田中靖浩「儲けるための会計-強い経営をつくる管理会計入門」日本経済新聞社

公開日: : 最終更新日:2012/09/24 書評(書籍)



20090223190000





若干、古い本だが、管理会計の入門書として評判が良いので読んでみた。内容に目新しいものはないが、実例や解説例が秀逸。話し言葉で書かれているが、内容がオーソドクスで説得力があるので、あまり嫌悪感は感じない

ただ、実例が、流行したナルミヤ・インターナショナルやマクドナルドのハンバーガー安売り、BSEの吉野家など、当時のニュース性を勘案しているところが、少しイタい。というか、鮮度が落ちている、というか、今頃これを読んでいる自分がイタい

この本を知った契機は「管理会計」というフィルターで抽出されたというだけ。今後、著者の他の本も読んでみたいと思う。つくづく良い時代だと感じるのは、このための操作がネットのAmazonなんかで簡単に行えるということ。本著にも書いてあったが、システムは「決まったことを高速で反復することが得意」ということを図らずも実感



p14.「社内で問題を共有する」――実はこれこそ管理会計の出発点です。会社の内で利用する管理会計は、問題を共有して解決するために行われるのです

p24.管理会計は、自分による、自分のための決算書をつくるという会計です。その実施は義務ではなく、あくまで会社の自由な判断に任されています

p25.決算書を読む上で注意しなければならないポイントがあります。わが国の場合、法人税法という法律がとても強い影響を与えているという事実です。決算書は法人税法の「押しつけ」のもとで作成されているということです。減価償却計算において用いられる「耐用年数」は本来会社が自分で決定すべき性質のものです。しかしながら実務では多くの場合そうなっていません。会社は法人税法上の「法定耐用年数」に従って償却を行います。実際には4年しか使えないであろう機械を、法定耐用年数に従って6年で償却するのです

p28.どいんな情報が役立つのか、どんな情報を欲しいのか――これは他の誰でもない、経営者自身が決めなければならない問題です。経営者および管理職の方がもっとわがままになって「オレはこんなデータが欲しいんだ」と主張していいんです。いや、主張しなければいけないんです

p50.JALとジャストシステムの両社は共に、固定コストが圧倒的に大きい会社なんです。だからこの両社は経営上、「売上が少しでも変動してしまうと利益が大きく変動する」という法則性を持っており、だから業績の予想修正が多くなるというわけです

p83.ほとんどの場合、最初に安い価格で仕事を始めたものを、あとになって値上げすることは不可能です。最初の価格を安くすることは自分のクビを自分で絞める行為です。「今回だけは」は本人の交渉ベタを隠す言い訳に過ぎません。力のない営業マンほどこの言葉を何度も口にするものです

p93.もともと固定費というのは販売数量に関係なく生じるコストなので、販売数量が増えたからといってその額は増えません。よって1個当たり固定費(固定費÷販売数量)は売れれば売れるほど少なくなるわけです

p100.吉野家もJALやジャストシステムと同じく、固定費中心型の会社だということです。だから値下げ成功の条件「①変動費の比率が低いこと」をクリアしており、さらに「②値下げによって販売数量が大幅に増加すること」をクリアしたわけですから、これは業績がアップするはずです。だから業績の上方修正となったわけです

p106.ちょっと昔の話になりますが、オリンピックなど国家レベルの威信を賭けた試合の途中、急に選手たちが敵味方なくひざまずいて、誰かが落としたコンタクトレンズを探すシーンがありました。コンタクトレンズというのはそれほど高価な存在だったのです。国家の威信に匹敵するほどに。しかし最近、そんなシーンも見られなくなりました

p118.ある機械メーカーでは、損益分岐点売上高や損益分岐点比率を「台数」で表現しています。その会社のマネージャーさんたちは、「うちの営業所では、今年500台売らないと損益分岐点に達しないんですよ」といった会社を日常的にしています。会計的な「金額」や「率」でなく、社内の人間に最もわかりやすい単位である「製品台数」で表現しているわけです。これはカネのかからない、素晴らしいアイデアだと思います。また、あるゴルフ場では、損益分岐点を「日付」で表現しています。1年を365日あるとして、1月1日から始まって何月何日時点で損益分岐点を超えたか、という日付を明らかにするのです。こうしたひと工夫が、難しい数字を社内に浸透させるコツのようです

p132.(1-α)S『売上高』ーF『固定費』=P『利益』。この式は、会社が儲けを増やす手段として、・限界利益率(1-α)向上、・売上拡大、・固定費削減、という3つの方法があることを示しています

p134.アメリカでは限界利益のことを「貢献利益(contribution margin)」と呼ぶことがあります。従業員の生活(人件費)と会社の未来(営業利益)に貢献する利益――貢献利益というのはとても意味深い言葉です

