蔵研也「リバタリアン宣言」朝日新書

公開日: : 最終更新日:2012/05/20 書評(書籍)



軽く読むことができる。タイトルから想像するとおりの内容。リバタリアンの考え方を理解する入門書としてよい



p38.ここでのキーワードは、国民生活の向上のために、すべての制度を「国がきちんと」整えることです。本書を通じて、このような国家による個人に対する後見主義的な考えを、「クニガキチント」の誤りと呼ぶことにします



この呼称を提示したことが、この本の価値を出していると思う。ハイエキアンやリバタリアンに関する本は多くあるが、それを日本に当てはめて説明するところ



p73.長く生きるために自分の物的な資源を使うか、あるいはそれ以上に重要な個人的な価値のために散財するのかは、本人の財産権の処分であり、本人だけが決めることができる性格の事柄です。保険に入らずにのたれ死ぬのも、また人生の自由で多様な選択肢として認められるべきです。命より大事なものはないなどという、余計なお世話の心から、他人の感じる価値を無下に否定するべきではないと思います



こういう話でいつも思い出すのは、戦乱の中の商人の話だ。ケチで有名な商人が、自分を賭けてもいいと思う事象に対してすべての財産を投げ打ったという、確か司馬遼太郎の本でのエピソード



p86.自由な社会では、大学も自由に入学試験の内容を決めることになります。国際的に評価される大学になるために必要な基礎学力は国際バカロレア資格として定められ、内容的には数学と語彙、抽象的論理関係などがすでに確立しているのです

p86.はっきり言って、私はそもそも歴史など教育する必要はないと思います。それでなくても、日本ではNHKが歴史上の有名人物のドラマを、私たちのポケットから無理やり集めた受信料でつくっているのです



歴史を教育する必要がないというのは、リバタリアンにとってオーソドクスな考え方なのだろうか。数学と語彙だけでなく、歴史に学ぶところは大きいと思うんですけど。それをNHKでやる必要がないというのは、そもそもNHKが受信料を強制的に集めることが問題なのだから。私としては、大河ドラマを毎週見させてもらっているだけで月数千円くらい払ってもいいかなあと思っているけど



p105.十分な予算がまわらないと心から思う人は、それでは自分の収入のうち、いったいどれだけをホームレス対策に支払う気があるのかを自らに問うてみてください。有り体にいうならば、誰か金持ちの「他人」の金で政策を実行するべきだという高邁な思想を当然視する前に、自分の金をどれだけ支払う覚悟があるのかを反省してほしいのです



いい言葉ですね



p108.そこで大活躍したのが、淀屋などの大阪の豪商たちです。大阪には土佐堀川にかかる淀屋橋や長堀川の吉野屋橋、東横堀川の葭屋橋などの屋号のついた橋が多くあります。その名からわかるように、これらはすべて大阪の活発な商業活動に支えられた商人たちが私費で架設したものなのです

p117.アイン・ランドの代表作の一つ、『水源』の主人公ハワード・ロークの発言「中古の生き方をする人間の基本的欲求は、糧を得るために、人々との絆を固めて安定させることになります。中古の生き方をする人間、セコハン人間にとっては、まず人間関係が何よりも優先するのです」

p156.こういった税金のバラまきによる多様な補助金、政府の規制による間接的な損害などを含む複雑な損得関係を計算するのは、現実には本当に難しいと思います。つまり、私はほかの日本人よりも得をしているのかもしれませんし、損をしているのかもしれません。しかし、一つだけいえることがあります。それは、「国家」が現在のような無意味な再配分をしなければ、もっと豊かに自由に暮らせるはずだということです



これもいい言葉ですね



p172.どこの国においても、過激な民族主義はほとんど男性に限定されているという事実。ネオナチにしても、KKKにしても、現在の日本の嫌韓、反中にしても男性が中心です。もちろん、その原因の一つには、男性のほうが男性ホルモンであるテストステロンの濃度が高く、攻撃的であるという生化学的な事実もあるでしょう。しかし、この現象の究極的な理由は、もっと進化論的な説明に求める必要があります。戦国時代でも、男性の武将は領土戦争で勝てば側室を娶り、大量に子どもを残すことができました。しかし反対に、戦に負ければ殺されることが普通でした。これに対して、女性は次世代の子どもを生むために勝利者の妻となって生きることが多かったという事実があります



北の零年とか、今年の大河ドラマとかを想起する



p177.マイクロソフト、アップル、アドビなどは、国家とはまったく独立のものです。これらの人々がつくった現存の規格が、どのような国家からも直接的な影響も支持も受けていないことはまた、今後すべてのデファクト・スタンダードが脱国家的であるだろうことを示唆しています

p179.当然ながらトロンは普及しませんでした。これをまさにアメリカによるトロンつぶしだとする坂村教授の意見は、ナショナリストに受けはしても、実際にはなんの説得力もありません。マイクロソフトのウィンドウズに対抗しているのは、フィンランド人リーナス・トーバルズの開発したリナックスなのです。彼のプロジェクトが支持されているのは、ひとえに彼の「みんなで共にコンピュータの基幹ソフトを開発してゆこうじゃないか」という発送を、世界中のコンピュータ技術者が理解し、協賛しているからなのです



トロンの失敗。政府系のホームページでpdfファイルなどを掲載しているのは痛快



p182.リナックス運動の基礎となったGNUプロジェクトをはじめたのは、MITのコンピュータ・サイエンティストのリチャード・ストールマンでした。彼は「知の共産主義者」とでもいうべきカリスマだといえますが、実際に、彼の主張はひじょうに極端なものです。彼は、あらゆる人類の知的資産は非排他的なものであり、前人の知的資産の上に構築されている以上、すべてが共有されるべきだというのです。これは科学的な知識をみれば、想像できるかもしれません。科学上の知識は、まさに人類の共有財産であり、その成果は発見者の名誉と共にすべての人類に開かれているのです



確かにね。リバタリアン的な考え方からすると知的財産権の概念も問題ということになる



p189.市役所や県庁、あるいは国の出先機関などの官庁と、スーパーやデパート、クルマのディーラーなどの典型的な商業での、接客の快適さを比べてみてください。前者は、日本国の憲法にもうたわれているほど高尚な義務を負った公僕です。それに対して、後者は建前上、利益第一主義の営利組織の従業員です。しかし、私たちは本当のところ、どちらから人間らしい取り扱いを受けているのでしょうか



これも名言

20070623163500

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