三谷宏治「観想力 空気はなぜ透明か」東洋経済新報社

公開日: : 最終更新日:2012/11/22 書評(書籍)



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なぜ空気は透明か?。タイトルと、この不思議な問い掛けから、なんか宗教みたいな思想の本かと思った。でも内容はそんなことはなく、世俗的というか、著者の経歴そのままの内容である

導入部分が凄く面白かった。途中のケーススタディ部分は、著者も主張するとおり、すでに公表され、または取材された内容であり、基本的には目新しさはなかった。そして、それぞれの記述において、ネタ本が、あれかな、これかな、と思いついてゆくにしたがって、少しずつ興味が失われていく。どんどん尻すぼみになっていくイメージ

しかしそれは、自分も著者のように、主要の新聞と経済誌をすべて目を通しているからこそであり、そういうことなのだと自分を納得させる。そういう習慣のない人が読めば、驚きの連続なのだろうと思う。自分にとってはあまり気づきはなかったけど

そのくせ、結構メモしているんだけどね



p30.デボン紀末の大絶滅では生物種の9割以上が絶滅した。個体レベルで言えば全生命体の99%以上が滅んだという徹底的な絶滅だ。この地球に歴史上存在した生物種のほとんど全ては既に絶滅してしまっているのだ。統計的に見れば、生物種の本質は「絶滅」とも言える。生きるものの本質の一つが、まさに「滅び」であるということだ

p31.生命は、地球環境を相手に、まさに「死ぬ」まで続くゲームをやっているのだ。例えばコインが表なら地球の平均気温が0.1℃上昇、裏なら0.1℃下降としよう。それを投げ続けるのだ。そしていつか100回連続で表(もしくは裏)が続くことになる。短期間で気温が10℃急上昇(もしくは急降下)。そういう、種として対応しきれない環境変化が起こった時、種は絶滅する。生物種の生き残りのための戦略はそれ故、「多様性」となる。寒さに強いもの、暑さに強いもの、土に潜れるもの、空を飛べるもの。皆揃って討ち死にしないよう、色々な「生き残り戦略」を試しているのだ。そこでも鍵は「変化が起こる前から準備する」だ。環境の激変が起こってからでは間に合わない。出来ることは知れている。事前に多様性を生み出しておくこと。内包させておくことが企業にとっても「永続的成長」のための必勝法なのだろう

p41.「スイッチング漁獲」の要点は3つだ。①当たらない推測に頼らず②実際に得られる情報のみを使って③事後的に対応する

p52.持てて30年、普通は10年がヒトの「時間感覚」の限界だ

p55.「自然というのは何百年という単位で動いていて、短期ではよくわかりましぇん」「異常気象が本当に異常だったかなんて、千年経たないとわかんないんです」これには「異常だ異常だ大変だ」と言いたかったテレビ局側のコメンテーターが結構困っていたが、気象を本職としていた福井敏雄さんの本音だったのだろう

p56.人間はもし今の地球温暖化をくぐり抜けたとしても、数千年・数万年後には、確実に、厳しい寒冷化と直面することになる。これはヒトの感覚を離れた、しかし確実な長期的なインサイトだ

p56.過去に学ぶとき、必ずより昔まで遡ろう。かつその時、予断を廃し客観的事実を見つめよう。大きく時間を動くとき、決してヒトの感覚に頼ってはいけない

p48.「年齢や性別といった『属性』的に、『平均的な人』はいまや存在しない」

p63.「優秀なもの」が居なくなることで「ちょっと優秀なものがとても優秀に」なり、でも「ダメな奴はダメなまま」ということだ。なかなかシビアな結果である。同様のことが、働きバチの世界にも観察されているらしい。では「働かないサボりアリ」には、何か存在価値があるのだろうか

p64.言うまでもなく、(アリに限らず)ヒトの能力やその価値は、簡単には計れない。それは複雑で精妙なものだ。ただ、何れにせよ、その各々の価値は「平均的に」皆で支えているわけではなく、一部の者が「ベキ乗分布的に」支えている、ということだ

p69.「平均点を4点から0.1点上げろ!」ではなく、「評価4と5の顧客の比率を90%から94%に増やせ」という方が言う方も聞く方も100倍分かりやすいだろう

p71.ヒトの記憶は、①目撃時に間違い②記憶期間中に薄れ③想起時に歪む

p74.強盗・殺人の犯人は、取調官を信頼したり、動かぬ証拠を突きつけられたりして自供するのではなく、ちゃんと話を聞いて貰って理解して貰った(と感じた)時に自供しているのだ

p76.これは認知心理学上、次の3つの類型が挙げられている。①利用可能性(availability)ヒューリスティックス②代表性(representative)ヒューリスティックス③係留(anchoring)と調整(adjustment)のヒューリスティックスだ。簡単に言えば、①は「思い出しやすいものを、起こりやすいものと誤認する」ことであり、②は「統計や因果関係を無視してある典型事例を他の事例に当てはめてしまう」ことであり、③は「最初の印象にこだわりすぎ、ちょっと推測を当てると自信過剰になる」ことだ

p78.自動車の場合、輸送量1億人キロ当たりの死亡者数は1.16人程度であるから、年間1万kmのペースで30年間運転すると、死亡する確率は約290分の1。つまり、平均的な自動車ドライバーは約300人に一人、必ず自動車事故で死ぬという計算だ。統計上は飛行機の方が遥かに安全だ。鉄道に至っては、輸送量1億キロ当たりの死亡者数はわずかに0.002人程度(過去30年の平均、2005年はJR尼崎事故の影響で0.016人)である。これは航空機の数十分の一であり、自動車の数百分の一だ

