日下公人「もっと頭のいい『生き方』をしろ!」三笠書房

公開日: : 最終更新日:2012/09/19 書評(書籍), 日下公人



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また、少し古い本を読んでしまった。2001年に刊行された本

著者の本は、先日も最新刊”日下公人「『人口減少』で日本は繁栄する 22世紀へつなぐ国家の道」祥伝社”を読んでいる。これまであまり意識していなかったが、結果的に、私がよく読む著者や、好きな著者の一つに数えられる

先日の”竹村健一「竹村健一の最後に勝ちを拾う発想法」青春出版社”にも似ているところがある。内容も本の構成も

たまたま、昨日の日経の「領空侵犯」欄で、著者が外交について述べていた。同じようなことは、最新刊でも、この本でも主張されている

内容が本当かどうか分からないが多分本当なのだろう、と不思議な感覚に囚われるくらい、引用する事実とそこから紡ぎ出される主張が新鮮で驚きがある。過去にも著者の戦争論を読んで驚いたことを思い出した。なんでも、若者の人口比が一定の割合を超えた場合に戦争が発生する、そして日本の場合には戦争はありえないんだと。当時もやはり不思議を感じつつ、説得されてしまった。また、読み返してみたくなった

人気がある理由の一つとして思うのは、著作の中に、失われそうな日本の国としての自信を取り戻してくれるような話や、中央官僚をはじめとする権力者への批判的な言説が多い、ということは言えるような。ポピュリズム的な匂いというか。その一方で内容は決して大衆迎合ではないところが絶妙というところか



p40.東大に入学して早々、「ビッテ」ということを聞いた。ドイツ語で「頼む」という意味だが、先生のところに「合格にしてください」と頼みに行くことを言うのだそうで、一高時代からの習慣だという。これが日本のエリートなら、戦争に負けるのも無理はないとわかった

p47.軍と学校における言論の自由について。なかには本当に抵抗して身に危険がおよんだ人もいるだろうが、いろいろな例を聞きおよび、知るに至って、どうも本当は圧力を受ける前に抵抗をやめてしまったのではないかとしか思えない話が多いことに、私たちは戦後、驚かされた

p53.「お前は犬だ。靴を脱げ。その靴をくわえて、俺がよしと言うまで地べたをはいまわれ」。この話を聞いたとき、私は、最後まで自分の生き方を貫き通した彼の行為に打たれた。それ以上に感心したのは、隊長のやり方だった。こういうとき、一般的には、腰が立たなくなるほど殴り飛ばすものだ。しかし、この隊長は、誰にとってもつらいはずの屈辱的な罰を科することで、その場の兵士一同を納得させ、結局、Tさんを最もいい形で救っている

p57.弱肉強食の大陸では、いつなくなるかわからない人との関係に気づかうことはあまりない。ほかと比べて自分が強いか弱いか、自分が弱くならないためにはどうしたらいいか、というほうに日々腐心するのである

p59.日本のエリート養成は必ずしもうまくいかなかった。その理由の一つは、外国の圧力の恐ろしさを知らないことである。親善関係の成立を心から信じているから、対決について考えるのが遺伝子のなかから消えている。もう一つは、日本では全体的に知的レベルが高く、国立大学を出たくらいの”にわか秀才”では知力で十分圧倒するには至らないからだ

p63.エリートは下の階層の人間とは競争しない。「自分は上にあることを運命づけられたのだ」と自覚すれば、部下や家来の意見に耳を傾けるようになる。部下に教わっても平気である。リーダーは偏差値競争の外に立つものである。ところが日本の会社では、部長も社長も部下に負けてはいけないと考える。大学教授は学生に負けてはならないと思っている。しかし、それはエリートではない

p64.エリートは便所掃除をさせられたからといって、みじめな気持ちになることはなかった。”トップになる者は末端の苦労を知らなければならない”ということで経験する仕事で、1年後からはどんどん上に行くのだから、むしろ劣等感どころか、エリート待遇をあらためて確認するのである

p75.むかしも現代もトップに立つ人は。心を平静にするための時間や趣味を、多かれ少なかれ持っているものだ。読書、音楽、スポーツ、園芸、美術…と書いていくと、「琴棋書画」が科挙の試験だったわけがわかる

