有森隆「経営者を格付けする」草思社

公開日: : 最終更新日:2011/09/03 書評(書籍)

基準や個々の採点が極めて曖昧な感はあるが、総合得点としての100点満点での評価は概ね理解できる 最初に出てくる会社概要が面白い。その会社のウェブページでは載っていないような非公式な説明があって、企業に対する理解を深めることができる。例えば、キヤノンの御手洗氏は創業者の家系だとか、帝人の社長を長く務めた大屋氏の奥さんがタレントだったりとか ときどき際どい記述が見られる。憎しみの念でもあるのか。面白いけど、著者の主張はそのまま聞いてはいられない。データブック、ファクトブックという感じ。よく調べてまとめ上げた いつも思うが、この経営者の評価というのは、マスコミに踊らされがちだ。数年前といまで取り上げ方が全然違う。勝てば官軍。ソニーの出井氏、松下の中村氏、みずほの前田氏などは、毀誉褒貶が激しい。特に雑誌の顔写真の選択が極めて気になる p58.東京から新幹線の最終便で帰ってくるとき、京セラ本社の窓という窓に明かりが煌々とついていると、会社に電話をする。「京セラはまだ電気がガンガンついとった。どやウチは」「はい、まだ頑張ってます」という返事を聞いて永守はホッとする。今どき珍しいウルトラ・モーレツ経営者なのである…うーん、共感できない p88.「田舎の大学の獣医学科を出て、よくぞ大製薬会社の社長になれましたね」。竹中が山之内製薬の社長に就任した時、よくこう訊かれた。竹中は「僕もそう思っています」と答えてから、続けた。「創業者の山内健二が、この会社には、学閥も門閥もなく、実力のある人間には、誰にでも平等にチャンスがある、と言っていた」 P91.病床に見舞った國男に、6代目はこう言ったという。「なんでくだらんお前が生きとんのや。彰郎の代わりにこのアホが死んどってくれたらよかったんや」…こんな言い方ありですか。この人の「私の履歴書」は面白かった。本も読まねばなるまい p94.彼は長兵衛を襲名するつもりはない。江戸時代から続く老舗の古い体質を崩し、国際企業に脱皮するためには、血の敬称を断ち切らねばならないからだ p96.2代目忠兵衛はわずか22歳で、伊藤忠兵衛本部の代表に就任し、近代総合商社の礎を築いた。若主人が西洋かぶれになって留学から帰ってくるのを恐れていた店員の前に、「呉服屋が着物を着るのは当然」と、木綿の和服姿で現れた。その後10年、一切洋服を着なかった p101.「どうして私だけ空調の効いた運転手つきの車で出勤していいのか。社長なったからといってそんな生活を続けていれば、強欲や傲慢、不遜といった人間の業はいずれ増長していくでしょう。倫理観はいつの間にか忘れてしまうようになるんです」 p112.反日デモが激化して以来、北京でも上海でもスリーダイヤはタブー視されているというのだ。国家と共に歩む三菱というイメージが定着しているからだ、と商社のトップは解説してくれた p123.三菱=UFJの統合が発表された後、横から割り込むようなかたちで統合を申し入れたこと自体が金融界の常識に反する…そんな常識ってあるのでしょうか、ダウト p127.98年に頭取という肩書きを社長に変えた。「普通の会社は社長なのに、どうして銀行だけ違うの?と子供に聞かれても返答に困る。銀行が、世間から1ランク上だという特別な意識を持っている表れが頭取。銀行はサービス業なのだから社長でいい」と即決した。銀行という名前は残したが、行員、行印の呼称も社員、社印にした…銀行というのは機能だし、法律で決まっているので変えられない。同時に株式会社と記載することも決まっている。そんなことも知らないのか p133.三菱グループ金曜会からはこんな声も。「グループ各社が顧客なのだから、金曜会での発言力はない。三菱グループの、いわば下足番だよ」 p134.石原は自分の金で飲む p157.子犬が登場するテレビCMはソフトだが、営業のやり方はやわではない。取立ての厳しさは、今はアイフルが一番という p161.「脂が乗り切っている時こそ油断すると(自分の脂で)滑る」との名言を残したのは世界のホンダを作った本田宗一郎である…うまいなあ p180.苦労を重ねてきた母は、「お客は来てくださらないもの。銀行は貸してくださらないもの。それが商売の基本だ」と教えた p195.コマネズミのように働いている店のオーナーたちは「おいおい、あんな高い時計をしているのかよ」とため息をついた。それ以来、新波は高級腕時計が見えたりしないようにワイシャツの袖口に細心の注意を払っているが、若い社長が元気ハツラツなのに対して、社員も店主たちも、もうひとつ元気がない p197.上田は関西の”食肉の帝王”の元に初めて挨拶に行った際に、「まあ、履いてきた靴を持って上がれや。