司馬遼太郎「関ヶ原(中)」新潮文庫

公開日: : 最終更新日:2013/02/17 書評(書籍), 司馬遼太郎



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“司馬遼太郎「関ヶ原(上)」新潮文庫”の続き

先日、今年の大河ドラマの第一回を見てしまった。NHKの大河ドラマは風景、大道具、服装などがすばらしい。しかし、演じる人はどうかと思うことがある。今回の主人公や三成もそう思うし、主人公の実父は、いつもあのようなキャラクターであるような気がする

この作品も、同じ時代の話として面白く読める。景勝も兼続も出てくる。しかし、ここではあくまで治部少輔と左近、そして内府が主人公 特に関ヶ原の直前になると、エピソードがふんだんに盛り込まれていて、そちらのほうが面白くて本筋を見失いがちになる。ここでメモしたものも、そんなものばかり



p70.岡野左内という者がある。もともと蒲生氏郷の家来であった。氏郷の死後しばらく牢人し、上杉家のまねきに応じて会津へやってきた。禄、一万石である。非常な戦さ上手だが、奇癖がある。銭を貯めることであった。それも名人の域に達していた。貯めるだけでなく、平素座敷いっぱいに銭をまき散らし、夏などはその上に素っ裸で昼寝をして銭の感触をこよないものとして楽しんだ。上杉家の家中でも左内をきらう者があったが、左内は意にも介しない。ところがいよいよ開戦というときになって主人景勝に軍資金を永楽銭で一万貫を献上しみなをあっといわせた。戦後、蒲生家に復して、一万石を領した。死ぬときに、他人に貸した金の証文をことごとく火中にし、さらに主家蒲生家に三千両を献上した。奇士といっていい

p280.まさか、この家康の会津征伐という「私闘」が、家康の天下取りという大構想の一環であろうとは夢にも気づかなかった。この鈍感さが、島津家の方向を誤らせ、上方における惟新入道の一隊を、孤軍同様にさせてしまうはめになった。余談ながら、後年、徳川自体になってからだが――この薩摩藩ほど関ヶ原の政治的軍事的研究のさかんだった国はなかった。三百年これを続け、幕末におよんで関ヶ原前夜での情報活動の不足による失敗を裏返して諸藩でもっとも鋭敏な情報活動をするようになり、いちいちその報道を(主な担当者は京に駐在する西郷隆盛だったが)国許に送り、はるか西南のすみに国をもちながら天下の政情を主導的にひきずりまわし、ついに回天の業を遂げてしまった。すべてこのときの苦い経験が教訓になった、といっていい

p353.朝鮮在陣中も、如水は戦術顧問として渡海したが、三成ら若手の軍目付がこまごまと癇高く立ちはたらき、この老人にろくに相談もしなかったため、如水はばかばかしくなって陣中碁ばかりをうっていた。その如水の怠けぶりが、三成によって秀吉に報告された。三成の官僚気質からいえば、如水のような形式上の怠慢がゆるせない罪状になってくるのである。報告に接して秀吉は激怒し、如水と謁見しようとはしなかった。如水は閉口した。それでもこの男は、三成の悪口をいおうとはしなかった。(三成はああした気質のああした役目のおとこだ。ああしたことを太閤に言上するのは当然だろう)と、物事の見えすぎる目をこの男はもっている。ただ如水のおそれるところは秀吉に、(官兵衛、謀叛)という疑念をもたせることであった。この場合、勘気をうけてなまじい蟄居してしまうと、かえって、謀叛の支度をしているのではないかと疑われるおそれがあるとおもい、如水は毎日登城し、秀吉の御座所の隣室などで朋輩と高声で雑談した。芸のこまかい男であった

p405.「伊豆の守は東につけ。わしと幸村は西につこう。いずれが勝っても負けても、真田の家名は絶えまい」兄弟は、あっという顔で老父を見た。老昌幸の乱世での長い経験と知恵が生んだ結論である

p426.一豊「もし三成に野心私欲があるとしますれば、太閤の御生存中、その権力を利用して四方八方に私恩を売ったでありましょう。そういう男でないゆえ、太閤はご信頼なされた」忠氏「ほほう」「彼は人の恨みを受けた。うけたればこそ悪人でないということが言えましょう」

p453.総大将というものは運命的な戦いに出るとき、多く、全軍の士気をあげるような演技をするものだ。足利尊氏も丹波篠村八幡宮でにわかに鎌倉幕府を討つ決意を表明したし、織田信長も桶狭間への出撃の途中、社頭で表裏同じの銭を投げて勝敗をうらない、勝ちの目を出し、全軍の士気を鼓舞したということもある。秀吉もそうであった。光秀を討つため播州姫路を出発するとき、髻を切った。信長の弔い合戦である、という悲壮感を士卒に与えたのである





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