p78.この先、日本でも、親方半取りのようなシステムが復活し、広まるのではないかと思えるが、それには累進所得税というブレーキがかかっている

p84.子どもしか自慢がないのは恥ずかしいという社会風潮があるらしいが、子どもの代わりに登場した新しい自慢を聞いていると、二流の男性が言うようなことを言うので失望する。たとえば学歴自慢、職業自慢、肩書き自慢、友人自慢で、一流の男はしない話である

p94.人間の頭の働きには非常に不思議な転換作用があって、一芸に長じると、多芸も自然に進歩する現象がある。だから、いろいろやったほうがいい

p101.本はその著者の書き方、内容によって2種類に分けることができる。1つは「下心のある本」、そしてもう1つは「純粋に読者に語りかける本」である

p102.おかしいと思ったときは、子どものような素直さで考え、なんなら口に出して言ったほうがいい。こいつはズケズケものを言うヤツだなと思う人もいるし、逆に、「目からウロコが落ちました」と喜んでくれる人もいる。一番うれしい収穫は、「その考えは間違っている」と教えてくれる反応である

p105.アメリカの特許権や著作権の征伐をしている姿に、私は浅ましさを感じずにはいられない

p108.「エコノミスト」の記事に、日本製品の海賊版を買っていたアジアの人々が、アジア全体が金持ちになってきたので、いまはだんだん本物を買うようになったという

p117.ノーリスクとは、言ってみれば、生まれて間もない赤ん坊が母親に抱かれているようなものだが、しかし、赤ん坊は成長し、やがてハイハイするようになる。ヨチヨチ歩きをはじめるときから、リスクと隣り合わせの人生が始まる。歩くことを覚えた子どもは転んで泣いても、また歩こうとする。歩くという体験、そしてその先にある新しい発見がすべて面白いからである

p118.閉店する店があれば、”次はそこに何屋が開店するか”をあらかじめ考えるのはいい勉強になる。この頃多いのは、銀行の支店が、安売り屋・コーヒー店・花屋になる。エステとマッサージ屋も多い

p122.駐米大使の牛場信彦氏が自動車摩擦に際してデトロイト選出の議員と話して「自分の仕事だから、たとえそうなったとしても仕方がない。私は石をぶつけられて死ぬために給料をもらっていると言ってもいい。もしも、実際にアメリカ国民が日本の大使に投石して殺したという事態になれば、それはアメリカという国の恥である。死ぬ私の恥ではない」。「わかった。お前はデトロイトに来なくてもよい。日本が正しいということは、私自身の口から言おう。どうか、アメリカの政治家にも真っ当な人間が一人はいたということを覚えておいてくれ」。こちらが立派になれば相手も立派になる。何事においても、きちんと考え、きちんと主張して、きちんと行動すれば、人はついてくるし、アイデアも豊かになって、成功が得られる可能性は高くなる

p126.作家の塩野七生さんは、4時間も5時間も机に向かったまま、1行も書かないことがあるらしい。自分の目の前にある、あるいは自分のなかに貯め込まれた知識を発行させるのを楽しむ。アイデアが湧き出てくるのを待つ

p130.塩野七生さんが机の前で原稿を1行も書かずに過ごす時間は、知識をアイデアに発酵させる時間であり、アイデアやインスピレーションから推論の世界に入っていく時間である。そこをアメリカ人はインテリジェンスだと見つけた。CIAの”I”がそれで、これをも”情報”と訳す日本は低級だと彼らは考えている

p141.iモードを開発したNTTドコモの榎啓一さんの驚くべき洞察力と関係者説得力の根源は、「それは私が世界中の誰よりも妻と娘を愛しているからです」とお答えになったので驚嘆した

p153.ファラデー:「ここに赤ん坊が1人いたとします。赤ん坊はいったい何の役に立ちますか」

p153.手塚治虫は、原子力発電所は将来小型化して西暦2003年にはなんとロボットの身体に入るくらいになるだろうと空想して、10万馬力の「鉄腕アトム」を描いた

p154.まず第一に、自分の頭で考え、自分の頭で考えて納得できないことに、納得したふりをしないことだ

p164.精神(プルシャ)と原初の実在(プラクリティ)の起源はわからない。人間はそんな認識を持つことはできない。したがって、古いバラモン教の慣習「ヴェーダーンタ・スートラ」によれば、宇宙の創造や実在の根源や精神の本質に関する質問は愚問とされ、人は”沈黙によって答える”のが正しい―となる

