安保徹「40歳からの免疫力がつく生き方」静山社文庫

公開日: : 最終更新日:2011/10/09 書評(書籍)



白血球の内訳なんて、いままで興味をもっていなかった。血液検査の数値を読むのがおもしろくなった

嫌気的解糖系とミトコンドリア系の2つの軸で、諸観測をうまく説明できるのが楽しい。魚の赤身と白身の話から、昔の子どもの青っ洟から、雌雄の生殖から、40歳を境とした幼老の違いから、がんの生成場所と発生から治癒まで

受精から誕生までの成長の過程が、進化の歴史の高速の繰り返しというのは理解していたが、受精の瞬間すらそうだったとは大きな気づき

放射線が体によい、という主張のひとつを見ることになったのは、時節柄、奇遇。同じような健康のためのティップスとして、よく笑うこと、高熱は冷まさない、痛み止めなどクスリを飲まない。これまでに感じていた体についての経験的な仮説の多くをサポートしてくれるような説明にあふれていることが、読後の満足感を高めている

純粋に医学的にどうかというところは難しいが、メモの最初と最後の引用を振り返っても、全体として奥の深い本だとは思う



p27.「病気とはその人の行いが原因で起こるものです」、あるいは「進化する過程で手に入れた機能を使いすぎるとき、または使わなさすぎるときに起こるものです」

p33.顆粒球とリンパ球は健康な状態で60対35の比率で存在していると述べましたが、平均値であって、つねに変動しています

p39.個体発生は系統発生を繰り返す。38億年の進化過程が、単細胞の受精卵として母胎に宿り誕生するまでに繰り返されている。育ていく課程の胎児を観察すると、魚とよく似た形態の時期があり、爬虫類めいた形態の時期が次にくる。そして尾が退縮し手足が伸びて、ついには人間らしい姿になる

p41.38億年の進化の歴史のプロセスで、終始一貫して姿を変えることなく存在し続けてきた唯一のものがマクロファージ

p44.マクロファージは、働きを終えた赤血球を食べて処理したり、骨の新陳代謝のために古くなった骨を食べる破骨細胞としても知られていますが、役に立たなくなった自己の細胞を食べ尽くして、その一生を終えさせる働きがあるのです。比較免疫の研究者である古田恵美子氏によると、重大な緊急事態になると、マクロファージは自らがつくりだした生体を食べつくして、最終的にマクロファージだけが生き残ることを目指して進化を逆行し、基本にも戻ろうとするということです

p54.進化したT細胞は、ご存知のように肋骨の裏側にある胸腺からつくられます。この胸腺は魚時代にはじつは鰓でした。魚類にも原始的な胸腺がありますが完成されたものではありません。水中で鰓呼吸をしている魚にとって、鰓は外部と内部の接点で、異物が侵入する重要ポイントでしたから、白血球をここに集中させて監視していました

p64.なぜこのように、エネルギー産出系がふたつに分かれているかというと、私たちの先祖細胞がふたつの生命体の合体によってつくられたからなのです。いまから、約20億年前に私たちの先祖細胞は嫌気的解糖系生命体でしたが、そこに酸素の大好きなミトコンドリア生命体が合体してできたからなのです。こうして、真核細胞の進化がはじまり、私たち「ヒト」になったわけです

p67.白筋と赤筋の関係は、魚屋さんに行くと一目瞭然です。そこには白身の魚と赤身の魚がいます。白身のタイやヒラメは、いつも泳ぎまわっている魚ではありません。ふだんはじっとしていて、餌をとる瞬間だけピピピッと動きます。瞬発力の世界だということがわかるでしょう。エネルギー産出系でいうと、こちらが解糖系ということになります。ミトコンドリア系は、赤身の魚です。マグロ、カツオ、サンマのような赤身の魚は、大海を回遊して休むことがありません。まさに持続力の世界。チトクロームCをもっていますから、赤身の魚の肉は赤く見えるのです。私たちのからだの骨格筋は、白筋と赤筋がほどよく混じりあっています

p69.ストレスがかかって怒りを爆発させるときにも、使われるエネルギーは解糖系のものです。怒ると疲れるのは、疲労物質の乳酸がたまるからだったのです

p74.カタル性はサラサラの漿液性の分泌物を出す炎症で、そのとき、つるつるぽたぽたと鼻水がたれてきます。これはまさにリンパ球が闘いを開始したことを示しています

p77.発熱は恐ろしいものではありません。治るためには必ず通過しなくてはならないワンステップです。熱が出たら「ああ、これでリンパ球が働きやすくなる。まもなく治るぞ」と思うべき

