加登豊「管理会計入門」日経文庫

公開日: : 最終更新日:2011/09/07 書評(書籍)

これと同じ方の本だ hiog: 加登豊「インサイト管理会計」中央経済社 最近、管理会計の本をよく読んでいる。結構、経営に関する百科事典みたいな感じがして面白い これまでに読んだ管理会計の本の中でも最も取っつきやすいし、著者の考えのとおり、管理会計以上の、またそれ以外の広範な知識を掬って、全体の理解もしつつ、管理会計を理解させるという目的は十分に達せられている 味わい深い記述が多い。ときどきニヤリとさせられる「悪魔の辞典」的な魅力もある その半面、ある程度致し方ないのだろうが、多くの興味深い概念の提示の中には、説明がつきていないように思われるような、記載もあると思う。例えば、p11の記載として「利害関係者の情報要求を最大公約数的に満足させる会計情報の開示を企業に要請することと、開示する会計情報の記録、集計、報告の実施方法が規定されるようになりました。商法、証券取引法、財務諸表規則、会計原則、税法などが、財務会計を規定するルールです」とある。これらの法律、規則の経緯や趣旨を割愛して、大胆にこう記述する。大づかみとしてはOKだ。ほとんどの人は、文章を一言一句憶えていないだろうし、入門書から厳密な引用することもあるまい 当然、著者にそこまで期待することは酷であり、読者が気になった記載があれば、そちらにフォーカスされた別の本を参照するなどすべきである。本書は新書でありながら、管理会計とその周辺のことがらについて、総覧的に、かつ興味を失わせずに、読者に訴える力を十分に持っている。 ただ、せっかくなら、索引は欲しかったと思う。言い得て妙な語句が、私のメモにも多く残った
p13.組織を有効かつ効率的に運営するには、組織内で必要な会計情報を作成し、それらを活用する必要があります。組織外部には通常オープンにされない会計情報を生み出し、活用することを任務とするのが管理会計なのです p44.準解決:とりあえず当面の問題を解消するが、本質的な問題快活を先送りにすること p53.期間計画の長期短期の区分は単に期間の長さだけで決まるわけではない。重要なのは、現時点で判断して、企業の基本構造が現状を前提としているものを短期計画、構造自体の変革までが計画されているものを長期計画とするという考え方です。短期計画の典型である予算は、現状での人員構成、設備、研究開発拠点などを前提とした計画です。それに対して、多くの企業で中期計画と呼ばれている2、3年を視野に入れた計画や自動車産業で作成されている8年計画(車のフルモデルチェンジが4年ごとに行われるので、2世代をカバーする計画となる)では、技術革新、企業の構造、顧客の嗜好、競争状況などの変化を見込んで作成されます p80.予算スラック:費用に関する「水増し」、収益に関する「過少計上」 p81.予算ゲームの9つのパターン p162.日本語という言葉が非常にハイコンテクスト(一つの言葉や表現が、状況によって多様な意味を持ちうること)であることもあって、経営全般にわたるマニュアル化は進んでいないといわれています。品質管理活動に用いられる技法やツールは確かに体系化されマニュアル化されましたが、品質向上のための諸活動に関する業務フロー、知識や知恵などは組織知として蓄積されることはそれほど多くなく、重要で価値がある知識や知恵は、組織にではなく経験を積んだ個人に帰属する傾向があります。マルコム・ボルドリッジ国家品質賞では、組織が持続的に品質管理活動に取り組み、効果を持続させるために、徹底的なマニュアル化が図られています。担当者によって多様な解釈が生まれる可能性を排除し、一貫した品質管理活動を継続するためには、マニュアル化は大きな貢献があるといえるでしょう p168.海外企業、とりわけ、欧州のほとんどの企業では、取引先選定の第一次スクリーニングのために、取引先にISO9000シリーズの取得を義務づけています。品質にすぐれた日本企業といえども、ISO9000シリーズの認証を持たなければ、ビジネス機会を失うようになってきているのです。また、海外の公共工事への入札条件にISO9000シリーズを取得していることを条件にすることも多くなり始めています。日本企業がISO9000シリーズの取得を急ぐのは、このような状況の変化が与える影響も大きいのです p202.オープンブック・マネジメントとは、会計情報を全社員に公開し情報の共有を図ることで、社内での誤解や意味のないコンフリクトを解消し、全従業員が高いコスト意識と利益意識を持つことを通じて企業の収益性を高めようとするマネジメントのことです p204.実際に日本企業では、機密情報の管理体制は驚くほど脆弱です。「社外秘」とするルールすら明確に存在しない企業がほとんどです。誰かが「社外秘」のスタンプを押せば、その書類が「社外秘」扱いになることさえあります。このような状況ですから、「社外秘」の書類を平気で社外にまで持ち歩く人が後を絶たないわけです。オープンブックによる情報の共有化のメリットは、たいていの場合、逸漏による機会損失を大幅に上回ると考えてよいでしょう

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