盤側「村上ファンドと民主主義(大機小機)」日経平成17年11月11日朝刊

公開日: : 最終更新日:2012/03/09 書評(新聞)



そもそも大機小機が匿名を前提なので、そう目くじらを立てる必要もないのかもしれないんだけど。影響力もありそうだし、一部の人には誰が書いているかがわかるようなので、一応コメントする

この「盤側」なる人物、これまで企業統治をテーマに何度か大機小機を書いている。毎回、強い違和感を感じてきた。これが、うまく整理できていない。設計主義?。民間の無力さ?。株式市場が未成熟で未発達であり、信頼できない?。無能力な経営陣の擁護?。この辺が気になるのかな

今回はひどい。個別のコメントはいつものとおり、下にイタリックにて行う



・阪神タイガースの選手にストックオプション(株式購入権)を与えてはとの提案は、要するに「来たボールを打つ」という行為を、株価を上げて個人的な利益を得るための行為にせよというのであるから、スポーツに対する侮辱という見方も成り立ちうる



…プロとはそういうものではないか。プロスポーツはスポーツへの侮辱であろうか。すると、プロの世界ではタイトルを取るとボーナスが出たり、年棒をホームランやシュートや投球の数で割ったりするけど、あれらは捨て置けないね。もっと言うと、プロ野球選手はこれまで個人的利益のためには行動してこなかったのか。なぜストックオプションを殊更に非難するのか



・阪神ファンの熱狂的な応援も、勝利による株価上昇とそれによる選手の利得を願う行為にされているのだ



…なぜ、そういう理解になるのだろうか。阪神ファンは、ファンとしての一般的な利益を得るために、応援しているのではないか。私はそもそもスポーツ観戦がいまいち理解できない者であるため、これは推測になる。しかし、スポーツ観戦とは、あるスポーツの狭い世界で、さらにその一部に肩入れし、応援し、ときには自分の境遇を投影させて深層において自分を応援することで、その応援が実を結んだときにカタルシスを得る、また自分も自分の不如意なる境遇の中で「それでも、明日もがんばろう」という活力をもらう、というものではないのか。うまく定義できないけど。または実社会では負けてばかりの人が、自分の能力や成果と無関係のスポーツに現実逃避し、勝ってばかりのチームを応援して、自分がそういう強者であると錯覚し、弱い者いじめで復讐したつもりになって、要はストレス解消しているんだよね…。ちょっと脱線した。たとえば、ゴルフの賞金王レースがニュースになるのも、各選手にどれだけの金を稼いで欲しいか、ということに興味があるのではなく、獲得賞金が各選手の能力や成果を示すバロメーターだからニュースの価値があるんだよね。そして、ファンが株式を持つことが現実になってきた場合、競馬に似てくる。ハルウララが実力がどうやらなさそうなのに、馬券は売れた。これは、ごく一部の人間が万馬券を当てようとするために純粋に経済的な判断から買うのと、大多数の人間が応援の表現の一つとして馬券を買う場合がある。後者の場合には馬券が外れてもそれを記念に大事にコレクションしているということもあろう。その前に、地方競馬にまで馬券を買わずとも興味を持ち、あるいは応援した多くの人がいた。阪神球団が上場した場合にも、このように、株式を買わずに純粋に応援してもいいし、一方で経済的なまたは非経済的な判断から株式を売買するというのもあるのではないか。そういうオプションが増えるということであれば、競馬やサッカーに対して何もいわない人間にとっては、慶賀すべき事態ではないか。その辺が、これまでスワローズとベイスターズを両方持っていたフジに対しては何も言わなかったのに、楽天が同じ事態になると口を極めて罵るというダブルスタンダードに似ている。こういうのを卑怯と言わないか



・阪神球団の上場も「ファンは株を持てて、応援するともうかるぞ」と言われているに等しいのではないか



…ぜんぜん意味がわからない。応援すると儲かるという関係にはないのではないか。百歩譲って阪神球団が優勝すると儲かる、が真実としても、応援すると優勝するとは限らないよね。むしろ楽天球団のように、めちゃめちゃ負けてても黒字を出すことはできるし、勝敗よりは集客力にその収益のドライバーがあるのではないか。それは、田尾前監督のような人がいれば、人は集まるよねえ。先日たまたま見たテレビでも田尾監督の球団経営に感極まっていた女の人がいた



・何よりも問題なのは、村上ファンドは人間のにおいのしない組織であることだ。村上ファンドはモノを作らない、サービスを提供しない。従業員も最小限の管理的職員しかいない。従って取引先も顧客もいない。出資者も少人数で匿名だ。ファンド運営者としての村上氏は、匿名の出資者のために利益の最大化を図るべき法的義務を負っている。それが事業目的という特殊な組織なのだ。



