野口悠紀雄「われわれは生活防衛策を真剣に考える必要がある(『超』整理日記430)」週刊ダイヤモンド2008/09/20

公開日: : 最終更新日:2012/02/10 書評(雑誌), 週刊ダイヤモンド, 野口悠紀雄



このコラムにおける日本に対する著者の傾向は前からかなり悲観的であるが、今回は悲観そのもの。本旨とは違うところで2点気になった。一つはマスコミの取り上げ方、もう一つは列車運行の遅れ

マスコミは事実報道以外の部分を読み進めるにはかなり勇気が要る。このため、2紙以上の新聞、雑誌などを並行して読んでいかないと危険だ。できれば日本以外の新聞がいい

大局が見えていないというのがある。前提として勉強をしていないので、正常と異常の違いがわからないのだと思う。政治なら55年体制以前、政党政治が始まって以来から考えると自民党の与党が続いたことが、あまり普通ではなかったということになる

列車運行について。仕事をするときにはなるべくラッシュアワーを避けようとしている。人間の乗り物ではない。そのために必要な時間の2時間前まで早めて動いている。早朝の電車はいい。遅れない。空いている。もともと所要時間自体が短い。事故の原因も少ないし、テロなどの対象にもなりにくい。これで命の危険の可能性を逃れた実績が少なくとも一回ある

鉄道の遅延証明書を見せれば、出勤の刻限を過ぎても許されるということが、従来はあったかもしれない。しかし今後は、このような定刻とはならない列車運行を信頼することを前提としてはならないということになる



・新聞等の報道を読むと、福田首相は「ねじれ国会」のために思いどおりの政策展開ができないことを悩んでいたのだそうである。民主党との大連立に期待をかけたが、それが失敗したために意欲を失っていたのだそうだ。まったく理解できない。「いったい日本は民主主義国なのだろうか?」と深刻な疑問にとらわれてしまう。選挙がある以上、政権党とは異なる政治勢力が参議院で多数を占めるのは当然ありうることだ。「大連立で反対者がいなくなれば政策を推進できる」というのも、きわめて奇怪な論理だ。反対する者がいない状態で進められる政策とは、いったいどんなものだろう。新聞は、このような奇怪な論理を報道はするが、そうした考えが異常だとは思っていないようだ。私のようにごく自然で素朴な疑問を抱く者のほうが、今の日本では異常になってしまった

・80年代にイタリアを旅行したとき、「特急列車は200分遅れます」とか「この列車の運行はキャンセルされました」というアナウンスを何度も駅で聞いた。私が驚いたのは、人々がそれを平然と聞き流していたことだ。「なんという国だろう。日本だったら大騒ぎになるところだ」と呆れたことをよく覚えている。今の日本は、それと同じ状態になってしまった。駅に着くと、「人身事故のため電車の運行は休止しています。復旧の見込みは立っていません」というアナウンスが流れている。そして、人々は格別あわてもせず、諦めの表情だ。数十分の遅れなど、もはや日常茶飯事になってしまった。かつての日本では考えられなかった状況だ。日本は、かつてのイタリアのように、国家として体をなさぬ状態になりつつある



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