p140.結局、増産の意思決定では限界利益率の高さがポイントだったということです。限界利益率の高い製品が増産にふさわしい製品なのです

p148.儲かっているときの投資というのは、比較的簡単に決まるものです。決定する経営者も従業員も、そして融資する銀行マンまでもが、みんな笑顔のうちに拡大が進みます。しかし儲からなかったので縮小するとなると、話は一転して難しいものとなります。一度増えてしまった固定費はなかなか下がってくれません

p168.変動費の削減であれ、固定費の削減であれ、コスト削減というのは短期的な儲けを向上させますが、将来にわたって長期的に儲けを増やすという目標にとってはちょっと不安な面があります

p172.バランス・スコアカードは会計を否定しているわけではありません。会計上の「財務の視点」だけでは、経営の方向がおかしな方向で行ってしまう可能性があるので、それを回避するために他の視点を加えよう、という発想なのです。その意味でBSCは財務指標と非財務指標をミックスした経営ツールです

p182.設備投資の事前計画というのは、意外なほどつくられているケースが少ないのが現状。「経済性評価」を実施していない、つまり設備投資について儲かるかどうか数字の検討をしていない。何の計画もなく設備投資を行っているという意味では「無計画法」、社長の一存で決まっているケースも多いでしょうから「ツルの一声法」とでも呼んでおけばいいでしょうか? これまで日本の景気がいかに良かったか、という証明なのかもしれません。それほど製品のライフサイクルも短くなく、価格の下落もなかった時代。そんな古き良き時代には、「とりあえず」投資をしておけば結果がついてきたのかもしれません。その名残なのか、設備投資の経済性評価はそれほど普及していない

p203.最近の日本企業を見るにつけ、私はだんだん心配になってきました。流行に振り回されてやみくもにコンプライアンス(法令遵守)に力を入れ、情報公開やIRに取り組んでいるとアピールするだけで満足している会社の多いこと多いこと……。それらが大切なのは言うまでもありませんが、その前にやらなきゃいけないことがあるんじゃないのか? ずっとそう思ってました。――まず最初に取り組むべきこと、それは会社の儲ける力をもっともっと強くすることです。儲かる会社をつくる、それが管理会計=マネジメント・アカウンティングの目的です。本書のタイトルを『儲けるための会計』としたのもそんな思いからです





google adsense

関連記事

no image

金谷武洋「日本語に主語はいらない」講談社選書メチエ

20111113231930 言語学というのだろうか。日本語の構造についてのタイトルどおりの内容の

記事を読む

no image

母里啓子監修「今年はどうする? インフルエンザ」ジャパンマシニスト

ああ、いったいここ数年の自分の中の熱狂はなんだったのか。ご説ご尤も。このまま気が変わらなければ、来年

記事を読む

no image

門倉貴史「こっそり儲ける経済学」三笠書房

20080121060000 前に読んだ別の著作"門倉貴史「出世はヨイショが9割」朝日新書

記事を読む

no image

藤原和博「お金じゃ買えない。」ちくま文庫

こういう本や、こういう本を読んだので、せっかくなので、あわせて読むことを勧められていたものを読んでみ

記事を読む

no image

松島庸「追われ者」東洋経済新報社

昔の本だが、縁あって読むことになった いまとなっては旧聞に属するクレイフィッシュの事件。一つの企業

記事を読む

no image

今北純一「とどめのひと言」PHP

久々に興奮して読み終えた本。こういうのはじっくりと読んでしまうのでなかなか早く読めないと同時に、本を

記事を読む

no image

鈴木亮「アルバイトだけでもまわるチームをつくろう」クロスメディア・パブリッシング

20121223150237 アルバイトを大量に動かす仕事に参考になる一冊。読みやすいのに

記事を読む

no image

佐藤優「交渉術」文春文庫

20120227001208 交渉術というのも、私が好むジャンルのひとつ。だた、これは交渉術にかこ

記事を読む

no image

宮脇修一「造形集団海洋堂の発想」光文社新書

20130319225803 なにかの書評で見て面白そうなので読んだ。実は10年以上前の古

記事を読む

no image

内藤誼人「勝つための「心理戦略」」KAPPABOOKS

少数のチームの利点 ・精鋭になる ・欠勤率、転職率の減少 ・批判に対する個人の痛みが少ない 一体感を

記事を読む

google adsense

google adsense

MediaPad M3 LTE プレミアムモデル購入して2か月

20170409130135 もう2か月が経ってしまったけど、記

Windows10アップグレード導入

20160307001116 2台のノートPCにつき、無料のWi

Nexus 6Pが届いた

20151105221617 無事に届いた。 海外荷物受付

Nexus 6Pが発送された

20151103103105 「発送しました」って内容のメールが

Nexus 6Pを発注した

20151031100625 それまでもネット経由でいろいろ調べ

→もっと見る

  • 名前:Max 年齢:人生の2合目くらい 誕生日:夏の暑い日 一言:他言無用ということでお願いします
  • あわせて読みたい
  • にほんブログ村 本ブログへ
PAGE TOP ↑