…ん、わからない。「人間のにおい」というのが不明なので、その後に続く各論で反論してみる。モノを作らない?。非製造業はいくらでもある。銀行などの金融機関はこれで虚業とよく言われる。サービスを提供しない?。村上ファンドは、預かった資金を運用するというサービスを出資者に提供しているではないか。提供する相手が限られればサービスは認められないのだろうか。中小企業には聞かせたくない主張だ。また、村上氏の説明が正しければ、年金資金もファンドに入っているそうなので最終的な受益者は相当数に上るだろう。従業員が最小限?。これも中小企業には聞かせたくない。従業員が少なければ確かに人間のにおいは薄いだろう。しかし、このような業種にはそれほど多くの人間は必要ないだけのことではないか。なにより、余計な従業員を抱える企業がどこにあるというのか。匿名?。これに何の意味がある?。確かにファンド以外の一般人にはわからないけど、ファンドにとっては明らかに匿名ではないよね。お金を預かって、配当を返す先なんだから。また一般企業でも顧客情報は第三者に開示しないようにし、それを徹底できない企業は社会的非難のほか、最近は、個人情報保護法とやらで法的制裁も受けるようなことになっているよね。これは株主だって一定の大株主を除いては同じだよね。株主総会の議決権行使の葉書にも個人情報部分はシールを貼って投函するようになっているよね。なぜファンドの匿名性のみ取り上げるのか。このように見てくると、筆者が何と比較して村上ファンドを「特殊な組織」と言っているのだろうかわからない。投資業者は須らくこんなものではないだろうか。敢えて、村上ファンドが「特殊」というのなら、それは私の理解では、マスコミへの露出度とパフォーマンスのえげつなさであろう。それは彼らにとっては生来的なもの、なくてはならないものだ。わかっている人には当然の真理であっても、敢えて言葉にすると敵を作るだけなので黙っているようなことを、彼は敢えて声高に発言するだけのことなのだ。それでヒューマニズム的な批判は受けても、経済的な一定の道理を見出した市場参加者の動きを誘発して、現在の経済の歪みからの大きな裁定のチャンスを現実化しようということだ。先日たまたま見たニュース番組では、出演した村上氏に対し、ニュースキャスターが「私も5万円を村上ファンドに投資していいか(金額はあいまいだか、確か5万円とか50万円とかそういう金額)」と聞くと村上氏は即座に断ったという場面があった。断った村上氏と断られて変な笑顔を見せるニュースキャスターのどちらに親近感を得るか。たぶんこのテレビ番組の熱心な視聴者はニュースキャスターに肩入れするのではないか



・対するに阪神電鉄には無数の利用者がいる。多くの取引先、従業員、株主がいる。阪神球団にはこれを愛する無数のファンがいる。もとより野球の運営にかかわる多くの人々がいる。色々と文句はあっても、そこには無数の人間の営みがある。人間社会、市民社会そのものがそこにはある。それを人間のにおいのしないポッと出の組織が支配する。



…村上ファンドが人間社会、市民社会でないかのような表現。もう一つあげよう。村上ファンドの設立に関与し、出資も行っているオリックスは人間社会や市民社会を構成していないというのか。また「支配」という言葉もその定義をわきまえて使うようにしたい。ライブドアとフジの争いにおける日枝氏と堀江氏の応酬を想起



・かつて欧州で市民は国王、教会などと戦ってその尊厳を獲得した。今、日本で不十分なルールの下、カネが露骨に人間の営みを支配できると主張されている



…出た!、「ルールが足りない」論。「カネが露骨に人間の営みを支配できる」との主張は、いや、相当マイナーだと思う。私が間接的に知る限り、それなりの人物としてもライブドアの堀江氏くらいではないか。彼もそういう言動癖は通常の人物のそれではないみたいだし。少なくとも彼も今回の衆院総選挙で何枚も皮が剥けていると期待する



・問われているのは日本のデモクラシーそのものであり、市民社会のあり方だ。カネを集められる、借りられる、そのことにヒトを支配しうる何の権威があるのか。今、日本に必要なのは、啓蒙(けいもう)思想と市民革命のようだ



…だからヒトは「支配」されてないって。経済界における極一部のダメ企業とそれに集る極一部のアービトラージャーの動きに対して、ここまで言われては笑うしかない。先週号の週刊東洋経済の記事だったと思う、日本電産の永守氏の敵対的買収に対する考え方を、いま思い出している

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