ドナルド・R・キーオ「ビジネスで失敗する人の10の法則」日本経済新聞出版社

公開日: : 最終更新日:2012/09/17 書評(書籍)



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コンセプトがなかなか難しいね。成功する方法はないが失敗する方法はある。成功をまねずして、失敗もまねないときに、成功できるのだろうかというのは単なる言葉遊びなんだろう。このタイトルを見たときに読むべきかどうか暫く迷った

内容は非常にコンパクトでよい。アメリカの著者の本って、内容量に差が激しすぎる。こちららはシンプルな典型例。でも事例も豊富に引かれている。特にニュー・コークの件がおもしろい。諺はすこしうざいかな



p16.事業で勝利する方法について話すように求められたとき、私には出来ないと答えるしかなかった。話せるのは、どういう方法をとれば負けるかということだけであり、わたしが示す方法を採用すれば、かなりの確率で負けることなら保証できるといった

p22.私は10年以上前にコカ・コーラ社の職を辞した後、投資銀行のアレン&カンパニー社の会長として、経営の世界に関与してきた。こうした経歴を背景に、事業を失敗に導く10の法則を示し、同時に、これらなお10の法則のうちひとつかふたつに注意深く従っていれば、事業に失敗するか、少なくとも破綻への坂道を勢いよく下ることになる保証する

p29.アメリカには、独特の遺伝子プールがある。アメリカ人のほとんどは、たいていの人が故郷に止まっていたときに、船に乗った人の子孫なのだ。アメリカにたどり着けなかった人も多い。そして、大西洋か太平洋を渡る旅(あるいは山や平原や砂漠を越える旅)で生き残った人も、信じがたいほどの重労働がいつまでも続く生活に耐えてきた。農場で、鉄道の建設現場で、いまでは想像も出来ないほど危険で汚い鉱山や工場で。1900年には、アメリカの家族は医療費の2倍近くを葬式に費やしている。そうしたなかで、何とか勝利を収めてきたのが、アメリカ人の祖先なのである。こうした祖先が克服してきた困難と比較すれば、オフィスでの1日は、どんなに厳しい1日でも、公園を散歩するようなものだ

p31.多分、わたしの質問にいらだった人が少なくなかったはずだ。かなり頻繁に、経営幹部にこう質問していったからだ。「いつも同じことを聞いて申し訳ないが、何もかも好調なのはなぜなのか。いま心配しておけば、今後はその点を心配しなくてもよくなる部分はもっとないのか」ロバート・ウッドラフはコカ・コーラ社の長老であり、現在の繁栄をもたらした第2の創業者だが、オスカー・ワイルドの「世界は満足できない人間のものだ」という言葉が好きで、何度も引用していた

p33.この英断にわれわれはみな感謝すべきだ。1930年代の広告で、いまわれわれがみな知っていて、大好きなサンタクロースが登場したのだから。頬が赤く、太ったサンタクロースは、画家のハッドン・サンドブロムが制作し、毎年、クリスマスの時期に使われた広告がもとになっている。ウッドラフが何百万ドルもの資金を広告に投じてリスクをとったお陰で、はるかに親切で、やさしく、愛されるサンタクロースが生まれた。そして、コカ・コーラの売上は急増している

p45.ペプシの売上は増加するようになった。だが、コカ・コーラ社は動こうとしなかった。当時の社内では、ペプシコーラという名前すら使われていない。「模倣者」と呼ばれていた

p69.恐怖の環境をつくるのは、努力らしい努力を必要としないので、経営者にとって魅力的に違いないと思う。何を理解する必要もなく、この環境を作り出せる。怒鳴りつけ、癇癪玉を破裂させる。間違いをおかした部下を衆人環視のなかで叱りつける。恥をかかせる。乱暴な態度をとる。2歳児のように振る舞う。悲しいことだが、こういうことをする経営幹部はいくらでもいる。そのうえ、部下に無茶な要求をしたり、手荒く扱うのを誇りにすらしている。わたしの見方では、こういう態度をとるのは正当だといえるほど「創造的」な経営幹部はひとりもいない