p78.激しい運動をした翌日、翌々日あたりに筋肉痛が起こります。炎症部分に血流がどっと押し寄せているのです。痛みがくるのは、体を使っていたそのときではなく、休んでいるときだということにお気づきでしょう。炎症が起こっているときには、その部分に血流障害が起こっています。休養してほっとしているときに、少しずつ血流が戻って治癒にかかるのです

p90.誰でも毎日、1万個ほどのがん細胞が生まれています。それを白血球がせっせと殺しているから、発病することがないのです

p92.がん患者への聞きとりから、交感神経刺激の持続が第一の原因として浮かびあがりました。第二の原因として、交感神経刺激によって活性化した顆粒球の存在が指摘されます。顆粒球の放出する活性酸素が上皮細胞を傷つけ、細胞の置き換えを促進するのです。がんが起こる母胎となる場所を見ると、どこも再生が頻繁に行われている場所です

p98.驚いたことに、私たちの分裂する細胞の主なるエネルギーは解糖系でつくられています。一方、分裂しない、あるいは分裂の少ない細胞のエネルギーは主にミトコンドリア系でつくられています。解糖系中心の細胞は瞬発力か分裂の世界をつくり、その代表選手が骨格筋では白筋、そして分裂細胞である皮膚、粘膜、骨髄、分泌腺、精子などがあります。とりわけ精子はすごい勢いで分裂します。ミトコンドリア系中心の細胞は持久力の世界で、骨格筋でいえば赤筋、そして一生のあいだ絶え間なく働きつづける心臓の心筋、そして意外なことに脳神経がそうなのです。大脳の中にあるニューロンもミトコンドリアが多いことで知られています

p99.解糖系の冷たい世界とミトコンドリア系の温かい世界。この冷たい世界と温かい世界に思いをいたしていると、いろいろな日常の謎が解けてきます。38億年の背景をもつ生命体である私たちは、このふたつの世界をそのときどきに応じて使い分けているのです。解糖系の働きを盛んにするには、低体温がよいのです。激しい分裂を繰り返しているのは精子です。解糖系を盛んにするためには低体温がよいために、体温より3度から5度低めのところで分裂がはじまります

p101.女性が生きる上では柔らかく薄い皮膚のもち肌の人が多いように、そうなるのに好都合な温かい沖縄に女性の長寿者が多いのです。一方、解糖系が優位になるほうが、男の特質は助長されます。解糖系を優位にする場所は寒くて酸素の少ないところ、つまり空気の薄い高地が好ましいのです。これが戦前戦後をつうじて長野県に男性の長寿者が多い理由です。低温、低酸素が分裂を促すことが分かると、高地トレーニングの意味も理解できるでしょう。分裂する細胞は、皮膚だけではありません。骨髄もそうだということを思い出してください

p101.いまから20億年前までは、私たちの祖先に当たる生命体には解糖系しかありませんでした。このころまでは地球上にはまだ酸素は存在していません。瞬発力と分裂の解糖系だけがすべてだったのです。私たちの先祖の姿を維持している生物は今もなお、地球上に存在しています。バクテリアがそれですが、ほとんどは嫌気性なのです。これらの生物は、私たちの祖先と同様に解糖系だけで生きていて、酸素があると生きづらいのです

p105.あるとき、私たちの祖先に当たる解糖系だけの生命体に、酸素の好きな生命体が寄生したのです。酸素はしだいに増えるばかりです。この新時代の激変をいかに乗り切るか。一方に酸素嫌いの私たちの祖先がいて、もう一方に酸素好きのミトコンドリア生命体がいます。新しく進化を進めた生命体が古くからある生命体に寄生し、好都合な共生関係が見えてきたものの、いきなりうまくはいきません。8億年くらいの間は、ギクシャクして安定しませんでした。安定してきたのは、ようやく12億年くらい前で、原核細胞からしっかりした真核細胞が生まれたのです。これでミトコンドリアによって安定したエネルギーを得て、また核によって、その生命体固有の大事な情報を守ることができるようになりました。エネルギーの産生は二本立てになり、そのはるかな真核生命体の末裔が私たちなのです

p107.胎児は私たち大人と同じ酸素量で生きているわけではありません。母親の血液は、じかに胎児の体の中に流れ込んでいるわけではないのです。胎盤を介した動脈血同士の間接的な酸素の受け渡しをしているのですが、そのときに酸素分圧を5分の1まで下げています。そうすることでミトコンドリアの働きや分裂を抑え解糖系の世界をつくり、盛んな分裂を促しているわけです。実際胎児は、酸素を使ってエネルギーをつくるミトコンドリアがたいへんに少ないのです。分裂のたびにミトコンドリアは減少します