さあ、さあ、ビールを一杯」と言われ、自分の短靴になみなみと注がれたビールを飲み干し、10人前ほどの寿司を食べ切るまで帰してもらえなかった、といった類の修羅場を何度も経験している…こわいこわい p201.「商売に絶対はない。あるのは自由だけだ」との思いを貫き通す。沢田は辞めて投資ファンド・キアコンを興す。社名の由来は気合と根性。英国進出や農産物の販売からは撤退した。沢田がダメなら玉塚だ…2人が起こした新会社について注目したい。期待はしていない p202.「メーカーでも小売業でも商品を売ることばかり考えているが、その前にやることがある」。雑誌のインタビューでこんなことを言った。「田中角栄の力の源泉は金ではない。人間的な魅力、人に対する気配りなどいろいろな要素があって、それで人が寄ってきた。我々も『安いですよ、いい(商品)ですよ』と言う前に、自分の企業をもっと売り込まなければいけない」 p242.赤字を垂れ流し続けるプロ球団を維持していけるかどうかを危ぶむ声も少なくない。年間30-40億円の赤字に耐えかねて電鉄会社などの親会社が球団経営から撤退していくなかで、シナジー効果だけで球団を保有するには正直言って負担が重い…初年度は黒字だった、とのニュースが最近あったはず p247.高校の先輩がソフトバンク社長の孫正義で、その実の弟であるガンホー・オンライン・エンターテイメント会長の孫泰蔵とは、中学・高校・大学の同級生。多感な少年時代に孫正義の活躍を目の当たりにして育ったこと。これが現在のホリエモンの原点である p247.人を不快にさせる露悪的な発言を繰り返すのは、両親との確執がトラウマになっているからだ、と心理学者は分析する p249.「年寄りなんて少し長く生きているだけで、怖いことなんてないのに、みんなビビりすぎなんですよ」と言ってはばからない堀江には、村上のような逡巡はなかった p259.山内は「会社を経営するのは雇用を吸収した上で納税するのが目的。経済団体に参加する必要はない」と、京都財界には顔を出さない。日本経済新聞の「私の履歴書」を連載することが、経済人にとって一流の証しとされるが、何度となく掲載を断っているらしい p265.山科商店、富山商店、佐藤商店はいずれも東京・浅草で生まれ、競い合ってきた…狭い世間なんだなあと思った p265.当時、三和銀行では高須の同期が第一選抜で取締役に就任したばかり。銀行に残っていてもポストはなかった。高須は三和銀行からバンダイに天下ったのではない。肩たたきをされて、自分で受けた会社がおもちゃ屋だったのだ…どういう切り口から読んでも、ひどい書き方だなあ p267.実績が挙がらなくても4年も提携を引っ張った。おもちゃの世界のプロは言う。「素人はバービー人形が日本で売れると思うから怖い…機関車トーマスとか、ファービーとか、外国のアニメやキャラクターってちょっとセンスがどうかなって思うけど、バービーもそんな気がします p275.正直に書くが、成田の採点は気が重い。日本経済新聞の広告担当者が成田の社長退任人事を書こうとしたら、編集局長が「成田さんは書くことをご存じなのだろうね。きちんと了解をとったのか」と念を押したという。事実確認ではないのだ。成田の了解を取ったかどうかが重要なのだ。担当記者はアホらしくなって笑ってしまったという p297.日本の会社は銀行が経営に介入する不振企業ばかりではない。大半は健全起業で、銀行が経営に口を出すことはない。しかも株主の発言力はないに等しいときている。経営者は誰からもチェックされることのない絶対の存在になった。取締役は株主代表ではなく、経営トップが引き上げた社内昇進者ばかりだから、権力者にはまず刃向かわない。その結果、長老が権勢を振るうようになる p303.拓銀の解体は北海道経済を打ちのめした。道内の企業の6割以上が拓銀から資金の供給を受けていたからだ。道内企業の資金供給の核として再建させるべきだった。逆に、日本長期信用銀行や日本債券信用銀行は解体すべきだった。企業に長期の資金を貸し付けるという産業金融の役割はすでに終えていたからだ。両方とも金融行政の誤りの見本である。しかし、責任を問われた当時の大蔵官僚は一人もいない。官僚とは、決して責任は取らない人種なのである。官僚化した企業も、特定の個人や組織の責任を明らかにしないことでは官僚と同じ特徴をもっている 20051105154441
経営者を格付けする
posted with 簡単リンクくん at 2005.11. 5
有森 隆著
草思社 (2005.8)
通常24時間以内に発送します。

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