山田修「あなたの会社が買われる日」PHP研究所

公開日: : 最終更新日:2011/09/03 書評(書籍)

なんか、実際に読んでみて、タイトルとは全然違う内容に驚いた。M&Aのことが書いてあるわけではない。会社のコントロールを巡る人間模様というほうがふさわしい 珍しく休みも入れずに一気に読み終えてしまった。確かに面白かったのだが、だってフィクションだもの。内容も細部でなんか微妙な納得いかない記載がある。まあ、本をそのまますべて真に受ける人もいないだろうから、その程度の割引はしても十分に面白い ネット上のコラムだかブログで読んだと思うのだが、外資に勤める人はパソコンのウイルス監視ソフトのようだというのがあって手を打ったことがある。大したことでもないのにいちいち出てきて報告してくれるというのがあった。そうでもしないと上司に認められないから自己主張が強いのだ、とそういう大意。そんな外資従業員のギャーギャー感はうまく表現されている
p33.しかし、迷いが長く続くことはなかった。外資の社長として、日本の法人を預かっている立場の者として、私は本社の指示を遵守することにしたのである。外資の人間として、それは金科玉条みたいなものである。結局は出先の責任者でしかないのだ。そこが日本の会社の社長との違い、ましてやオーナー社長との大きく、決定的な違いである p43.(マイケル・ミラーの立場はどうなる?)私は考えを巡らせ始めた。(伊東君、君はもしかしたらやりすぎたかも知れない)暫く考えをまとめて、伊東が出した公開質問状の上に足し書きする形で、私のメッセージを英文で書き始めた。その宛先はマイケル・ミラーである。公開とはしない。逆にメールの最初にまず「機密通信」と入れた。(大きな声で威嚇するより、ささやき声の方が恐い時もあるよね) p54.「退出に当たって、私物は持ち出して構いません。その私物持ち出しチェックのために、ガードマンの人に立ち会ってもらうので了解してください」 p56.しかし、実際部下を怒鳴りつけるような事は社長を務めるようになってからほとんど無い。部下と、自分との権限の差があまりに大きいので、私が怒鳴るような事が有ると、部下が完全に萎縮してしまうのだ。私はほとんどの場合、会社では自分の感情をコントロールするように、自分を抑制する術を身に付けてきた。記憶をたどってみると、私が我を忘れて怒鳴りつけてしまったような人はやがてその会社から居なくなってしまっている
最近はパワハラという話も出始めた。上下関係の上にあると、パワハラやセクハラで気を遣うことが増える
P60.「それは難しい、止めた方がよい」と、言うではないか。日本の法律、判例では、懲戒解雇を認める事について相当慎重で、先進国の中では例外的なほど労働者側の権利が優先されているからだ、と言う。解雇しようとしている両副社長は、取締役としていないので、労務的には従業員という立場である。その傾向は私も知っていた事であり、だからこそ専門家の意見を聞こうとしたわけだ。「とりあえず自宅待機として、自主退職を説得しなさい」とアドバイスをしてくれた。つまり、辞表を書かせろ、ということだ。しかし、「そのために割り増し退職金を提示しろ」とまでアドバイスをもらって、(そこまでするのか)と、少し鼻白む思いがしてきた。割り切れない思いは残ったが、その点は彼と議論までする事柄でもないので、アドバイスを謝し電話を切った。後日そのコンサルティング・フィーとしての請求書が届いた。この10分ほどのアドバイス料は30万円ということだった。私は値切ることなどなく、すぐに支払いにまわした。困ったときに専門家の助言を仰げる、という事はそういうことなのだ
最後の部分、その通りだとは思う。しかし著者の立場を踏まえると信じてもらえないのではないかと心配する
p62.夕方になって、ようやく会社の顧問弁護士から電話が返ってきた。アウト・プレースメントのコンサルタントに電話した事は口にせず、同じ相談を繰り返す。専門家というのは、別の専門家にも相談をかけているという事をとても嫌がるからだ。両天秤にかけられているとも感じるし、プライドの問題も有る。そして、相談する当方の立場としては、2つの独立した見解を突き合わせるのがよろしい。医者の場合の「セカンド・オピニオン」を探すのと同じことだ。ところが、この弁護士先生が見事に朝のコンサルタントと同じことを私に告げた。こうなったら、もう専門家たちの意見に従うほかはない。そして、このようなプロセスを踏んだ以上、本社は後になっても決して私に異を唱える事はない。私はそう確信して、少し心が軽くなって帰宅の徒に就いたのである p96.実はガードマンによる有無を言わさずの送り出しは、アメリカでは解雇の場合、決して珍しい事ではない。日本に来ている外資でも、金融系の会社では時々聞く話なのである。実際、解雇を通告された経理担当のマネージャーが、怒ってコンピューター上の経理の全データを消して退出してしまったという例を私は知っている。東京に来ている外資の話だ p68.