p114.誕生後1週間目くらいから起きる新生児黄疸のメカニズムも分かりました。顆粒球は末梢血だけではなく、肝臓でも増えていたのです。胎児期の間は血液は肝臓でつくっています。この造血機能は誕生と同時に骨髄に移され、肝臓でつくられた血液の胎児型ヘモグロビンをもった赤血球が大量に破壊されて、黄疸を引き起こしていたのです

p116.悩み苦しんで、心的エネルギーが落ちている人に対して、闘えというのは酷だろうと思います。しかし、一歩引いてわずかにでも余裕が生じたとき、思い出してほしいのです。拒否するとか、逃げ出すとか、捨てるとか、断念するという一見マイナスのイメージを持つ行為も、自発的に行うならば立派なことなのです

p118.日本が戦後の復興に国民をあげて血眼になっている頃、それは私の少年時代でもありましたが、子どもたちは青洟をたらしていました。みんな貧しく、飢えていました。国民全体が交感神経を緊張させている状態です。青洟というものは、交感神経の緊張から顆粒球が増多して、体内の細菌、さらには組織を攻撃した残骸なのです。子どもはもともとリンパ球体質なのに、極度の貧しさというストレスはそれを凌駕して顆粒球体質にしてしまうのです

p119.「でも、子どもたちはみんな目が輝いていた。私たちの国の子どもたちには、あのキラキラした輝きはない」。この目の輝きは交感神経体質に特有のもので、キラキラというよりギラギラした鋭い光です

p123.復興期の日本社会は、働き中毒と呼ばれるほどの労働をこなしていましたが、会社は終身雇用の年功序列というストレスを回避するシステムをもっていました。仕事が終われば、同僚と縄のれんをくぐったものです。ビールの炭酸は副交感神経を優位に導き、適度なアルコールには交感神経の緊張を緩める働きがあります。そうしながら上司や仕事の愚痴を吐き出し、ストレスをおろして家路についたのでした

p137.オギャーと生まれると、そのときから肺呼吸によって自前の酸素を取り入れることができるようになります。それまでの5倍の酸素が体内に入ってきます。ここで一気にミトコンドリアが分裂して増えるのです。それによってあちこちの細胞はゆっくりと分裂するように変化します。ミトコンドリアは、心筋や脳でまず増え始めます。分裂の勢いがまだ残っている1歳から2歳が、新生児期とその後の成長期です。解糖系がすべてというような胎児期の猛烈な分裂の時期は過ぎ去ったのです。だいたい3歳くらい、少し幅を広く取ると4歳までにはミトコンドリア細胞といわれる脳や心筋の分裂は止まります。そのままの細胞でいく体制が、ここで整うのです。「三つ子の魂百までも」というのは、このことを指しています

p138.40歳からはミトコンドリア系優位になって、ゆっくりと瞬発力はしぼんでいきます。人間の態度でいえば、かっとする世界から落ち着きの世界に入るのです。この変遷の流れを無視して、あいも変わらずかっとする解糖系の生き方をつづけているとどうなるでしょうか

p139.50代、60代になってもうミトコンドリア系優位になっているはずなのに、まだ残業をしたり怒ったりするような、解糖系依存の高い人はからだを壊すのです。40代からは、猛烈に頑張ったり山ほどもりもり食べるのは危険です。40すぎて健康を維持するためには、ミトコンドリア系の世界に入っていくことです

p140.エネルギー産出系の変遷に適応できれば仙人、失敗すれば病人

p143.白血球は、単細胞時代からの自分自身です。そして生体の活動状態を反映して揺れ動いているものなのです。白血球数は、その人が日常使用しているエネルギーと正比例するのです。活発に動き回っている生活をしていると白血球数は上昇します。反対に動きを止めた暮らしをしていると白血球数は減少します。1日12時間も働くような生活をしている人は、細菌感染に関係なく、白血球数は1万前後まで増加します。出不精で運動不足の男性や、箸より重いものをもたないようなやせた小柄な女性では、白血球数が3000以下になることもあります

p146.私にもっともなじみがあり、また妥当だと思っている血圧は年齢プラス90です。人間は加齢とともに血圧が高くなります。そういう存在です。年とともに老廃物の酸化物質が増えていき、交感神経が緊張した状態が優位になります。それは、生体が顆粒球型に移行していくことを意味しています。それが極限までいったときが死です。つまり年を取れば、血圧が高くなり、脈が速くなるのは自然なことなのです

