原秀史『「規制」を変えれば電気も足りる』小学館新書

公開日: : 書評(書籍)



20111112231826

ここのところ、こういう悪い規制のことばかり読んでいると思う。が、たまたまだ

時代遅れがあり、見直さない。事実誤認があり、見直さない。利益誘導があり、見直さない

新設の私立中高が全寮制をとるのも、別に教育方針ではなく、ただ、新規参入のハードルなのかというのは驚いた。こんにゃくゼリーの件についても、ネットでは当時の担当大臣がライバル企業から献金をもらっているとか、そういう言説もあったけど。もう少し具体的な組織的な問題だったのかと

実社会でも、同様のことはいくらでも経験できる。記憶に新しいものでは、ちょっと前の「未公開株をばら撒いたことが過去にあったら上場できない」とかね。こういう本質からずれているものについて、しっかりと意見するためには、やっぱり経団連に加盟していては難しいと思う

セグウェイがしっかりと認識されるのであれば、乗ってみたい気もする。個人の乗り物のハードルが大きすぎると思う。保険などを払うと非常にコストが上がる。電動自転車くらいだろうか

経済学に反するもの、例えば派遣社員の3年の話や消費者金融の総量規制は言い訳もあるかもしれない。経済学者の役目の発揮を求めるところである。しかし、理由がないと規制緩和をしない、という思考回路。大学で法律を勉強してきている人間がこういうことをするのだから、悪質。法律学者、法曹はもっと声高に物を言わなければいけない

情報技術の果実をしっかりと取り入れるだけで、どれだけ国が良くなるだろうと思う。特に選挙の規制は以前から思っていたが、議員立法の規制は、この本の最後にふさわしい指摘だった。まずは違憲状態となっている選挙区割りから一歩一歩改善してほしい

この本も、自身が中で白状しているように、著者が過去に中央官僚であり、立場を変えて、古巣のやり方を攻撃していることになる。自分がいたところに対して、未練なく強く言える身代わりというのは、少し気味が悪くもある



p6.「おバカ規制」にもいろいろとあって、「昔作った古い規制をそのまま残しておいて、今の実態に合わなくなっている」、「現場の事情を知らないお役人たちが、変な規制を作ってしまう」というパターンもあれば、もっとタチの悪い、「天下りした役人OBたちを養うために、無用な規制を作る」、「既得権益を持つ人たちとお役所がつるんで、新規参入者を排除する」といったものもある

p25.ここ数年、「世界に通用する人材を生み出す」といった理念を掲げ、大企業が資金を出すなどして新設される私立中高が話題となってきたが、「全寮制」の学校が多い。これは実は、私学審議会による規制の副産物だとみられている。魅力的な学校を新設しようとすると、既存の私立学校が競合を恐れてなかなか同意しない。最後は、「地元以外の子供たちを連れてくるので、競合しない」という「全寮制」が落とし所になる。別に山奥にあるわけでもないのに「全寮制」の学校になってしまうのだ

p45.意外なことに、法律の上では、カットは美容師の本来業務になっていない

p48.政府税制調査会専門委員で酒税に詳しい三木義一・青山学院大学教授が説明する。「明治時代に税制の基礎ができた時、税収のほとんどを土地(地租)と酒が占めていました。ビールは当時舶来の高級酒だったから、金持ちに高い税金を払わせるという道理で明治34年(1901年)に麦酒税が導入され、この頃、酒税収入は地租を抜きました。酒税は国の歳入を支え、日露戦争の頃以来いわば酒税が戦費を賄ってきたわけです」

p49.1984年の参院大蔵委員会で、「なぜビールの税金が高いのか?」という質問に、当時の大蔵省主税局長はこう答弁した。「我が国のように、一般的な消費税の体系を持たない国では、どうしても酒税の税負担が高くならざるを得ない」つまり、日本には消費税がないからビール税が高いのはしょうがない、と当時は言っていたのだ。その後1989年に消費税が日本にも導入されたことはご存知のとおりだが、ビールの税金は高いままだ

p54.当時は、梅酒や果実酒の自家製造も全面禁止されていた。それが昭和37年(1962年)に自家製梅酒の製造が解禁されたきっかけは、前出・三木教授によると、高級官僚の”密造”だったそうだ。「当時、内閣の重要ポストにあった官僚が、新聞への寄稿文で、自宅で梅酒を造っていると書いてしまったのです。摘発するかどうか国税内部で大問題になった挙げ句、当時の大蔵省は逆に『制度のほうを変えろ』と指令。その結果、個人で楽しむために梅酒を漬けることが解禁されたのです」

p59.こんにゃくゼリーによる窒息事故は、消費者庁の把握では1994年以降の17年間で数十件に過ぎないはず。なぜ、毎年3000人以上の患者が出ている生肉などの規制より優先されたのか? 理由は、いわゆる「すきま事案」の代表だったからだ。「すきま事案」とは、個別法令や縦割り行政の狭間で取り締まりできない案件のこと。消費者庁にとって、こんにゃくゼリーはいわば”生みの親”。組織の存在理由証明のため、全力で取り組む必要があった。だがその陰で、「すきま事案」以外の、生食肉のような典型的な食品衛生問題が疎かにされたのだから、縦割り行政の見直しどころか、縦割りが一つ増えただけではないかとさえ思われる