クーデターとなったであろう、副社長主導の全体朝礼を中止にしたとしても、その後で解任の説明集会を全体で開いてしまったら、集団心理も働き私が収拾できないような成り行きも有り得る、と危惧したのだ。さらに、大会議室が空いていれば自然発生的に社員が集まって来て話し始め、さらには私を呼んで説明を求めるような展開さえありうるかもしれない p74.「君のところ、売りに出ているじゃあない」これもイギリスが本社であるS・G・ダルトン証券の鈴木部長が、訪れてきた早川純一と商談をしている際に告げたのだ。S・G・ダルトンのロンドン本社には投資事業部門があり、そこではM&A(会社売買)の仲介も積極的に行っている。そのM&A部門が世界中にある自らの支店に対して発信している「買収先を募集せよ」という情報リストの中に、ムーア・データの本社としか思えない会社が載っているというのである p81.ロジャーが更に不可解な話をし始めた。「そのオリエンタル・ファンドが、ムーア・データのそのソフトを、ムーア・データ自身とムーア・データが契約した契約した顧客以外のいかなる相手にも使用許諾しないと言っているのだ。そして、ムーア・データの資本構成が少しでも変更する場合には、ソフトの継続使用を拒否できるという契約になっている」「それじゃあ…」「ジュン、そうなんだ。その結果、単なる投資会社であるオリエンタル・ファンドがムーア・データの資本の買収先候補を審査、選択できるということになってしまっている」 p82.「それが匿名事業組合というやつで、一切明かされていない。オリエンタル・ファンド自身も運用しているのはこのファンド1本だけで、まるで誰かのための幽霊会社、あるいはペーパー・カンパニーのようなファンドなんだ」ムーア・データ本社の幹部たちが連絡を取るのも、オリエンタル・ファンドを代表するという香港の弁護士で、このファンド自体独立した事務所さえ持っていないと、ロジャーは早川に説明を続けた p90.アジア・パシフィック本部を牛耳っているイギリス人とオーストラリア人たち。前者はクラス(階級社会)意識、後者は白豪主義に骨の髄まで毒されていて、中国系や日系のアジア人たちをいつもないがしろにしている。欧米の外資で珍しくも無い、レーシズム(人種差別)的な扱いのことだ。積年の反感が 会社の存亡危機の時が来て、遠慮の無い形でブライアンと早川の間で共鳴しあった p95.「その影の出資者というのはウチなんだよ」一瞬、何を言われているのか3人の誰も分からなかった p105.早川の弁護士は、早川に自重と慎重を求めた。「早川さん、ムーア・データのイギリス本社まで本当に潰れてしまってから動きなさい。そうでないと…」と、いうわけである。不思議とクロスインフォ側が香港で頼んでいた弁護士と同様なことを言う。異なる専門家が個別独立に助言を求められてほぼ同じ見解を述べた。(こういう時は耳を傾けたほうが良いのだろう)外資を渡り歩いてきた「雇われ経営者」としての早川は本能的にそう思った p108.次の日、早川、ブライアン、ジョナサンの3人はクロスインフォ・ホンコンの代理人と称する香港の弁護士から不思議なファックスを受け取った。それにはこう書いてあった。「クロスインフォ側は、顧客の紹介を受けることを前提に、ムーア・データ側といかなる交渉や接触を持ったことは無いことを確認する」それは、一方的なファックスだった p146.そんな会社で、ファンドを代表しているということから、トリアニーの幹部たちは、皆自分に一目も二目も置いてくれる。MA投資社の社内にいれば自分はあくまで一部長でしかなく、投資会社の管理職として数字と資料だけに追われることが多い毎日だ。ところが苦節数年、いや証券会社勤務時代から数えれば20年がかりで手に入れたトリアニーのほうに来ていれば、まるでオーナーの扱いを受けることができる。本社はもとより、工場でも重要なミーティングがあれば求められなくてもほとんど出席するようになってきた p163.(これではまるであのF社の二の舞ということで、オレは笑いものだ)F社とは足袋で有名な老舗メーカーで、同じく数年前に別のファンドが買収して、外部から採用した社長を送り込んでいた。その新社長は「カリスマ・バイヤー」として結構世の中で知られていた人物だったこともあり、「F社の企業再建物語」といった類の本があっという間に4冊も出た。しかもその中の1冊は、その社長自らが着任後数ヶ月を経ずして著したものだった。ところが、この社長は何と1年もたたずに辞任してしまい、F社の物語全体が今では笑い話のように伝えられるようになっていた
これは記憶に新しい「福助」以外のなにものでもない。確かに往時の勢いはなんだったのかと
p174.形だけの買収適格報告書は、それぞれの会社に対して投資資金を用立てる銀行に対しての形だけのものでよかった
20070120173000
あなたの会社が買われる日
posted with 簡単リンクくん at 2007. 1.20
山田 修著
PHP研究所 (2006.6)
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