ撒き行政もあるからだ

p48.「沖縄県民は働いている時間も6割ではないのか」実はそのとおりだった。大田知事訪米の話には、地方の人の甘えが端的に表れている

p51.弱者を演出しても慈悲は来ない時代が、もう来ている。日本の国家財政を見ればわかる。他方、世界のファンドは日本への投資を狙っているから、有望企業を起こすことが先である

p53.少子化対策の1つとして、人が言わないことを言えば、学ぶことが好きでもない女性が、行きたくもない大学に行くのは止めるべきである

p55.「高学歴」は現代の流行である。しかし昔は、誇りを持って大学に行かないという人たちがいた。私の母のセンスでは「大学を出た」と言って自慢しているのは二流の男たちだったそうだ。となると、それを見て「自分は大学に行けなくて悔しい」と思う女性も二流の女性になる

p56.「女性はまず若いうちに子どもをつくれ。大学へ行くのはそれからでもできる」「子どもを2人産んだ女性は、国立大学には無試験入学とする」「子どもを3人産んだ女性が進学を希望したときは、年間100万円の奨学金を出す」

p58.今、結婚年齢にあるが決心がつかない男性や女性は、ともに相手を「研究」し過ぎるからいけないと思う。研究の方法は、人事カードや履歴書のようなデータを調べることからスタートするが、学歴、職歴から始まって収入、貯金、持ち家か否か、両親の状況や財産など、こうしたデータに表せるものは全部他人による評価である。自分の頭で考えた評価をもっとしなさい

p62.県別合計特殊出生率。このまま少子化が進んでいくと、東京出身者がいなくなって、沖縄や宮崎、佐賀、鳥取の出身者だらけになる

p65.何と言っても、子どもを産むのはやはり20代が理にかなっている、勉強は50歳でもできる。だから助成はまず子どもを生みなさい、ということ。子どもは可愛いし、そのことで自身も成長する

p68.「グローバル・スタンダード」を説く人は、それぞれのローカル社会に入れてもらえない人が多い。2000年にわたって仲間はずれにされてきたのは気の毒だが、つまりはユダヤの人の主張するスタンダードにすぎない

p72.アジアのコアは、今後も日本であることは不動。中国は「内政の文明化」がなされていないからだ。法治より人治。中国副首相の日本首相との会談のキャンセル

p74.アメリカの集団ヒステリー。愛国者法、禁酒法、日系人強制収容

p76.「友好親善」を金科玉条のように唱えて、そのためなら何でもする、唯々諾々と従うのは知的でない。外交の場でそういう中国人も、賛成する日本人のほうも文明的でない

p77.文明かされた人とは、わけもなく怒ったりしない人、理知的な人のことだ。もっとその本質を突き詰めていうと、まわりから見て、行動が予測できることが大切である。行動予測性がある人のことである。思考が論理的で、合理的であれば自然にそうなる

p79.外国人に対しても、自国民に対しても、突然、不可解な迫害や意地悪をしない国、手続きが明確で守られている国のことを、「内政の文明化」がなされているという。そう見ていくと、おそらく日本はもっとも進んでいるグループに入ることは間違いない

p80.国会議員は二世、三世、さらには甥など血縁者が多いと批判もされるが、全員が選挙を通っている。政治評論家の早坂茂三さんに聞いたところ「最初はあやしい。でも、あやしいのは1回、2回で落ちてしまうから、3回当選して残っているのは、やはり立派だよ」

p84.五・一五事件で暗殺された犬養毅以来、首相の暗殺はない。これは、首相を暗殺しても、代わりがいくらでもいて大して変わらないからである。これは普通は見下したり揶揄する言い方だが、見上げて言ってもいい

p87.伊達政宗が派遣した使節団がスペインを訪れたとき、一行がはなをかんで捨てたちり紙の上質さに市民が驚いて、争うようにして拾ったことを、当地の貴族の夫人が書き残している…と何かで読んだ

p92.東大法学部教授から文部大臣を経て最高裁長官になった田中耕太郎氏は国際法に否定的な雰囲気の中で「もし国際法というものができて、各国が守るようになっていくと考えると、その第一歩は商法だ」

p105.1990年の第1次湾岸戦争のときは、日本の全エネルギーのうり、70%を石油が占めていた。政府は何も言わないが、国民はその後どんどん努力して、10年と少しで石油依存率は49%まで下がった。コストさえ我慢すれば、20%くらいまで下げられる

p110.北京のイトーヨーカ堂には野菜に「日本直輸入」と書いてある。日本には金も資源も技術も衛生も道徳もある。日本が食糧自給に本当に踏み切ったら、ひっくり返る国のほうが多い

p112.食料自給率はカロリーベース(トウモロコシ)で40%だが、金額ベース(タイ、マグロ、果物)では70%に跳ね上がる。いままでの40%という数字は、危機を煽って古いタイプの農業予算を取るためだったのかと言われても仕方がない

