藤川太「サラリーマンは2度破産する」朝日選書

公開日: : 最終更新日:2011/09/07 書評(書籍)

良書。内容はオーソドクスであり、平均的だ。家計のプランニングにおいて必要最低限のことは網羅されている。いちおう為替や商品取引まで紹介できている。したがって一冊だけ買うべき入門書としては最適なものの一つだと思う ただ正直、自分には得るところはほとんどなかった。もし自分が社会人になりたてのころに読んでいれば、保険で回り道をすることはなかったし、もっと勤務先の制度を活用できていたと思う 筆者のようなファイナンシャル・プランナーに、数万円程度の手数料を払ってアドバイスを受けることが、もう当たり前な世の中だ。家計のそれぞれの局面で、人は、それぞれの専門業者と対峙しなければならない。丸腰で銀行、証券、保険、不動産、商品先物の各業者を相手にするのは危険だ。これら業者を縦横無尽に利用尽くしてやろうと思うくらいの、事前準備が必要だ。または助っ人、それも自分のカネで雇う助っ人が必要だ こういうことのために、それぞれの切り口から本を数冊読むくらいのことはやっていい。自分もやってきた。このblogでも少なくない数の本をメモしてきている 宅建試験に合格したというのはやり過ぎかもしれない。これも、不動産業者と向き合うとき、特にその直接の担当者の名刺に「宅地建物取引主任者」の肩書きがないなら、もう最初からバカにしてかかっていい、というのが愉快だ。どうせ、向こうは合格できないのか、この業界に思い入れがないのだろうから、まずその辺の質疑から入るよね 自分は不動産の広告を見てちょっと気になった物件には業者に電話して資料請求することがよくある。そのとき向こうのペースでセールス・トークが開始されると、遮って次のように応える。「予算は2億くらいまでは大丈夫。個人の自家使用目的であればこれで十分だし、これを自力で借りる当てもある。物件は一つとして同じものがないのに、業者によって教えてくれる物件が違うので、なるべく多くの物件を教えてもらいたい。興味があれば必ずあなたに連絡するし、成約に至った場合には喜んで相応の手数料を払う。更地でもいい。中古一戸建てでもいい。中古ならリフォームなどせず現状のまま紹介してくれればありがたい。ただ、建築条件付と新築建売はイヤだ。そして、メールや投函で紹介して欲しい。こちらから求めていないのに電話をされたら、お付き合いはその時点で中止する」。すると、これらはすべて真摯に言っているのに、全然その後食いついてくれない。その程度の業界なのだ
p28.一度高くなった生活レベルはなかなか下げられない。そのため、収入が下がったときには、もともと収入の高かった人ほど貧乏スパイラルに陥りやすい傾向がある
痛感。いまさらなしで済ませられない文明の利器って多いよね。シャワートイレ、食器洗浄機、エアコン、エスプレッソメーカー、着心地のいいスーツ、高級な事務椅子、エトセトラ、エトセトラ
p29.例えば、40年間サラリーマン生活を送った人の働いている間の平均年収が500万円であれば、もらえる公的年金は年間200万円程度だ。一方で、平均年収が1500万円の人でも年間300万円程度。年収が3倍でも、もらえる年金は1.5倍程度にしかならない p38.現在では4世帯に1世帯は貯蓄がないことになる p40.「近所を散歩していたらオープンルームをやっていた。見学したら気に入ったので申し込んだ。買っても大丈夫だろうか」
ここまでの人と読者を一緒にしないで欲しいな。不動産の魅力の抗いがたさはよく理解できるけど
p43.車の運転でもアクセルの踏み方よりも、ブレーキの踏み方を覚える方が重要だ。人生は長い。お金で苦労しない人生のためには、お金の使い方こそ重要だ p46.やりくり費を削ることは生活レベルの低下を強く意識することになる。例えば、「明日から食費を半分にしよう」とか、「お父さんの小遣いは来月から半分ね」なんて言われたらどう思うだろうか p47.やりくり費と違い、固定費は削っても生活レベルへの影響は少ない。しかも、やりくり費は毎日継続的に努力しなければカットできないが、固定費は一度削れば苦労せずに長期間効果が持続する p56.車や家電製品を購入する際には、いろいろな会社の商品を一生懸命比較検討するだろう。食料品や日用品を買うときでさえチラシ広告を並べて比較しているかもしれない。ところが、生命保険などの金融商品や住宅を購入する際には、しっかり比較検討しただろうか p82.賃貸に住んでいれば一般的に老後も家賃が延々と続くことになるが、たとえば田舎に引っ越すとなると家賃もグッと少なくて済むものだ。場所を選ばなければ都心の駐車場代程度の家賃でも、人が暮らす家を借りることは十分可能だ。長い期間を考えて住まいの計画を立ててみよう p94.これまでも住宅を購入したことがきっかけで、歯車が狂った家計を数多く見てきた。「住宅を購入する=資産を持つ」というイメージがあるが、これは購入した不動産が値上がりしない限り、ただの幻想だ
