リリアン・R・リーバー「数学は世界を変える」ソフトバンククリエイティブ

公開日: : 書評(書籍)



副題が「あなたにとっての現代数学」。といっても、第二次世界大戦中に書かれた、少し古いものだ。著者は四半世紀前に、挿絵を描いた著者の旦那は半世紀前に、いずれも鬼籍に入っている。はて、カタカナの名前の人について「鬼籍に入る」という言い方をするのだろうか

当時のことだから、ヒットラーとか全体主義とかも出てくる。2007年に原著がペーパーバック化されたのが翻訳される契機のようだ。ジャスミン革命の起きた今年に訳書が出るのも奇遇という気がする。内容もそういうこと。民主主義、科学、各人の努力と謙虚の大切さ

改行の多い司馬遼太郎を2倍したような文章で、かつ、見開きのどちらか1ページが挿絵だったりするので、パラパラとページをめくれる。内容も平易。「数学」という堅苦しさはない。これほど抽象化された「数学」の説明はない。抽象化も、この本の主題のひとつ



p15.全員を何度かだますことはできるけれど、全員を毎回だますことはできない

p53.科学は国際的であってヒトラーの人種理論は完全に間違いだと教えてくれる。このことにあなたも深く感動するはずだ。そして科学はわたしたちが耳を傾けさえすれば、物事を成し遂げるには協力がどうしても必要で、1階や2階の人が上の階の人を笑ったり、上の階の人が下の階の人を見下したりするのは実にばかげていると教えてくれる

p56.本当の悪魔は銃や戦車ではない。一定の条件では銃もとても「良い」ものかもしれない。「愛国主義」や「独裁制」といった間違った考えが「人間性」に対する見方を狭めてしまうこと、それが真の悪魔だ。間違った考えは銃よりも危険だ!!

p62.代数学が算数より優れている大きな理由の1つが、一般化だ。一般化は、数学全体で見ても、新しい結果を出すためのもっとも基本的な方法の1つである

p64.この抽象化の能力は、他の動物が持っていない人間の優れた特徴の1つだ。そしてその能力は数学者だけでなく、画家、音楽家、詩人などすべての「人間」が使う。もしかしたらいつの日か、「人間度」というものをIQでなく抽象の能力によって測定するようになるかもしれない。一個人や1つの場所でなく心理、正義、自由、道理といった抽象的な概念に対して忠実でいられる人は、犬でなく人間としての忠誠心を持っているからだ

p75.進歩は、伝統を尊重しながらそれに100%奴隷のようには従わないことでなされる!

p108.高校や大学で学ぶ代数学の大部分は紀元前3000年からニュートンの時代までに作られた。つまり、平均的な大学卒の人の数学の知識はおよそ300年前に知られていたところで止まっているのだ! でも数学はここ100年で、それまでのすべての世紀を合わせたよりも大きく発展しているのだ!

p150.だからこの場合、2+2は4ではなく2.83なのだ!

p151.プール代数(論理学で使われる)を使うと、法律の条文を「代数学的」な形式で表してそれにこの代数学の演算規則を当てはめることで、そこに矛盾がないかどうか確かめられるのだ!

p153.どの代数学も幾何学も人間が作ったものだ。だからどれか1つが絶対的だということはない。どれも唯一無二の真理を表してはいない。それでもそのほとんどはとてつもなく役に立つ。人間は唯一無二の真理を見つけていないしこれからも決して見つけられないだろうが、それでも、持っている考える力を使いさえすれば見事にやっていけるのだ!

p155.人間は神にはほど遠く決して唯一無二の真理を知ることはできないだろう。だから人間は尊大になるのでなく謙虚でなければならない!

p161.お分かりのように、現代の数学の重要な流れはどんどん抽象化へ向かっている。そしてそれが自由と力の源であることも、お分かりだろう

p172.現代物理学では、物理現象を表すための要素として「点」の代わりに「事象」を使うと都合がいいことが分かっている。それぞれの事象は、4つの数つまり緯度、経度、高度および起こった時刻

p184.絶えず変わりつづける世界に順応せよ



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