p74.世界中の人がみな、自分と同じように生活していると考える。これも、超然とした態度をとるコツの一つだ。ジョンソン政権の副大統領だったヒューバート・ハンフリーがかつて、こう提案した。連邦議会の議員や、政府高官はみな、週に一度は公共交通機関を利用して、庶民の生活に触れるべきだと。大企業経営者もそうすべきだ。「会社ではCEOでも、自宅ではゴミも出す」という古い言葉を思い出すのも一助になるだろう

p82.この単純な真実をしつこいほど強調しておきたい。自分の目でみることがいかに役立つかを。そして、何段階もの官僚組織のフィルターを通すのではなく、自社の従業員の意見を直接に聞くようにすれば、ほんとうに役に立つのである

p98.ピーター・ドラッカーはビジネス倫理などあり得ないと語っている。あるのは、限定のつかない倫理だけだと。自分の生活のなかで、ビジネスと他の部分を分けることはできない。分野ごとに違った倫理や価値観をもっているのであれば、経営者とはいえない

p126.方針を堅持するだけではいけないと悟ったのは、85歳のおばあさんと話したときだ。ロサンゼルスの老人施設から涙ながらに電話をかけてきた。わたしはそのときたまたま、コール・センターを訪問していて、電話を受けた。「わたしのコークをとってしまうなんて」と泣きながら訴えている。「この前、コークを飲んだのはいつですか」「そんなこと、覚えていません。たぶん、20年か25年前です」「だったら、なんでそんなに悲しんでおられるのですか」「お若い方、私が若かったときの記念の品をもてあそんでいるのです。それだけは止めていただきたい。コークがわたしにとってどんな意味を持っているか、お分かりですか」この話を聞いて、はっきり分かった。問題は味覚ではないし、マーケティングですらない。あれだけの専門家、あれだけのデータはすべて、誤解のもとだったのだ。これは人々の心の奥底の問題だ。ブランドは経営者や専門家の考えで決められるようなものではない。ブランドは、消費者ひとりひとりの心のなかにあるもので決まっている。コカ・コーラはいくつもの文化の無数の人に飲まれているので、コカ・コーラがどういうものなのかは、個々人で違っている。これで、ようやく分かった。どれだけ巨額の資金をかけても、アメリカでニュー・コークを成功させることはできない

p133.わたしはコカ・コーラ社の社長として、じつにたくさんのマーケティングの天才や財務の天才の話を聞いてきたが、結局のところ、経済学者のルードビッヒ・フォン・ミーゼズの言葉に同意するようになった。「統計の数値は……繰り返すことがない過去の事例で何が起こったのかを教えてくれる」

p143.どの組織にも、業務のネックになっている部門があって、これも官僚制度の特徴の一つだ。組織の最高幹部すら、突き破ることはできない。この部分の番人を侮辱するようなことをすれば、業務の遂行にもっともっと時間をかけるようになるだけだ

p150.ピーター・ドラッカーは60年以上にわたって教育とコンサルティングを行い、30以上の著作がある。一貫したテーマのひとつとして、優れた企業は従業員を細かく管理しようとはしないし、生活の隅々まで命令しようとはしないと指摘してきた。優れた企業は従業員を尊重し、会社に寄与するよう励まし、創造性を発揮するよう励ます。これに対してだめな企業は官僚制の何重もの管理階層で、従業員の創意を窒息させる

p200.わたしが知っているかぎり、成功を収めている人はみな、自分の仕事に愛情を持っていて、きわめて熱心に取り組んでいる。経営者でも、政治家でも、芸術家でも、教師でも、医師でも、偉大な業績をあげている人はみな、自分の仕事に心から熱意を燃やしている。質問してみれば、他の仕事をすることなど想像すらできないと答えるだろう。少し度が過ぎるのではないかと思えるほど、夢中になっているのである





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