p172.男というものは、あせって、頑張って一生を過ごすものです。しかし一部の人間が、節制して早い時期からミトコンドリア系の世界に入り、仙人となります。最長寿者が男であることがまれに見られるのは、そういうわけだったのです。女はどうかというと、女たちはなんの努力もなしに、はじめから仙人なのです。仙人は霞を食べて生きているという伝説は、なかなか奥の深い話だと思います。ミトコンドリア系はとてもエネルギー効率がよいから、解糖系の子ども時代のようにのべつまくなしに食べている必要はありません。むしろ食べてはいけないのです。落ち着いた持続力の世界を生きている老人は、僅かの食べ物で十分なのです。こういう老人は仙人に近いといえるでしょう。もうひとつ興味深いことがあります。仙人が霞で生きているとしたら、エネルギーを何らかの形で自力で作っているのです。この謎は今の栄養学で説くことはできません。栄養学では、食べたものが分解されたり燃焼されたりしてできるエネルギーを化学式で計算しているのです。炭水化物1グラムを燃焼させたり4キロカロリー、脂肪を1グラム燃焼させたら9キロカロリーというように、化学反応の世界です。そしてそれがすべてなのです。これでは仙人の謎は解けません。この中には放射能のエネルギーが入っていないからです。ミトコンドリアの電子伝達系は、放射線や紫外線(いずれも高エネルギーの電磁波)で動くのです。このことに気づいていないから、ギャップが出てしまうわけです。これと関連するびっくりするような提案をご紹介しましょう。アメリカの医学者、T・D・ラッキー博士(1980年にCDC Pressから出版した”Hormesis with ionizing radiation”の中で、微量放射線が、むしろからだの多くの代謝を活性化する現象を明らかにしている。生命体が地球に生じたときの環境も、自然放射線の豊富な時期に起こっている)は、放射性廃棄物を公園の銅像の中に入れなさいといっています。その銅像を子どもたちや老人にさわらせれば、みんな健康になると主張しています。低線量の放射線には、私たちのエネルギーを活性化させる生体作用があります。これを放射線ホルミシスといっています

p183.リンパ球の絶対数に着目すると、1マイクロリットル中に1800個のリンパ球があれば、自然退縮がはじまります。やせている人なら1800個から退縮がはじまります。何がなんでもこの数までリンパ球を増やす。これ以外にがんが最終的に消える方法はありません。これが実現できれば、がんは消えてゆくのです。怖がることはまったくないのです。私の研究の同志・福田稔医師は、交感神経緊張状態にあるがん患者を、刺絡によって副交感神経を優位にもっていく療法をつづけてきました。リンパ球を増やすこの療法で、数多くの見放された病人を快復に導いてきました。こうした経験を踏まえて、私たちは「がんを治す4カ条」を提唱してきたのです。一、生活パターンを見直す。二、がんへの恐怖から逃れる。三、免疫を抑制するような治療を受けない。受けている場合はやめる。四、積極的に副交感神経を刺激する。これはリンパ球を30%以上にもっていくための行動指針を、端的に整理したものです

p193.人間だとマックスで100-120年で死にます。活性酸素やフリーラジカルを与えられつづけると、しだいに酸化して錆びつき、骨と皮になっていきます。皮膚は褐色に、さらに黒っぽく変色して死ぬのです

p194.精子は解糖系生命体そのもの、卵子はミトコンドリア系生命体そのものです。解糖系生命体である精子は、瞬発力で暗闇を通ってミトコンドリア系生命体の卵子をめざし、20億年前のシーンを再現するのです。精子は分裂と瞬発力の解糖系生命体ですから、どんどん増えていくことができます。では卵子はどうでしょう。こんなにミトコンドリアがあっては、増えることができないのではないか。じつは卵子は増えていないのです。卵母細胞は、生まれたときにすでに生涯使うだけの卵子300個を準備しているのです。あとは毎月出す卵子を、ひとつずつひたすら温めて成熟させればよいわけです

p196.発がんとは、低体温、低酸素のもとで何とかして生きるための適応だったのです。取り出したがん細胞は、試験管内では不老不死の解糖系生命体になって20億年前のもとの姿で生き続けます。低体温、低酸素のもとで生きるための戦略が、真核細胞を通り越しての先祖返りだったのです。がん細胞が謎に満ちていたのは、20億年というスケールで解糖系まで戻った大物だったからなのです

p209.生命系にとっては、過去はないのではないか。未来があるだけではないか。いや、もっと正確にいうと、変化する現在だけがあるのではないだろうか。そんな気がします



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