野口悠紀雄『超「超」整理法』講談社

公開日: : 最終更新日:2012/02/10 書評(書籍), 野口悠紀雄



これは読むべき本

「クローバー橋」でGoogle Mapで検索してしまった。昔ニューヨークはマンハッタンのそれなりに大きな教会を覗いたことがある。それなりに有名なところらしく、なんというのだろう多分墓碑銘みたいなのが協会内にあり、米国の作家の名前が多く散見されるようなのだが、教養が足りずになにもわからなかったとき、この世界のわからないことの多さをリアルに感じてゾッとしたことがある。そのときの教会を今は、地図だけでなく、衛星写真や地上からの写真で確認できるとすると、さらにゾッとする

氏は、散歩のときにはメモノートを、寝るときには枕元に紙を置いているそうだ。私は最小のスケジュール帳をいつも持ち歩き、寝床にはSSD搭載のネットブックを置いてある

率直であるがゆえに物言いがかなり過激だ。内容は基本的にはすべて同意。特にPDFは大賛成。

検索力を養うための氏によるドリルを用意してはもらえないかと思う

詰め込んで考え続ける、散歩に出る、というのは、つぎの言葉を思い出した。同じことを言っている。



hiog: 金出武雄「素人のように考え、玄人として実行する」PHP文庫

p112.数学者アダマールが書いた「発見の心理」で紹介された事例。フランスの大数学者ポワンカレが、ある日馬車に乗ろうとステップに足をかけた瞬間、あるひとつの重大な問題の解法を思いついた。それはポワンカレが日頃その問題を持続的に考えていて、それが積み重なり、閾が開き、解法がポンと飛び出たと解釈すべきという。実際、ポワンカレの話を聞いたほかのフランスの数学者が何度も馬車のステップに足をかけたが、良い考えはひらめかなかった



先日のNHKのノーベル賞受賞者の話の中でも、孔子の有名な言葉を引いて同様のことを言っていた人がいた



p26.重要なのは、考え方とやり方を変えることだ。情報力格差が生まれる原因は、能力でも財力でもない。あるいは、大組織にいるかどうかでもない。「知りたい」と望むかどうか、そして「検索力」を磨くかどうか、それだけである。1995年頃までの状況は「先史時代」としか言いようがない。80年代以前の状況は、「石器時代」だ。そして、いまや新しい世界が出現しようとしている

p27.共同作業をする相手に求められる最重要の条件は、もちろん能力だ。そのことは、昔から変わらない。だが、もう一つの重要な条件が付け加わった。それは、象徴的に言えば、「資料をPDFで送ってくれること」だ。雑誌や新聞の切抜きをPDFで送ってくれる友人も、大変ありがたい

p46.ほとんどの仕事は、人名で分類することができる。複数のチームメンバーで進めている仕事の場合、「そのプロジェクト名を必ずメールに入れる」という約束をしておけば、プロジェクト名が正確な検索キーになる。ただし、そのような約束を事前に行っておくことが必要だ

p87.『「超」整理法』で私は、「分類するな。ひたすら並べよ」と言った。この言葉を、いまつぎのように変更したい。「分類するな。ひたすら検索せよ」

p103.「Gメールが有料のサービスであれば、こうした不安なしに安心して使えるのに」と思うことがある。「無料より有料のほうがよい」と考えたのは、これが初めてだ

p109.原稿を書く場合について言うと、最初のメモ段階では、紙がよい。私は、散歩のときには、小型のメモノートまたは硬い紙を持つことにしている。また、ベッドサイドには硬い紙をおいてある(寝ながら書きたいからである)。PCやPDAでは、あっという間に消えてゆくアイディアを捉えることはできない

p122.「メールは事務的で冷たい」などと批判する人が、いまだにいる。手書きは、温かみがあるというわけだ。そうかもしれないが。保存や通信、検索が面倒なことは、言うまでもない。PDFを使えば、メールと手書きの「いいとこどり」ができる。PDFは、手書きのものを遠くに送るための手段なので、誕生日のカードやパーティーの通知などは、手書きで色をつけて書き、PDFにして送ったらどうだろう? 受信者は、紙で見たければ、印刷すればよい

p126.勤務先の異動、連絡先変更、住所変更などの通知がいまだに郵便の書面で来ることを、私はきわめて不可解なことだと思っている。受け取ったほうから言えば、メールなら紛失することも行方不明にないのに、紙の通知状では管理が大変だ。それに、メールにすれば発信コストはゼロになるはずだ

p127.名刺が電子化できないだろうか? 電子名刺で自己紹介されれば、非常にありがたい。顔写真もついていれば、もっとありがたい。覚えられることは本人のためにもなる

p140.「検索の仕方」という説明書に出ているのは、「and検索とorの違い。完全一致検索とは」などといったことだ。これらは、検索の「形式論」である、それらを知ることは重要だが、それだけでは検索機能を活用することはできない

p199.本に索引がないのは、「著者も出版社もさほど力を入れていないことの証拠」である。なぜなら、索引を付ける作業は、著者にとっても出版社にとっても、かなり面倒だからである。それに、ページ数が確定するのは本を作成する最後の段階であり、校了までの時間が切迫しているので、できればこうした面倒な作業はやりたくない。逆に言えば、索引が付いていることは、力を入れて本を作っている証拠である。だから、索引の有無は、「読む価値のある本」を識別するための、重要なノウハウだ

