吉本佳生「投資リスクとのつきあい方(上)」講談社+α文庫

公開日: : 最終更新日:2011/09/03 書評(書籍)

株式投資において、投資しようとする銘柄のリターンを想定して、ボラティリティを算出して、正規分布に当てはめ、それをサイコロの出目でイメージして将来の損失の可能性を認識し、それを損切りなどの投資判断の一助とする これが基本的なアイデア。これをいかに簡単におこなうか、そういう工夫がほどこされており、数学が苦手でもついていけるような内容になっている。読みやすいのし、株式投資のリスク管理の入門としては適切な本だと思う 最初の部分において、株式投資を競馬のハンデ戦に喩え、ファーストリテイリングとダイエーという2つの会社の株価を引き合いに出しながら、会社の優劣によって今後株価が上昇するかどうかは決まらない、ということを説明している また、世にある株式投資に関する誤解に対する挑戦もなされており、その辺が頼もしい。この本では、「長期投資はリスクを減らす」という考え方に対する批判をしている 氏のほかの本、または本書で薦められている本も読んでみたくなった
p4.株式投資について「投機と投資はちがう」と主張する人がいます。「投機はギャンブルであり、博打であるが、投資は、ギャンブル(博打)ちはちがう」と表現し、その上で「私は、株式投資はおこなうが、投機は好ましいことではないので、断じておこなわない」などという人がいます。筆者は、そんなことをいう人間をあまり信用しません。厳密にいえば、株式市場における投資と投機を区別することはできないわけではありませんが、資産運用として株を売買しているのであれば、株価の変動に賭けて儲けようという点において、株式投資と投機にちがいなどなく、ギャンブル(博打)以外の何ものでもないからです p24.くり返し強調しますが、確実にタロウが勝つ勝負を、タロウが勝ったり負けたりするようにハンディをつけて調整し、「”確実なもの”をわざわざ”不確実なもの”にしておこなう」のがギャンブルなのです。ギャンブル(賭け)とは、相手があればこそ成立するもので、結果が確実なら、賭けの相手がなかなかみつかりませんから、結果が不確実でなければ賭けが成立しないのは、当然のことといえるでしょう p35.何にしても、あのマイクロソフトが、自社の株価についての投機をおこなった結果、大損をしたというのですから驚きです。少なくとも筆者はたいへんに驚きました。その記事をみて考え直したのは、ストロング型の効率的市場仮説の評価です p54.筆者は、効率的市場仮説についてつぎのように考えています(この結論に自信があるわけではないのですが)。第一に、効率的市場仮説の考え方はある程度妥当するので、”確実に儲かるような株式投資のやり方”といったものは存在しない。第二に、効率的市場仮説の考え方だけで、現実の株価の変動を完全に説明できるわけではない。だから、きちんと勉強すれば、”確率的にみて少し有利な株式投資”をおこなうことは可能かもしれない p65.現在でも、日本人の中には「株式投資で儲けることは、一所懸命に働いて儲けることより、人間として劣ることである」とか、「株で儲けたあぶく銭よりも、額に汗して稼いだお金の方が尊い(価値が高い)」などと考えがちな人が多いでしょう。しかし、いまの日本では、額に汗して働く人の職を守るためにこそ、コツコツとまじめに働いてきたのにリストラされて職を失ってしまったという人が働く場所をつくるためにこそ、株式投資でお金を稼ごうとする人がどうしても必要なのです p72.こういった、まちがった資産運用アドバイスの発信源は銀行や証券会社などの金融機関であることが多く、一方で、金融機関とは独立して資産運用アドバイスをしている人もいますが、その人たちも、そういった金融機関の発信した情報を請け売りしていることが多いのです。そして、まちがったアドバイスを発信しているような金融機関の人たちは、自らが金融取引をおこなうときには、まちがいであることを十分承知している内容を、しかし、個人には正しいと信じ込ませて、つまり明らかに騙してアドバイスしているのです p88.現実の株価や円相場などの変動を示す分布は、よく使われる分布(正規分布)よりも、端の部分の確立が少し高くなるのです。この性質は”ファット・テイル”と呼ばれています。わかりやすくいえば、基本的な分布で考えるよりも、異常なことが起きやすいのです
20060913234700
投資リスクとのつきあい方 上
posted with 簡単リンクくん at 2006. 9.13
吉本 佳生〔著〕
講談社 (2002.7)
この本は現在お取り扱いできません。

google adsense

関連記事

no image

鈴木理生「東京の地理がわかる事典」日本実業出版社

じっくりと1ページ1ページ読み込んでしまう良書。本当かどうか分からないが、かなりマニアックな内容で、

記事を読む

no image

住友不動産販売株式会社「不動産の税金がわかる本」有朋社

不動産に関して税が気になる5つの局面、すなわち、買う、売る、買い換える、贈与する、相続する、において

記事を読む

no image

粂和彦「時間の分子生物学」講談社現代新書①

最近読んだ本の参考文献となっていたのがこの本。生物学系の本は好奇心をくすぐられて結構はまる 前半が

記事を読む

no image

西岡常一「木に学べ」小学館

学者をやり込めた話。具体的な名前も出てくる。学者に対する不信 経験からくる確信。祖父から教わったこ

記事を読む

no image

宮城谷昌光「新三河物語 下巻」新潮社

hiog: 宮城谷昌光「新三河物語 中巻」新潮社 hiog: 宮城谷昌光「新三河物語 上巻」新潮社

記事を読む

no image

橋元淳一郎「時間はどこで生まれるのか」集英社新書

20080929060000 一応通読したけど、概観しかないので、それだけではまだまだ難し

記事を読む

no image

ロバート・キヨサキほか「金持ち父さん貧乏父さん」筑摩書房

米国の(そしてそれは日本にもあてはまるが)一般に成功とされた生き方に対して、財産形成、暇作り、という

記事を読む

no image

林望「知性の磨きかた」PHP新書

高校生か、または大学入学したばかりの人が読むべき本。勉強の仕方、大学生活のすごし方、本の読み方につい

記事を読む

no image

梨木香歩「家守綺譚」新潮文庫

ここ10年くらい、フィクションはあまり読まなかったりする。年に数冊くらいか こういうものを先を争っ

記事を読む

no image

司馬遼太郎「功名が辻(4)」文春文庫

20050712231000 文庫本ではこれが最終巻。このようなショッキングな終わり方をす

記事を読む

google adsense

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

google adsense

MediaPad M3 LTE プレミアムモデル購入して2か月

20170409130135 もう2か月が経ってしまったけど、記

Windows10アップグレード導入

20160307001116 2台のノートPCにつき、無料のWi

Nexus 6Pが届いた

20151105221617 無事に届いた。 海外荷物受付

Nexus 6Pが発送された

20151103103105 「発送しました」って内容のメールが

Nexus 6Pを発注した

20151031100625 それまでもネット経由でいろいろ調べ

→もっと見る

  • 名前:Max 年齢:人生の2合目くらい 誕生日:夏の暑い日 一言:他言無用ということでお願いします
  • あわせて読みたい
  • にほんブログ村 本ブログへ
PAGE TOP ↑