荒井千暁「勝手に絶望する若者たち」幻冬舎新書

公開日: : 最終更新日:2011/12/09 書評(書籍)



世代を切り取るものなので、スノビッシュな興味からスムーズにページが繰られる。ときどき的確な指摘があり、考えさせられる記述がある。しかし、どうにも全体的にまとまりがなく、やっつけ仕事的に書き散らしたようにも感じる

最後のレターのところは、そこだけでも価値のある内容。そういう意味では、もっと著者が関わった具体的な患者や従業員の話があればよかったようにも思える

このような幾分否定的な感触は、書体が「ですます」調であることにも関係があるように思う。正直、読み始めは辛かったし、著者のプロファイルを半ば誤解していたようにも思い、読み始めのごく初期の段階で、著者のプロファイルを読み込み直す羽目になった



p23.AからFまでの要素は、1990年代まではほとんど聞かれませんでした。A仕事を教えてくれなかった。B即戦力になれなかった。C意見を聞いてもらえなかった。すべてが一方的だった。Dしたいことをやらせてもらえなかった。E採用面接では、「したいことは何か」と詳しく訊かれたかが、実際は別の仕事になった。F職場の雰囲気が悪かった。遊び場だと思っている人もいれば、陰湿な言動もある

p24.大学で学んだことで実際の仕事に役立つことはほとんどありません。つまり、まっさらの新卒者は即戦力にならないのです。だからこそ現場での教育が大事になってくる

p32.ムダが多い、いまでもサークルの乗りが消えていない、専門性は高いが得意としている分野が狭く、その分野の仕事を死守することだけを考えている、といった内容が、バブル期世代の特徴としてしばしば指摘されるが、団塊ジュニアにみられる転職志向は、それと関係しているようだ。バブル期世代のようにならないために、自己研鑽や資格取得への努力を地道にしているわけである

p73.城:格差自体はあってしかるべきだと思う。だけど、今の問題点はそれが世代によってかなり偏っていること。現在、非正規雇用者(フリーター・派遣社員)の数は500万人近いですけど、その8割って35歳未満ですから。この世代は子供ができたり、家を買ったり、本当は一番お金がかかる世代。それなのに、この世代が格差を全部受け持っているわけですよ。そこは格差社会という言葉で片づけてはいけない

p76.2005年から2006年にかけて、当時24歳から29歳だった離職者たちから受けた印象のなかで、若者を語る上でのキーワードを挙げるとしたら「矜持と自信」でしょう。ひとりの力で何もかもできると思うし、またわからないことがあっても他人の手を借りずに独力で解決しようとする姿勢に象徴されます

p87.就職氷河期を味わった未婚の団塊ジュニアは、何もしない時間や精神的な癒しを求めるなど淡白な生き方をしており、既婚者のそれと異なっています

p114.茨城県の東海村にある原子力発電所で臨界事故が起きたことがありました。事故をまとめた事故調査委員会報告から見えてきたのは、素人の手による安直な創意工夫でした。マニュアルには、業務を遂行するための手順がいくつも書かれていたのですが、現場担当者はその手順の一つひとつが「不要」なものに見えたようです。ためしにひとつを省いてみたら、業務に支障はありませんでした。それでふたつ目を省くことにしました。それでも支障はありませんでした。そうしていくつかの手順を省いたとき、臨界事故は起きたのです。事故調査委員会が重視したのは、現場担当者たちが口にした[創意工夫]でした。不要なものなら省いてしまったほうが便利との判断は、専門家からすれば素人の手抜きでしかなかったのです。とどのつまり、マニュアルにあった手順の意味が理解されていなかったことになります。手順を省く前に「どういう理由や必要性があって、この項目があるのか」を考える行為がおろそかになったとき、マニュアルは意味を失います。列記されているものは余計なことまで書かれていると各自が思うようになってしまえば、すべては自由気儘に行われるようになります。もはやそこに技術の伝承なる思想は存在しません。大事な考え方は「どういう理由や必要性があって」という視点からモノを考える姿勢です。その過程(プロセス)で各自が考えるようになるばかりでなく、必要な項目や足りない項目、あるいは不要な要素が見えてくるようになります。あるいは自分たちの職場が、既存の技術によって支えられている部分が大きい職場なのか、新たな技術がスピードとともに入り込んでいる職場なのかを見極める必要もあるでしょう

p133.それらはいずれも、会社の上層部から指示されたからやっているものばかりです。少なくとも産業医になる前に、こうしたことが業務であるとはまったく知りませんでした。知っていたら選んでいたかどうか。いまとなってはわかりません。あるいは、職場のメンタルヘルス。産業医になった当時、メンタルヘルスなどという用語は職場にはありませんでした。話題になったときでさえ、それは精神科医の仕事だろうとわたしは思っていました。けれども、それはあなたの仕事でしょう、といわれたから取り組むようになったのです。そんなことでいいのかと問われそうですが、事実ですからそう応えるしかないのです

p138.若者たちの「離職理由」をよく眺めてみると、そこに欠落しているものがあることがわかります。《後工程》という概念です。後工程を考える姿勢とは、自分の仕事を受け渡す人のことを考えよ、という姿勢です。仕事を受け取る者の立場に立って仕事をせよ、ということであり、より完成されたかたちで仕事を渡せということでもあります

p177.なら意見をいいましょうか。足を引っ張ることになるかならないか、ということなら、当初は足を引っ張ることになるのではないでしょうか。だって、これまで経験ないことを始めようというわけだし、周りがベテランばかりというならなおさらのこと。そうは思いませんか? 新しい業務に取り組んで、最初から水を得た魚のように自由奔放に動き回れる人なんているはずがない。わからないことがあったら、素直に訊くことです。こちらは知らないし、経験だってないのだから。相手だって、それを教えるというのは、大事な業務であり責務なんです。ひとつアドバイスをするならば、ノートを持参されるとよい。不安を抱いたままで臨むと、聞き漏らしが生じやすい。それでなくても、新しい用語や技術を覚えなくてはいけないから、聞いたままだと右から左へと抜けていってしまうものです。昨日聞いたことを、また翌日に尋ねるのは、気が引ける。だから聞いたままを記録する。いうなればカンニング・ノートです。自分で書いたものは後で読むと結構覚えているものです。わたしが使っているカルテ。これだってカンニング・ノートそのものです。いつ、何があって、どう対処したか。たくさんのことはとても覚えていない。けれどもこうしてぱらぱらとページをめくれば、去年の何月にはこんなことがあって、今年の何月にはこういうやりとりがあったと思い出せます。読んでいると、どこでどういう格好でしゃべったかという光景まで浮かんできます



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