梅田望夫「ウェブ進化論」ちくま新書

公開日: : 最終更新日:2012/05/04 書評(書籍)



最近のベストセラー。ちょっと読むのが遅れたけど。「あちら側/こちら側」だの「ロングテール」だの、最近の流行り言葉が頻出している。面白く興奮するし、確かに読んでおいて損はないけど、かといって、特段、驚くような、というか目新しいことは感じなかった。キーワードを多く紹介してくれるので関係する会話をするときの符丁の原典として必読の書なのだろう

確かに、もう古くからグーグルをメインの検索エンジンにしている。地図もグーグルマップ以外はほとんど使っていない。さらには先日、Gmailが紹介制から登録制に変更されたので、早速使い始めてもいる。この辺のことは今後も積極的に押さえておきたい



p12.「そんなコンテンツなんて大半はクズなのではないか」というのも権威側からよく効かれる言葉なのだが、玉石混交の膨大な量のコンテンツの中から「石」をふるいよけて「玉」を見出す技術も、今や日進月歩ならぬ分進日歩といったスピード感で進化を続けている

p14.「世界政府っていうものが仮にあるとして、そこで開発しなければならないはずのシステムは全部グーグルで作ろう。それがグーグル開発陣のミッションなんだよね」

p19.インターネットの真の意味は、不特定多数無限大の人々とのつながりを持つためのコストがほぼゼロになったということである

p21.私は一瞬耳を疑った。「米国が遅れている」という前提からまず入る発想が私にとても新鮮だったからだ。でもこれが、携帯とブロードバンドでは世界一のインフラを持つ日本で育った若い世代の米国に対する自然な感想なのである

p43.こうした革命的変化に共通するパターンとして、最初の段階ではかなりのスケールでのタービュランス(乱気流、大荒れ、混乱、社会不安)が発生するとサンタフェ研究所のブライアン・アーサーは語った。そしてタービュランスに続いて、メディアが書きたてるメディア・アテンションのフェーズに移行し、そして過剰投資が起き、バブル崩壊へと突き進む。そして人々は、その技術はもう終わったと考える。新聞は興味を失い、技術はその妖しげな魅力を放たなくなる。人々はそれについて語らなくなる。でも面白いことに、それから10年・20年・30年という長い時間をかけて、「大規模な構築ステージ」に入っていく

p52.今の「グーグル・アース」は「挨拶代わりにどうぞ」くらいの感覚でグーグルが世に出したものだ。リアルタイム性や解像度もさらに高め、全地球上で何が起きているかを全部閲覧できるシステムをゴールとしてイメージしているに違いない。チープ革命とはそういうことを可能にする潮流なのである

p59.年間売上高1兆円以上のIBMのパソコン事業売却額が2000億円にも満たなかった一方、公開当時売上高約3000億円のグーグルの株式時価総額は公開直後に約3兆円。この差こそが、ネットの「こちら側」から「あちら側」へのパワーシフトを意味していた

p67.グーグルはコンピュータ・メーカーではあるが、作ったコンピュータ・システムを売る必要はない。巨大システムを自社サービス実現のために一つだけ作って、グーグルが世界に向けて提供するサービスの情報発電所インフラとして利用すればいいのである

p76.2004年8月の株式公開に際してグーグルが米証券取引委員会(SEC)に提出した書類の冒頭には、創業者から将来の株主に宛てた手紙が添付されている。その中に「MAKING THE WORLD A BETTER PLACE」(世界をより良い場所にすること)という項があり、経済的格差是正への自らの貢献可能性に言及する

p79.はてなでは、社員全員が、戦略の議論、新サービスのアイデアから、日常の相談事や業務報告に至るまで、ほぼすべての情報を社内の誰もが読めるブログに書き込む形で公開し、瞬時に社員全員で共有する。電子メールはあまり使わない。特定の誰かに指示を仰ぐための質問、それに対する回答、普通なら直属の上司にまず報告すべき内容も、すべていきなり全員に向けて公開するのである

p84.彼は即座にこう言った。「情報自身が淘汰を起こすんだよ」

p101.ロングテール現象は、特にデジタルコンテンツのネット流通において顕著に現れる。アップルの「iチューンズ・ミュージックストア(iTMS)」関係者によると、取り扱っている100万曲を遥かに超える楽曲の中で1回もダウンロードされなかった曲はないらしい

p124.「マイクロソフトやインテルがどんなに頑張っても、1台のコンピュータに閉じた世界で出来ることは限られている」

p128.「いや、これはおもちゃですから」というのは、どこかで聞いた言葉だなぁ。と私は思った。80年代にPCが世の中に登場したときも、大企業のシステム部門の人たちはこの言葉を繰り返し、1世代前の技術への莫大な投資を正当化していた

p130.自らをロングテール追求者と定義するグーグルのCEOエリック・シュミットは、ロングテール追求の意味をいつもこう表現する。「膨大な数の、それぞれにはとても小さいマーケットが急成長しており、その市場がグーグルのターゲットだ。グーグルは、膨大な数のスモールビジネスと個人がカネを稼げるインフラを用意して、そのロングテール市場を追求する」

p137.逆に言えば、これまでモノを書いて情報を発信してきた人たちが、いかに「ほんのわずか」であったかということに改めて気づく。そしてその「ほんのわずか」な存在とは、決して選ばれた「ほんのわずか」なのではなく、むしろ成り行きでそうなった「ほんのわずか」なのだ。これまで情報を発信してきた人たちの実力というのは、これまで発信してこなかった人たち全体のせいぜい上位1%くらいの層と同程度。特にビジネスや技術や経営といった領域でその傾向が顕著で、芸術的な領域を除けば、たぶん他領域にも概ねあてはまるはずだ。そんな認識が少しずつ広がりを見せているところが、ブログの本質を考える上で重要なポイントである