p113.若者はレジャーだ、仕事だと活発に自動車を乗り回す。用事がなくても走り回るが、大人はそんなことはしない。つまり、社会が全体に落ち着いてくる

p115.スペインのマニラ総督は、豊臣秀吉が攻め込んできたら勝ち目はないと思ったので、明が弱体化していることを秀吉に入れ知恵する。文禄・慶長の役で弱体化し、満州族に攻め立てられた明は、日本に助太刀を求めてきた。徳川秀忠の御前会議が行われ、成功の可能性も高いが、ムダだという結論になった。もう浪人に海外で領地を与える必要がなくなっていた。やっかい払いをするための”棄民政策”を取る必要がなくなっていた。そのときの日本人の精神は、国内で穏やかに暮らそう、というものだった

p117.中国や韓国の要人に向かって、直截にこんなことを言う。「日本軍国主義が侵略してくると言うが、あなた方のような野蛮国を誰も侵略などしない。日本にとって、韓国は要らない。中華人民共和国も要らない。頼まれても出兵しない」

p124.外交において、「わかってくれる」「察してくれるまで待つ」という心は、立派すぎて通じない

P130.AFNにおける日米、航空協定における比米。本気で喧嘩をすれば、何とかなる。世界中、そうやって喧嘩をしているのだ。ところが日本だけが鷹揚なのである

p132.アメリカの政治家や官僚がフランスやイギリスを相手にして叩くと、すぐに連絡が入る。「お前の女性関係を知っている」「お前の金の秘密を知っている」、あるいは「折り入ってお話がしたい」と接近してきて、写真を撮られる

p134.外務省も国土交通省も、自分がやられた外国の手口を公表すればよい。これは日本人には相手の悪口を言わないという美徳があるからで、ここでも道徳の高さが裏目に出ている

p136.外国では森首相のような大男は尊ばれる。学歴や多少の頭のよさ以上に効いてくるものがある

p151.吉野家が自家用牧場の建設に踏み切れない理由は、日本政府がもしかしれアメリカ政府に譲歩して、輸入解禁になるかもしれないからだという。日本国民の健康を守るということを忘れた話である

p154.日本の金持ち老人は、何かおもしろいことがあるのなら使うと言っている。5万円のフランス料理も500円のきつね寿司も満足は同じだと言う高齢者がいる。そう言えるのが幸せなのである

p157.安倍晋三さんは、「拒否権なき国連」に、即座に賛同してくれた。さらに、もしそれが受け入れられなかったら「拒否権なき国連」を東京に別に作ればいい、現在の国連加盟国も連れだって東京に来るはずだ。ニューヨークには5カ国だけが残ってお金が集まらない―と言うと、アメリカもこちらに合流するだろうとただちに言ったので感心した

p167.「コストの問題ではない。世界で一番うるさいお客は日本人です。日本のお客を満足させなければ、BMWの将来はありません」

p171.日本人はアートよりも、もっと先を行っている。そうしてできあがったものの後ろに芸術家がいて「アートだ」と言い、その後ろにサイエンティストがいて「これはサイエンスだな」と言い、そのまた後ろにエンジニアがいる。さらに後ろにマーチャンダイザーという商品化する人がいて、商売の世界へとつながっている

p172.トヨタでは「すり合わせ」という言葉を使う。適切な英語がないのでアメリカ人は仕方なく「すり合わせ」と覚えて帰ってゆく

p174.日本は一時、みんなが大学に行って、猫も杓子もアカデミックになり、何となくキリスト教的な考え方やものの言い方が染み込んだ。英語上手になって、英語で言ったら答えが出たと思うような人が増えてしまった。結局、そういう分野からアメリカに負けた。つまり銀行や証券、外交などで、英語が上手なだけの人が英語で議論していると、アメリカに負けるのは道理である

p179.日本人の感性に、世界の人々が近づきつつあると考えるのは、決して大げさではなく、さまざまな現象に現れている

p180.…そう説明して、トフラー氏に「そんな変な見方をしてはいけません」と話したら、「なるほど、合理的な説明だ」と納得した。普通の日本人は、みんな「すみません」と謝るらしい

p181.これまで産業作り、文化作りで世界レベルになってきた日本人が、それを卒業して、今、趣味人や風流人になっている。また、それを見た子どもたちは一足飛びに風流人になる。一見、自堕落に見えるその陰に、並はずれて素晴らしい下地がある。それが見えない人は、日本人は働かなくなってGDPが下がると心配している。文化離れ、経済離れをなぜしてきたかという理由をさかのぼると、そうした心配自体が古い物差しをあてはめているに過ぎないことがわかるだろう