この辺で筆者は“ロバート・キヨサキほか「金持ち父さん貧乏父さん」筑摩書房”を引用して、その功罪というか、言うとおりに行動して成功した例と失敗した例を紹介している
p101.販売業者にとっては住宅を購入してもらうことが一番であって、購入者が安心してローンを返済できるかどうかは二の次だ。また、購入する側も冷静さを失っていることが多く、「借りられる」ことに重点を置きがちだ p119.さらに翌年には会社に営業に来ていた営業レディーから加入した。テレビ番組表が載っている小冊子を毎週もらうようになると、次第に仲良くなった。バイオリズムを出してあげると言われ、生年月日と名前を教えると数日後バイオリズムとともに保険設計書を受け取った。そして最後には、営業所長を名乗る若い男性とともにやってきて「今月営業成績が苦しい…」と契約をお願いされ、断りきれずに契約してしまった。まさにプレゼントと人情だ。こんな経験を持っている方は少なくないはずだ p147.どの程度の予定利率であれば残すのかという判断は難しいが、終身保険なら1996年4月1日以前の契約日のもの、養老保険や年金保険であれば1999年4月1日以前の契約日のものであれば残す価値があるので、保険を見直すときには慎重にしたい
自分は、そういう保険でもバッサリ解約したけどな
p159.「雑所得」であれば赤字が出ても、給与所得とは通算できない。しかし、「事業所得」として副業をすれば、副業の赤字分を給与所得と通算し全体の所得を低くすることが可能だ。そうすれば、給料で源泉された税金を戻してもらうこともできるのだ。副業を事業として行うには「青色申告」の届け出を所轄の税務署へしよう。「事業所得」として認められれば、他の所得の損益通算だけでなく、赤字分の繰り越しも可能となる p160.サラリーマン家庭で最も確実に収入を増やすためには、妻が働くことだ。男性が相談者の場合、妻が働くことにあまり価値を見いだしていない人がいる。そういう人からは、「どうせ小遣い程度しかもらえないのだから…」といった否定的な言葉が出てくる。ところが、妻が稼ぐ月数万円の収入がいかに家計を助けているか、シミュレーションをするとよく分かる p175.多くの人がもっとも嫌うのは、恐らく「元本割れ」だろう。しかし、お金は物やサービスと交換してはじめて価値を持つものだ。だから、運用の最低限の目標にすべきは「物価上昇に勝つ」ことだ p200.投資家にとっていい物件には、広告宣伝や電話での勧誘は必要ない。あなたが本当に投資すべき物件は多くの人が血眼になって探していて、出てきたときにはあっという間に買われていく。大家さん業も他の投資と同じで甘くはないことを肝に銘じていただきたい p206.預金しかしたことのない人がいきなり投資や運用をしようとすると、業者にカモにされて、大失敗してしまう可能性も高い。とはいえ、投資や運用はリスクがあるから近寄らない、というのではなく、日ごろから少額ずつでも経験を重ねておくといい。リスクのある投資をするのだから損をすることもある。損をすると「二度と近寄りたくない」と考える人も多いが、利益から学ぶよりも、損から学ぶことの方が多い。なぜ失敗したのか分析することで、成功にどんどん近づけるはずだ。コツコツと時間をかけて勉強し、練習していくことで徐々に上手になり、投資が「怖い」ものから「楽しい」ものへ変わっていくことだろう
これら指摘の部分、まとめて金融リテラシーのない人には肝に銘じて欲しいと思う。こういう無知に乗じて商売をするのは大嫌いだ。現状、規制で電話勧誘が禁じられている為替証拠金取引業者がむしろ最もマトモだったりするんですけど 20070105003700
サラリーマンは2度破産する
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藤川 太著 朝日新聞社 (2006.10) 通常24時間以内に発送します。

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