MSがIEでMSNをポータルのデフォルトにした頃、そこに表示される文章の作家が一躍有名になったと思う。その後も生き延びているのだろうか、とチラと思っただけで、実はぜんぜん興味がない



p146.基盤を脅かされる側の新しい現象に対する反応はまちまちである。しかし総じてウェブ社会のネガティブな面ばかりをメディアが取り上げがちなのは、こうした危機認識が形をかえて表出しているという面が少なくない。ネット上の新現象をメディアが取り上げるときに、善悪なら悪のほうに、清濁なら濁のほうに、可能性と危険なら危険のほうにばかり目を向け、「そこを指摘することで世の中に警鐘を鳴らすのが自分たちの役割だ」という立場を取るのはそのためである。たとえば、「ブログとは「世の中で起きている事象に目をこらし、耳を澄ませ、意味づけて伝える」というジャーナリズムの本質的機能を実現する仕組みが、すべての人々に開放されたもの」に他ならないではないかと自問するとき、新聞記者たちの内心は穏やかではいられない。そういう心理はごく自然なものだ



何度もうなずいてしまうところ。こうやってマスコミさんがなるべく隠蔽してくれるのであれば、一方で知っている人はその優位性を維持できるのだから別にそれでいいや。でも、著名人を初めとして、マスコミとは割り切った付き合いをし、本当に重要なことや真意を伝えたいところではブログでコメントするという人も増えた。「何々さんが現役を引退することを本人のサイトで明らかにしました」「何々さんが結婚したことを本人のブログで明らかにしました」「何々省の発表によると、何々企業が行政処分を受けました」などと妙な力を入れて事実報道に注力しているマスコミってなんだろうと思ってしまう。それなら「週刊こどもニュース」のほうがいいや



p151.私は総選挙の結果に興味があったので、解散と同時に丹念に日本のブログ空間の言説を読んだ。私は情報を分別するリテラシーは高いほうなので、数時間かけて、だいたいの感じを掴むことができた。そして驚いた。凄い小泉支持率じゃないかと



これこれのことだ



p160.ネット世界で、あるトラフィックを集めて月に500ドル稼げるとすれば、そのサイトを発展途上国の人が運営していても500ドル、先進国の人が運営していても500ドルである。ネット上に地域という概念は存在しないからだ。これは発展途上国の人にとっては天恵とも言うべき仕組み。グーグルはこのことをもって、「世界をよりよき場所にする」とか「経済的格差の是正」を目標にすると標榜するわけだ

p162.大組織に属する人たちの多くは、個としての情報がネット上に流れることを嫌いがちだ。個人情報をさらせば組織内で無用な詮索をされるケースもあるし、大組織の看板で仕事をしている場合には、個としての存在感を表に向かって出す必要がそもそもない。大組織の内部が素晴らしいコミュニティとして完結している場合には、そのコミュニティの外部に個として出ていく理由も存在しなかった。しかし日本も大きく変化している

p188.「今ここで加筆修正している私は、ウィキペディアから見れば誰かはわかりません。ウィキペディアは、今の私を含む不特定多数無限大の人々の行為を集積することで、この百科事典を作り出す場になっているわけで、厳密に言えば、今日のウィキペディアと明日のウィキペディアは違う。日々、進化を続けているわけです」

p201.巨大マップの存在を前提すると、入力は目的で出力は「人のランキング」になるのが自然だ。むろん相手が情報ではなく生身の人間なので順位付けすることへの抵抗感はあるし、検索エンジンより技術的に難しいから、こうした仕組みが実現されるかどうかはわからない。しかしソーシャル・ネットワーキングは、「人々をテーマごと、局面ごとに評価する」という「人間検索エンジン」とも言うべき仕組みへと発展する可能性を内在しているのである



ただ、現状は、ミクシィなどを見ても「トモダチゴッコ」の域を出ないよねぇ



p213.では「高速道路を走りきった先での大渋滞」とは何なのか

p221.私は、資本構造という企業の根幹にあたる部分に「創業者が一般株主と違う種類の株式を持つ」固定的な枠組みを導入して制度化してしまうべきではなかったと、今も考えている。しかし同時に、グーグルの創業者たちがマイクロソフトやビル・ゲイツに対して抱く「あちら側のことはあなた方には絶対にわからない」という気持ちもまた非常によく理解できた

p233.組織を興したあと私は、「シリコンバレー人として活躍する日本人たち」を訪ね歩き、彼ら彼女らの来し方から何かを学びたいと思った。そんな行脚を1年半ほど続けるうちに、日本という国は「いったん属した組織を一度も辞めたことのない人たち」ばかりの発想で支配されている国であるという再発見をした。日本の大企業経営者、官僚、マスメディア幹部。いわゆるエスタブリッシュメント層の中枢に坐る、私よりも年上の人たちの大半が、組織を辞めたという個人的経験を全く持たないのである。そのことが日本の将来デザインに大きな歪みをもたらしてはいないかという懐疑も、私の中に同時に生まれた

p246.シリコンバレーにあって日本にないもの。それは、若い世代の創造性や果敢な行動を刺激する「オプティミズムに支えられたビジョン」である



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  • 名前:Max 年齢:人生の2合目くらい 誕生日:夏の暑い日 一言:他言無用ということでお願いします
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