p184.日本人が高くてもカニを食べるなら、自分も食べてみたいと思う人が世界に出てくる。食べて、美味いと感じる人が出てくる。事実、中国人などはそうなっている

p188.外国語になった日本語は、近年、急速に増えている。現代英語の中の外来語を調べると、日本語に由来する言葉はフランス語に次いで2番目に多いという報告もある

p190.初めてこれらのアニメを見たとき、ヨーロッパ人は驚いたという。何を驚いたのか聞いてみると、向こうには「少女が活躍するマンガなどない。それがすごい」と言う。キリスト教文化では女性は付属物だが、それを主人公にして活躍させる。それは日本社会が進んでいるということで、ヨーロッパ人は驚いていた

p193.日本の漫画の停滞を打ち破ったのが少女マンガだった。日本社会の中では少女が一番自由な存在であり、少女を登場させれば何でもできるという発見があって、再びマンガが活力を得ていったのである

p197.それにしても、国内でも知られていない話を外国の首脳が知っていたことは、それだけ外国が、共同体の倫理・道徳に裏打ちされた日本の国づくりに注目し、尊敬しているということのようである。「稲むらの火」のみならず、このような話は昔の教科書にたくさん載っていた。私は、現役の官僚たちに、1日10分でもいいから昔の話を教えるべきだと思う

p198.中日本ダイカスト工業の五島昭寿会長は、生産の不具合が発生したとき、すぐに現場に行き、その機械を止め、その周りにいる人を何人でも集めて、原因発見の懐疑を開くよう大号令をかけた。その際、会議室を取ってはいけない、その機械の周りで話すよう支持した。現場の人たちはいろいろなことを思いつくから、すぐに対策を取れるというのである

p201.新聞記者にGDPの見通しや景気論争について意見を聞かれるとき、私は平安貴族たちの「有職故実」という言葉を思い出す

p204.昔「不審船」と言っていたマスコミが「北朝鮮の工作船」とはっきり言うようになった。NHKがサッカーの試合の「君が代」や軍艦旗を削らずに放送するようになった





google adsense

関連記事

no image

山鳥重『「わかる」とはどういうことか』ちくま新書

アカデミックに書いてあり、いちいち納得がいく。しかし、よく考えてみれば当たり前と思われるようなことだ

記事を読む

no image

林田正光「リッツ・カールトンで学んだ仕事でいちばん大事なこと」あさ出版

ホテル勤務経験の長い著者による接客サービス術に関する知見の集大成。頷ける記述が多く、買って正解。

記事を読む

no image

池田信夫「ハイエク 知識社会の自由主義」PHP新書

ハイエク全集がまた出版されている。前回に購入している身には、うれしいような寂しいような、身勝手な感情

記事を読む

no image

津田大介「情報の呼吸法」朝日出版社

20120912234428 今回は水色だ。前回は黄緑色(グリーンズ編「ソーシャルデザイン ―

記事を読む

no image

ダン・S・ケネディ「大金持ちをランチに誘え!」東洋経済新報社

「成功するためには」という命題に対する有名な先達の解を引用しつつ、大事なひとつの原則に話を集約させて

記事を読む

no image

マイケル・ボルダック「1063人の収入を60日で41%アップさせた目標達成する技術」フォレスト出版

20090905205640 おもしろい本だけど、ベストセラーにまでなるような本かな。内容

記事を読む

no image

長田庄一「バブル獄中記」幻冬舎

20120311151029 本人の手記の部分をメインに、本人の足跡をたどる無名の解説文が各章の冒

記事を読む

no image

ケン・ブランチャードほか「1分間自己管理」ダイヤモンド社

これも2年前に買って積んだままになっていたものだ。直ぐに読んでおけばよかったと後悔する良書 読み終

記事を読む

no image

西川善文「ザ・ラストバンカー 西川善文回顧録」講談社

20120514002041 コンフリクトが面白かった。SMFGの増資の際、GSとの合作で実現した

記事を読む

no image

有森隆「経営者を格付けする」草思社

基準や個々の採点が極めて曖昧な感はあるが、総合得点としての100点満点での評価は概ね理解できる 最初

記事を読む

google adsense

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

google adsense

MediaPad M3 LTE プレミアムモデル購入して2か月

20170409130135 もう2か月が経ってしまったけど、記

Windows10アップグレード導入

20160307001116 2台のノートPCにつき、無料のWi

Nexus 6Pが届いた

20151105221617 無事に届いた。 海外荷物受付

Nexus 6Pが発送された

20151103103105 「発送しました」って内容のメールが

Nexus 6Pを発注した

20151031100625 それまでもネット経由でいろいろ調べ

→もっと見る

  • 名前:Max 年齢:人生の2合目くらい 誕生日:夏の暑い日 一言:他言無用ということでお願いします
  • あわせて読みたい
  • にほんブログ村 本ブログへ
PAGE TOP ↑