山名宏和「アイデアを盗む技術」幻冬舎新書

公開日: : 書評(書籍)



20111210235255

正直、序盤は退屈だったが、尻上がりに面白くなってきた新書。この著作ならではという思想は発見できなかったが、事例でメモするものが多かった

プリクラになれている女の子に対するカメラマンの目線がいい。こういう専門家の目が面白いときがある。先日、髪を切りにいったとき、美容師が、そのときの国民的な関心事のサッカー日本代表の本田の髪型について、「本田とかになると専属で連れて行ってるんじゃないですかねえ。よく見てると、ワールカップの間に3回は切ってますよ」と言っていた。事実関係とかともかくとして、そういう目の付けどころというのは頷くことしきり。特にサッカー観戦って興味ないので自分の記憶も曖昧なのだが

そういう意味でも、いろいろなものに触れることで、縦だけでない、横や斜めのことを採り入れるというのはこの本でも思わされる

目線を変えてみる。「人はみな自分が主人公」なんだが、それを取っ払ったものの見方ができるように意識したいと思う

最後に新しい言葉を、新しいフィールドを作ってしまうことの強さも思う



p41.「人生はクローズアップで見ると悲劇だが、ロングショットで見ると喜劇である」これはチャップリンの残した言葉ですが、同じように不快な出来事も、引いた視点で見直すと、ある種の「おもしろみ」を帯びてきます

p78.このとき、もう一歩考えを進めて、客の「ウケ」まで考えていたら、なにか手が打てたはずです。たとえば、壁に上着をかけるためのフックをつける。その程度のことでも、十分「フォロー」となります。そこまでやって初めて証明写真用ボックスの「フリ・ウケ・フォロー」が完成するわけです

p113.カメラマンの彼女の分析はこうでした。最近の10代の女の子たちはプリクラをよく撮る。実はそれが写真嫌いの原因。というのも、プリクラの写真は、ソフトフォーカスがかけられている。黒目が実物より大きく写るなど、なんらかの加工がなされています。一方、カメラマンの彼女が撮った写真は、とてもクリアに女の子たちの姿を写しています。その鮮明さが、プリクラの写真に慣れてしまった女の子たちには受け入れられないのだろうということでした。「ゲーム脳みたいに”プリクラ視覚”っていうのもあるんだと思う」この仮説が正しいかどうかはわかりません。しかし、カメラマンという職業だからこそ出てきたこの仮説は、僕には決してない考えでした。そのことが頭の中のハードディスクに収められただけで、十分な収穫です

p119.その人がなんに感情を動かされたかを「よく見る」ことだけが、自分の「おもしろい」を拡張する方法ではありません。逆に、なんに感情を動かされなかったか、つまり「おもしろ」と思わなかったかを「よく見る」ことが、とても参考になることもあります

p130.「車が壊れるのは人が乗るから」あくまでも車の味方。常に車の立場になって考える。時には、あまりに車の立場になりすぎて、お客さんから抗議を受けることもあるそうですが、そうするからこそ初めて見えてくる故障の原因がある。だからこそ日本一の整備士とまで呼ばれるようになったのだと思います

p126.海外というのは、自分の固定観念を気付かせて、それを壊してくれる場所です。しかし、だからといって、そうちょくちょく海外に行くことなんてことはできません。では、どうしたら普段の生活をしながら、自分が属する以外の世界に触れることができるのでしょうか。その一つの方法がテレビだと思います

p148.テレビ以外の場所で、僕がうまく「グルーピング」を使っていると思うのは、横浜にある「新横浜ラーメン博物館」です。食のテーマパークのはしりである「新横浜ラーメン博物館」には、後にできた同様の施設よりも優れている点があります。すべての店にミニサイズのラーメンがあるのです。なので、一度に何種類ものラーメンを食べ比べることができます。ここに「対比」があります。さらにいえば、「新横浜ラーメン博物館」に一人で行く人はまずいないでしょう。何人かで行くはずです。何人かで食べ比べるとどうなるでしょうか

p151.「深イイ」という新しいフレームを作ったからこそ、本来は同居することが難しかった質の違う情報を、同じ場所に並べることができたのです。それにより、新たな組み合わせの妙を作ることができるようになたのです

p152.『ムチと罰』が新鮮だったのは、「ドSソング」という新しいフレームを作った点です。「ドS」というフレームのさじかげんもいい感じです。「深イイ」と同じように、なんとなくニュアンスがわかる言葉です。この「なんとなくわかる」ぐらいが、新しいフレームには向いているようです。いくら新しいからといって、誰にも共感されないものでは、フレームにはなりません

p163.ランキングという形式をとりながら、ランキング本来のルールから離れ、その枠組みだけを使う。それでもみんな、条件反射で1位を期待し、1位まで待ってしまう。ランキングというものを刷り込まれてしまった人々の生理をうまく利用した、見事な仕掛けです

p164.クイズの魅力はなんだと思いますか?答を出したくなる……参加性。たしかにそうです。でも、今のテレビ番組では、この参加性は二の次。クイズの一番の役目は、その後に出てくる情報を知りたいという気持ちを高める、「情報為のフック」です

p172.この手のCMを見るたびに、そんなふうに毒づいていたら、近ごろは、試写会を観ている最中の顧客の姿を暗がりでも撮影できる特殊なカメラで撮影したCMを見かけるようになりました。実際に映画を観ながら、涙をぬぐっている姿は、どんな感想の言葉よりも映画の魅力が伝わってきました。こうして見ると「他者というフィルター」もまだまだ進歩する余地があるようです

p177.もちろん、「サクマ式ドロップス」を作ったメーカーは、そんなドキドキ感などならってこの商品を作ったわけではないでしょうし、まさかハッカ味がハズレあつかいされていたとは思っていなかったでしょう。でも、偶然とはいえ、あらためて振り返ってみると、「サクマ式ドロップス」には偶然性をうまく使うためのヒントが詰まっています



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