田村秀「データの罠 世論はこうしてつくられる」集英社新書

公開日: : 最終更新日:2012/09/19 書評(書籍)



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結構評判が高かったと理解していたが、期待したほどの驚きはなかった。それでもずいぶんと参考になった

最後のほうで、各論的に、最近のちょっと有名な議論をもっとに若干の考察をしているところがある。都市部と地方部の道路がどうしたとか、規制緩和の効果がどうしたとか、地方公務員の給料がどうとか。なんか、読んでいてすごく退屈した。この辺は新書らしさを感じた

こういう点を差し引いても、お買い得感を感じる一冊

最近、新書づいているなあ



p19.「やむを得ない」などという曖昧な選択肢は抜きで、賛成か反対かを明確に問いかけるのである。その際、最も望ましいのは、誘導尋問なしで率直に賛否を問うスタイルであるが、それができないのであれば、賛否に関する典型的な意見を併記のうえ、質問するのも一案であろう

p22.ここでは統計学の詳しい説明は省くが、ある比率の精度をプラスマイナス5%の誤差で推定する場合、母集団が大きくても400弱(正確には384程度)のサンプルを無作為抽出すれば十分だといわれている

p23.全市民にアンケートを実施しなくても、一定数のサンプルを抽出し、期日までに回答していない者に丁重に督促を行うとか、回答することによってなんらかの特典が得られるといったような仕組みによって、回収率を高めたほうが現実には経費も少なくて済み、また、その結果も科学的な分析に耐えうるものになるのである

p24.世論調査をはじめとするアンケートの有効回答率については、60%以上必要であるという指摘もある。少なくとも50%を切るような回答率では、結果を相当に割り引いて、参考程度とせざるをえない

p70.一般的に、過程調査の結果を用いて「○○の街」という売り出し方をしたいのであれば、最低でも過去10年間程度はデータを集め、2位の都市と一定以上の差(必需品の場合は少なくとも10%以上、それ以外であればできれば20%以上)があることや、全国平均と大きな開きがあることなどを確認する必要がある

p104.経済効果というのは、どうもプラスの部分ばかりを、それもかなり楽天的に推測し、多少なりとも関係しそうなものを全部加えてはじき出した数字というのが実態のようである

p106.事業を実施したいという行政側の意向を、シンクタンク側が、需給予測に関する調査結果の内容に反映させることは少なくない。政策研究大学院大学福井秀夫教授の「官庁が使うコンサルタントは『いかようにも結論をだします』と豪語している。事業を正当化したい官庁と、受注が欲しいコンサルタントによる茶番に過ぎない」(日本経済新聞、2002年12月6日)というコメントがこのことを如実に物語っている。需要予測値が、事業が成功するか否かを客観的に判断する材料としてではなく、目的達成の道具と化しているのである。需要予測が大ハズレのケースは挙げればきりがない。本州と四国を結ぶ3本のルート、東京湾を横断する東京湾アクアライン、そして各地の高速道路や空港の類である。例えば、島根県で3つ目となった石見空港は、2000年度の利用見込み客は50万8000人だったのに対して、実績は14万7000人と、需要予測の3割にも達していない。これでは、”竹下・青木”空港と言われかねないのである

p124.TOEFLの試験を受けるためには、140ドルの受験料が必要とされている、例えば受験者数が41人のラオスの人口は約500万、ASEAN諸国のなかでは最貧国の一つに位置づけられており、公務員の初任給は月20ドル程度ともいわれている。このような高額な受験料を支払ってまでTOEFLを受験するのは、ラオスのような途上国では留学の必要に迫られた政府職員などごく一部に限られてしまう。当然のことながら、少ないチャンスをものにするために、受験に際して死に物狂いで勉強していることは想像に難くない

p135.そもそも交通事故の比率を比べるときは、単に何人当たりで何件事故を起こしているかをいうだけでなく、運転の頻度ごとに、例えば、毎日運転する人とサンデードライバーとを分けて、それぞれについて原因を究明する必要があるとされている

p139.実は日本ほど統計が正確な国はないと、一般的にはいわれているのである。もちろん、先に述べたような調査上、あるいは集計上の誤差などはあるものの、諸外国と比べるとはるかに小さく、まさに誤差の範囲といってもいい場合が少なくない

p180.他の監査法人にも同様のトラブルは散見される。中央青山だけの問題ではなく、業界全体の問題として対応策を考えることが必要ではないだろうか。カネボウからは年間1億円の報酬を受け取っていたようであるが、公認会計士法が求める独立性を担保するためには、公認会計士協会などが間に入って、企業から直接報酬をもらわないような仕組みが必要なのではないだろうか。あるいは監査の期間を限定するなどして、癒着しにくいシステムを構築すべきである

p181.一定期間、国税や地方税に関する業務に勤務すれば、税理士試験の受験科目が一部免除されるという現行制度は問題である。2001年の改正税理士法により、税務職員等に対する試験免除制度の見直しが図られたが、簿記論や財務諸表論、専門以外の税法は試験を受けるべきである。公務員出身の税理士が全体の4割近くを占め、特に国税局OBの税理士がいとも簡単に1億円以上稼ぐことができるという現状は、誰がみても間違っている

p185.今回問題となった民間の検査機関による建築確認の代行制度は、今後とも続けられるだろうが、チェックを受ける側がチェックする側を直接選ぶというやり方は改める必要がある。これは企業と監査法人との関係と同じである

p185.一般庶民が都心のマンションになかなか手が出せない理由の一つである地価の高さは、実は土地の有効利用が十分になされていないからではないだろうか

p186.例えば、イギリスの一戸建てはわずか21%であるのに対して、日本は実にその約3倍の59%となっている。また、ロンドンに限ると一戸建てはわずか5%しかなく(20軒に1軒)、住宅のほとんどが集合住宅である。一方、東京23区では26%と、4軒に1軒は一戸建てである。一戸建て以外の大半を占める共同住宅でも、約3割は2階建てか平屋である

p198.これらをいちいち意識しているのは大変であるが、少なくともデータをやみくもに信じてしまう態度だけはとるべきでない。データの罠を見分ける力、すなわちデータリテラシーは、多くの人にとって必要なものではあるが、本来は、公平で客観的な報道に努めるべきメディアに携わる人間が、しっかりと備えていなければならない必須の条件である




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