p82.しかも、アンカー点から大して動けない、というだけでなく、アンカーを強力にする方向に「調整」は働きがちだ。これを確証バイアスという。先般の「見たいものを見る」「聞きたいことを聞く」というのと同じだ

p124.羽生棋士が創ったスタイルは「重要そうな戦法だけを、幅広く、かつ、そこそこ深く研究する」というものだ

p133.レシピの公開・共有も、一気に進めた。調理手順の統一とマニュアル化も実施し、大量準備・大量調理の礎となった。このレシピは全国から集まった300人の料理人の手に残り、その後、日本全体の料理レベル向上に資することとなった

p181.身近な本屋に行って、売れている順にざっと立ち読みして、自分の一番知らなさそうなテーマのものを毎週一冊ずつ買って読む。もしくは図書館でもこれは可能。それならコストも掛からない

p196.トヨタと日産は、86年に「衝突安全ボディ」を投入した。特にトヨタはその後わずか2年でほぼ全車種にGOAを導入し終えている。トヨタは当初から本気だった。2年で導入を完了したということは、全車種へのGOA採用を、実物を世に問う前から決めて実行していた、ということだ

p212.「ブランドは(既存)顧客と共に老いるべきか」一方、ジャンプは異なった編集方針(戦略)を採った。表紙や巻頭でのアイドルのグラビア写真もなく、雑誌のテーマは一貫して「友情・努力・勝利」だった。ターゲットはあくまで小学生である。他紙が小学生離れを起こす中で、ジャンプは小学生に深く浸透した。同時にそれを中高生が読み続けた。実際、毎日新聞社の世論調査によれば、ジャンプの読者層は1971年には20代まで、81年には30代、91年には40代・50代と大きく広がっている

p220.これが、既存の顧客層である小学校高学年・中学生の反発を招いた。「低学年の子が着ているのと同じものを着たくない」

p223.この累計400万件強に及ぶ「クチコミ情報」(評点とコメント)こそが、アットコスメの存在意義・存在基盤であり、多大な手間を掛けて「クリーン」な状態にされている。クチコミは全件、社員が見てチェックし、ルール違反のものは排除する、もしくは、本人への内容確認を行っている

p229.このJR京都伊勢丹が開業時に直面したのは「抵抗勢力」による商品ラインナップ不足だ。競合となる老舗の既存百貨店が圧力をかけ、大手のブランドが軒並みJR京都伊勢丹への出店を断ってきたのだ。JR京都伊勢丹は仕方なく、若者向けの新ブランドの集積地化する、という戦略を採ることになる。「モスキーノ」「アナスイ」など関西・京都初登場(つまりは実績のない)ブランドを数多くそろえたり、「解放区」という名で新進クリエイターのコレクションを集めたりといった方策により、なんとかフロアを埋めた。結果的にはこれが大当たりし、新しい客層の開拓と共に、京都外の顧客を誘引する力ともなった。実際、3割以上が京都府外の客である

p234.これらマーケティング・ミックスの中でも、出色だったのが交通広告への投資である。元々のターゲットである20代半ば~50代の男性は、テレビ視聴率が極めて低い。特に平日夕方に家でのんびりテレビを見ている人はほとんどいない。そのため、首都圏の地下鉄等を中心に、大規模な交通広告を展開した

p236.「完全無菌状態で充填しますから、他社のように乳化剤とかビタミンCなどの菌制御のための添加物を使わなくてもいいのです」「無菌の状態下、無菌のボトルに詰め、無菌のキャップをします。常温の状態で詰めますから、風味が逃げません」(カゴメ伊藤正嗣社長、当時)

p242.この章で挙げた事例は、ほとんど一般的に入手可能な情報源に依っている。私がこの事例たちを知ったのは、『日本経済新聞』、『日経ビジネス』、『週刊東洋経済』、『日経流通新聞』等を読んでいて「出会った」ことによる

p243.その企業の方が「優秀だから」「速いから」「上手いから」では答えになっていない。ましてや「頑張っている」とか「いない」とか、そんなことは(本当は重要だが)どうでもいい。頑張りで済むならコンサルタントは要らないし、ソ連も崩壊しなかった

p250.何を得て何を諦めるのか、その「トレードオフ」を明確にするためのツールが2×2マトリクスだ

p250.経営者自身が理解し、決断し、それを人に伝えられる、おそらく唯一の意思決定支援ツール、それが2×2マトリクスなのだ

p258.相手の「一度に聞くキャパシティ」は60秒~90秒。それ以上になると、こちらが発する言葉を吸収しきれなくなり、集中力も一気に低下する。だから一つのことを「興味付け」「前提説明」「事象説明」「本質説明」と進めるのに、最大90秒で終わらせる。こういった事柄は、「コミュニケーション」の奥義であると同時に、思考自体を突き詰めるのに丁度良い。より簡単に、より単純に、より本質的に、そして、より面白く(キャッチーに)

p259.ヒトの記憶の入口であり、短期記憶の中枢、海馬。今日一日の出来事はここに貯蔵され、ヒトが寝ている間に勝手に取捨選択・整理され、中期記憶へと送り込まれていく。この再整理の過程で、記憶のランダムな組合せが行われ、それを「見た」ものがヒトの夢の正体だ。海馬は深夜、ヒト知れず黙々と仕事をしている。様々な記憶をくっつけ、連関性を判断し、繋がりの良いものを勝手に繋げて、バックヤード倉庫へ放り込む。これを無闇に覗いて、海馬の邪魔をしてはならない。眠りの時間や深さが足りなければ、短期記憶の再整理・移動が為されず、海馬の処理効率は落ち、遂にはオーバーフローし、暴走を始める。それがいわゆるボーッとした状態であり、白昼夢状態である





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