p201.大学のゼミで発表した時、教授に問われて「経済学百科事典で調べました」と白状する学生がいる(いまなら、「ウェブを調べました」という答えだ)。この答えを聞いて黙っている教授はいない。必ず、「百科事典などという安易な手段に依存するな。原点の論文を読んでこい」という反応が返ってくる。学者がこのように反応する理由は、既得権益を侵されるからだ。学生が経済学百科事典で簡単に専門知識をマスターしてしまっては、専門家としての教師の立場を主張できなくなるのだ。これは、自らのギルド的利益を守るための当然の反応だ

p215.私はいまでは「理解せよ」「自分で考え出せ」という注意は誤りだったと、自信を持って言える。いまだにそうしたことを言って、数学嫌いの生徒を大量に生産している教師がいる。「分からなければ、あるいは自分で考え出せなければ、暗記してしまえばよい。気にせずに先に進もう。そうすれば、いずれ分かるだろう。また、解き方を覚えているだけでも、ほとんどの問題は解ける」と、なぜ言ってくれないのだろう

p236.企業の社長にとって重要なことは、企業運営の日常茶飯事にこまごまと口を出すことではなく、また財界活動に精を出すことでもない。「わが社が追求すべき最重要の目的は何か?」と、つねに問い続けることだ。これは、前項で述べた「問題設定」と同じことである。経営幹部は、それを具体的な事業レベルの事項に翻訳する。「このような活動をすれば、社長が考えている目的を達成できるはずだ」という事業計画だ。これが、右で述べた「仮説設定」に対応する作業である

p244.発想の条件は、「考え続けること」だ。考えていない時に発見が天から降ってくることは、ありえない。そして同時に、「深く考え続ければ、発見ができる」。「考え続けていること」こそが、アイディアを導くのである。これこそが、「発想」のメカニズムに関する本質である

p250.重要なのは、「構えないで、開始すること」である。「無責任な態度で始める」のだ。この目的のために、PCは大変有効である。文章の執筆において、これは本質的に重要な道具だ。いくらでも書き直しができるから、気楽に仕事を始められる。このことの重要性は、いくら強調しても、しすぎることがない

p252.仕事がゆきづまったときに公園を散歩すると、うまい考えが出てくる。散歩は、「疲れ休め」という消極的なものではなく、積極的な活動である

p253.「発想の法則」は、つぎのようなものだ。「頭に材料が詰まっていれば、環境が少し変化したところでアイディアが得られる」。もちろん、重要なのは、環境の変化そのものではなく、それに先だって集中することである。頭を一杯にしておかなければ、散歩は単なる息抜きに終わる

p278.日本の大組織で一定以上の地位に昇ったものは、「情報の整理」という問題について考える必要がなくなる。その半面で、その地位まで昇っていない人々は、上司の情報整理のアシスタントとしてこき使われる。言葉は悪いが、彼らは「知的労働における奴隷」である。もう少しましな表現をすれば、「プロレタリア知的労働者」である。彼らをコストなしで使えるなら、ITを積極的に導入する意欲は湧かない。これが日本の大組織の本質である

p281.アマゾンは、所有するコンピュータ資源を安価で時間貸ししているのだが、それを利用した見事な実例が、ニューヨーク・タイムズ(NYT)のブログに紹介されている。これは、NYTの記事後悔のための作業だ。1851年から1980年の期間の1,100万件の記事がスキャンされ、4TB(テラバイト)のTIFF画像データになっていたが、それをPDF化する必要があった。そのためにアマゾンのEC2とS3という並列コンピューティングサービスを用いることにしたところ、一人だけで、24時間未満に使用料金240ドルでこの仕事を成し遂げることができた、という話だ

p286.年功序列の雇用体制の下では、創造的な仕事をするインセンティブは少ない。オリジナリティのあるものを生み出しても、組織内で評価されることは少ないからだ。そして、自由な発想に基づく活動よりは、規則遵守が評価される。大量生産型製造業に適した就業形態であり、創造的な知的労働には向いていない。後者のために適した就業形態は、小規模な自営業や、組織と柔軟な関係で結ばれるフリーランスだ

p286.ITに対する不適合は、年功序列制によってさらに強められる。この仕組みでは、年齢が高い人々が組織の管理者であり、意志決定者になる。ところが、ITは過去20年程度の比較的短い期間に急速に進展した技術なので、年長者はそれに比較優位を持っていない。だから、ITの利用が組織内で必須になればなるほど、年長者には不利な状況になる。したがって、IT化を積極的に進めようとするインセンティブを持たない。もちろん、ITをまったく拒否すれば他企業との競争に遅れを取ってしまうから、取り入れはする。しかし、最低限の採用しかしないだろう

p287.変化が必要である。ただし、変化をチャンスに転化するためには、条件がある。最重要事項は、「皆と同じことはしない」こと(むしろ、必要に応じて逆方向に動くこと)だ

p294.革命によって一掃すべき対象は、つぎのとおりである。無能な経営者、退職金を手にするまでは組織が安泰であってほしい(それ以降はどうなってもよい)と願う人々、KY回避しか考えない若者たち、派閥政治のみに精を出し、ひたすらゴマをすって組織の階段を昇ろうとする人々、権威主義にこり固まった学者、エセ改革者(「改革」と叫ぶだけで実は旧体制を温存した人々)、そしてそのエピゴーネンたち

p298.道路の一方通行方式のことを「貧者の高速道路」ということがあるが、「超」整理法が「貧者の書類整理法」であることは、認めざるをえない事実だった



20090113100600

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