山田昌弘「女性が結婚しないのは高収入男性を求めるため(The Compass)」週刊東洋経済2006.7.1

公開日: : 最終更新日:2012/02/10 書評(雑誌), 週刊東洋経済, 山田昌弘



こういうおもしろい記事があるから、週刊東洋経済は読まないわけにはいかないのだなあ

すっきりする物言い。これは、忘れられないコラム。いとも簡単なことをなかなか言えず、言ってもとりあげられないということ。建前と本音。政治的に正しいことしか言えない。言うことや決めることはできても、実際にそれを実行することができない。そのようないびつな構造を持つ産業は現状を見て悲観するもよし、そこにチャンスを見出して適正な状態に戻すことで利益を得ようとするもよし、聖人は宅急便や障害者自立の小倉氏から、悪役は村上ファンドの村上氏まで、そういう部分に目をつけた者が一時代を築く

男が稼げないから、子孫が残せない。そのような優秀でない男性の遺伝子は将来に残せない。そこで一夫一婦制という男性間のカルテルは破られ、一夫多妻制が復活ということか。復活、というより市民権を得るということか。それとも日本国民は植物学に活躍する皇室のように、金がかからず、それでいて有益な分野で活躍することを存在理由として、希少人種として存続していくのだろうか。であれば1億3000万人も必要ない。企業としては任天堂などは世界の希少種として残るだろうけど、ほかに何があるかな

男固有の役割がシュリンクしていることは肝に銘じなければならない。昔は戦争に出るのは男だったし、政治も制限選挙により男の役目、生活物資を稼ぐというのも男の仕事だった。そうでなくなったときに、女固有の役目だけが変わらず残っている。セブンイレブンなどのフランチャイズチェーンの説明会で話を聞いてみるといい。夫婦で行う独立開業のキーは妻だ。夫はフランチャイジーの仕事だけやって「あー今日も働いた」と威張り腐る。しかし、妻には主婦業が残っている。体を壊さんばかりの過酷さ。夫は夕方には晩酌をはじめるが、そのための肴を用意するのは妻なのだ



・昨年の合計特殊出生率(女性1人当たりが産む平均子ども数)が1.25になり、前年と比べても0.04ポイントの大幅下落になったと6月1日、厚生労働省から発表された



これは日本国民が暗記しておくべき数字ですね



・日本で少子化が進行する最も重要な要因は「タブー」として語られず、私から見れば些末な要因が針小棒大に取り上げられたり、現代の若者事情から考えればずれていると言うしかない原因が大きな声で語られる。いくつか取り上げてみよう



…として、次の3つの考え方を切り捨てている。痛快だあ



・欧米では未婚の母が多いが日本では少ない(2%弱)。だから、未婚の母親に対する偏見をなくせば、「夫はいらないけど子どもは欲しい」という女性が子どもを産みやすくなるという意見がある。欧米では婚姻届を出さずに同棲のままで、子どもを産む。だから、未婚の母といっても、父親と一緒に暮らすケースが多いのである。日本では、妊娠すると「できちゃった結婚」するから未婚の母が少ないだけである(離婚率が高いから、結果的に離別母子家庭が多くなる)。第1子の1/4が、できちゃった結婚によるものだから、これが未婚の母と同じだと考えれば欧米の水準と変わりはない



こういう点が日本の学者の面目躍如。外人学者がホームグラウンドの経験で物を言っても無意味だ。これは一番下のキャリア女性の話でも言える



・結婚しない理由として「出会いがない」と回答するのを真に受けて、異性との交際機会が減ったのが未婚化の原因という説がまかり通るようになった。「出会いがない」と回答する若者の周りに未婚の異性がいないわけではない。結婚相手として都合のよい相手がいないのを、出会いがないと表現しているだけである。ちなみに、私の調査だと、今の50代の既婚者と比べても、30代未婚者は、恋愛経験が貧富だ。50代だと、既婚者でも恋人経験がない人(つまり見合いで結婚後もなし)が28%もいる。一方、30代だと、既婚者には劣るものの、未婚者でも2人以上の恋人経験がある人が過半数である(30代の既婚者だと、4~5人以上恋人と付き合った経験がある人が半数近い)。つまり、出会いどころか、恋人になったからといって結婚するとは限らない時代になったのだ



この辺の本質、「出会いがない」発言の真意をはっきりと捉える姿がいい。それをサポートする端的な調査結果とともに



・最後に、最も強力に流布しているのが、「女性がキャリアを追求するようになったから、結婚や出産をしなくなった」という説である。これは間違いではないが、少子化の主因ではない。ある研究会で、女医のキャリア形成に出産休職が障害になり子どもを何人も産めないので対策を、という意見が出された。確かにそうかもしれないが、女医になる人は年2000人程度であり、その中で専門医としてのキャリアを追求している女性の数となるとさらに少ない。医師でなくとも、結婚や出産をあきらめるくらい専門職でキャリアを追求している女性は多くないというよりも、はっきりいって少数派である。ちなみに、2005年時点で30代前半女性約480万人のうち、4大卒はたった78万人であり、短大卒160万人、高卒194万人、中卒26万人となっている(2000年国勢調査の20代後半の数字)。短大卒以下でキャリアを追求している女性もいるかもしれないが、4大卒でもキャリア的仕事をしていない人も多い。そして、若年女性は、フリーターや派遣社員など非正規雇用に就く者が多く、単純サービス業を続けたいから結婚や出産をしたくないなどと思う人はいないのである。少子化の原因を検討するときは、短大卒以下、一般職や派遣社員、フリーターなど、追求すべきキャリアを持たない女性の結婚意識や出産環境を考察しなければならないのだが、研究者や評論家、政策立案者の周りにこのような知り合いは少ないから、実情が反映されないのだ



この論調は前にもどこかで見た。政策立案者のまわりの女性はキャリア官僚や社会的経済的な成功者が多いため、その人たちを見て物を考えているという。“日下公人「『人口減少』で日本は繁栄する 22世紀へつなぐ国家の道」祥伝社”“山田正人「経産省の山田課長補佐、ただいま育休中」日本経済新聞社”か、どっちだったかな



・彼女たちはなぜ結婚しないのか。理由は単純で、披女たちに豊かな生活を保証できる未婚男性が少なくなっているからである。未婚女性が結婚相手に求める年収は、現実の未婚男性の収入に比べれば相当高い。つまり、①多くの女性が収入が安定した男性を結婚相手として望む、②若年男性の収入格差が拡大(これは多くの論者が認めるところである)して、収入が不安定な男性が多くなる――この期待と現実のギャップが、少子化要因の大きな部分を占めることは間違いない

・そして、このことは、私は10年以上言い続けているが、大きく取り上げられることはなかった。こんなこと言ったらクビが飛ぶと、ある官僚に言われたこともある。多くの人は薄々知っているが、公に言ってはならないタブーなのだろう。かくして、根本的な原因にはメスが入れられず、間違いではないが、根本的でない要因のみが強調される。「出会いがない」とか「キャリアが中断される」から少子化か起きると言っていれば、誰からも文句を言われることはない。どうも、日本社会は、本気で少子化対策を進めたいとは思っていないようだ



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