p167.学校へ行って学問をすると、世の中には愚問があるとは思わなくなるのがよくない。しかし、愚問はある。たくさんある

p168.思考が迷路に入ったときは、中断してサッサと寝るのがよい。よく寝て明日考えようというのがアイデアマンになる秘訣だと思う

p171.失敗の責任をいくら他人になすりつけたところで、プラスになることは何もない。それより、自分のどこが悪かったのか反省して、その短所を改め、長所を伸ばしていくほうが、ずっと建設的である

p177.湾岸戦争に際して、日本が出したのは、当初の10億ぐらいに対して、最終的に最後の要求をそのまま呑んだ100億ドルもの巨額な資金であった。アメリカはあまらせてしまったらしい。もしアメリカが200億ドル出せと言ったら、200億ドル出したのか―と、むしろ割り切れない思いを抱いたらいい

p179.重要なことは、一番正しいのはどういうことかを自分で探すことだ。自分がすべきことと、できること、相手がすべきことと、できることをはっきりさせる。一緒に仕事をするのだとしたら、どうすることが望ましいのかを考えて、自分が正しいと思う答えをまず導き出しておくことだ

p182.あのとき、日本は多額の戦費を負担しているのだから、別の目的のために使われるのは反対だと言うべきだった。そうすれば「発言する日本」「発信する日本」「アメリカを善導する日本」になれたのにと、いまだに残念である

p182.いまアメリカが経済制裁を発動している国は60もあるという。国連加盟国は192、シドニー・オリンピックに参加したのは約200の国・地域だから、世界中の3割もの国に対してアメリカは制裁を科している。これほど制裁を乱発していると聞けば、私ならずとも首をかしげたくなるだろう。どこかおかしいのではないか、問題のある悪い国はそんなにたくさんあるのか、と

p195.日本の政治家の選挙公約は、あれも大切です、これも大切ですといって、優先順位がないから、最低どれだけのことをやるのかさっぱりわからない。全部実現すればこんないいことはないが、それができないことは選挙民にもわかっているのだから、もっと優先順位を明確にsい、これだけは実現するという決意を示さなければ意味がない

p200.優先順位がはっきりしていれば、これは譲ってもいいだろうという判断がつく、たとえここで一歩譲ったとしても、その分、別の面でプラスを得る。つまり、肉を斬らせて骨を断つ式の、「賢い妥協」ができる

p202.わがままを通すためには、それ相応の埋め合わせを必要とする

p203.どちらにせよ、日頃の雑用と交際を欠かさずにやっているかどうかが問われる

p204.会社勤めをしていると、誰もやりたくない、しかし、誰かがやらなければならない仕事がでてくる。そのとき、仲間が共有する価値観に則って、”イヤがられ仕事”で率先して汗を流し、泥にまみれるといい。それが「割の悪いこと」であればあるほど、仲間から認められるまでの時間を短縮することができる

p209.考えてもみてほしい。世に言う読書家は、いい本をたくさん読んでいる。いい本を選んで読む目を持っている。だが、彼らは決して、悪い本、駄目な本、つまらない本を読まないのではない。むしろ、人一倍悪い本を読んでいるから、いい本のよさもわかるし、いい本と悪い本を見分ける目も養われたのだ

p213危険な街を歩くときの危機予防の一つのコツのようなものが飲み込めてきた。それは、絶対に誘われては店に入らないことで、入るなら自分から入ることである

p217.専門用語には、それをつくった人の偏見が混入している。それを使うとその偏見が伝染り、その偏見を指摘する発想が消える。「公的資金」というが、実体は税金である。税金と言えば正体がばれて困る立場の人がつくった用語だから、一般国民は使わないほうがよい。もしも学者が使えば、その人は”御用学者”で、マスコミが使えば、それは”御用新聞”である





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