p93.かくしてセグウェイは、法律上、道路上には”存在しないはずの物体”ということになってしまう。もちろん、これは法律が作られた当時、こうした乗り物の登場が想定されていなかったからなのだが、想定できなかったことは別に悪いことではない。要は、新技術を認め、規制を迅速に書き換えていくことが、日本のお役所は大の苦手なのだ。アメリカやヨーロッパ各国ではとっくに認められているし、日本でも地方では、「横浜ウォーターフロントでの利用を期待したい」(横浜市共創推進事業本部)などの声がある。旧来の規制を盾に「新発明」を排除し続ける国に、新しい産業やサービスが生まれるわけがない

p116.「ラブホテル」にあたるとなると、「風俗営業等の規則及び業務の適正化等に関する法律」(以下「風営法」)によって警察の監督下に置かれ、18歳未満は立ち入り禁止など厳格な規制に縛られる。しかし、「風営法施行令」で、食堂とロビーが一定面積以上確保されていれば、ラブホテルとはみなされないことになっていた。だから、ビジネスホテルが「ラブホではない」ことを証明するために食堂を設ける。何だか本末転倒ではないか?

p132.一つ目の”仰天発言”は、仕分け人側の「インターネット通販が危険だという合理的根拠を厚労省は示せていない」という指摘に対して飛び出した。仕分けを受ける省庁側の介添人として参加した大塚耕平・厚生労働副大臣が「逆に、インターネット通販を解禁しなければならないという合理的理由も示してもらっていない」と切り返したのだ。この発言は、「規制」というものを役所がどうとらえているか、言ってみれば「お役所の思想」が、副大臣の口を介してほとばしり出たように思えた

p133.2番目は、「規制改革担当」の平野達男・内閣府副大臣(当時)の発言だ。規則に切り込む立場での参加のはずだが、なぜか逆の立場を取り、「インターネットでの販売が拡大すると、地方の薬局がつぶれてしまう。これは政治的な問題だ」と繰り返した。この発言は、インターネット販売禁止の根拠は、表向きは「安全上の理由」と言っているが、実は「薬局という既得権業界を擁護したい」ことが本音だと、正直に吐露したものと聞こえた

p142.選挙事務所や選挙カーの、候補者の「氏名」が入った看板には覆いをかける(しかも、透けて見えるのはOKだからわざと透けるような「とても薄い布」をかける)。こうした”ルール”を守れば選挙違反に問われない、”抜け道”があったのだ

p147.こうしてさまざまな活動が制約され、結局、選挙運動は、選挙カーでの名前の連呼、街頭演説、演説場所間の練り歩き(旗を立ててお供とともに歩くことから、関係者の間では「桃太郎」と呼ばれる)といったことにしぼられていく

p160.この規制でいったい、多重債務者問題は解決に向かっているのかどうか。徹底した検証が欠かせないはずだが、金融庁の動きは鈍い。いったん規制を作った後、実際の効果を虚心坦懐に検証し、必要あれば軌道修正する、ということがお役所は苦手なのだ

p162.利息制限法1条。実は、この元本額の数字、制定時の1954年から一度も変更されていない。大卒初任給が1万円ちょっとの頃にできた「10万円/100万円」という区分をいまだ維持しているわけだ。それだけでも、すでに、合理的な規制とは言い難い

p163.今の世で、「上限金利は不要」などと唱えたら、すぐに「アメリカ型の市場原理主義だ!」と批判されそうだが、こういう主張は江戸時代からあった。遠山の金さんの主張からもわかるように、「規制緩和論者」たちは、決して「借り手がどうなってもいい」と考えているわけではないのだ。「事実上の徳政令が救ってくれる制度の下では、多重債務者の立ち直りのチャンスをかえって奪ってしまいます」(福井秀夫・政策研究大学院大学教授)「多重債務者への対策は、総量規制や上限金利引き下げではなく、社会政策として行うべきです」(石川和男・霞が関政策研究所代表)といった主張を改めて検討すべきだろう

p176.戦後、農地解放がなされ、地主から小作人たちが解放された。だが、その後できあがった日本の農業の姿は、小規模で、本業を別に持つ兼業農家たちが、何から何まで農協の指導を受け世話になりながら、週末に”片手間の農業”をこなすものだった

p186.国会議員が法案を提出することは、規制によって厳しく制約されている。国会法56条1項。こういう賛同者要件が課されたのは、新憲法施行間もない頃、選挙区受けを狙ったいわゆる「お土産法案」が乱発されたことへの反省からだった(1955年改正)。だが、今では、国会審議はすべてインターネット中継され、利益誘導を狙った恥ずかしい法案を提出すれば、国民の前で恥をさらすことになる。いまや、それだけで十分で、賛同者要件によって「国会議員が本来の仕事をする権利」を制約する必要などないのではないだろうか。ちなみに、地方議員も国会と同様だ。地方自治法112条。法律を作る仕事のはずの国会議員、条例を作る仕事のはずの地方議員が、法案や条例案の提出すら許されていない。これぞ、おバカ規制の原点といってよいのではないか



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