堀E.正岳「情報ダイエット仕事術」大和書房

公開日: : 書評(書籍)



20120130000747

確かに電子メールに対してすぐに見てもらえるという期待をなくしたい。常に受信トレイの奴隷になっている人がいる

電話についても同じ。電話のよさはすぐに連絡できること。活字以上の行間まで連絡でき、また共感による合意形成を促しやすくなること。デメリットも多く、その最たるものが受話者の都合にお構いなしであるところ。なるべく慎重であるべき。常に、最初に予想する所要時間を伝え、いま話してもよいかを伝える。大概は、快諾してくれるが、まれにリスケジュールを言われることがあり、むしろそのほうが清々して嬉しかったりする。著者の主張で表すなら、とば口で私がこう言うことで、受け手にも電話に対する私の理解が伝わっている、と期待したいものだ

この本の見返し部分のカバーに『「いつでも電話してください」は命取りです。』と書いてある。まずは読んだとおり「電話も意識的にダイエットして使え」というのが本意なのだ。しかしメタに考えていくと、前掲のとおりの振り付けで電話ポリシーを理解してもらった上で、敢えてこの言葉を使うことで、「あなたが大事です/この事が大事です」という考えを行間に伝えるという、裏返った利用方法もある。自分はまず、こちらの意味を思い出した

電話には出ないという考え方もある。意識的に電話に出ない関係を結びたいということ。タイムリーに邪魔して欲しくない程度の関係。手紙や電子メールなら見ますよ、ということ。私がよく使うのは、メールアドレスや住所を伝えるが電話番号を伝えない。先方の誘因にしたがって、自分も興味があって最初だけ先方のやり方に乗るが、そこから前は自分のペースに持っていくということである。バーゲニングパワーがこちらにあるからこそ出来るものだ

例えば、不動産の物件情報のチラシを見て、興味を感じたときに、店に行って詳細を見せてもらったり、オープンルームに訪問したりすると、先方は当然に顧客情報を取りにくる。向こうも商売なのだから付き合うが、このとき電話番号だけは書き込まない。営業マンには悪いが、こちらは電話はお断り。口頭で確認を求められても「手紙や電子メールなら誠実に拝見し、興味があれば返事をする」と返事をする。こういう人は多いらしい

すべてを書き出して、シングルタスクに徹するということを、これまでやってきた。この本でもそれが主張されており、意を強くした。物をどれだけ暗記して、空で唱えられるかということに価値を感じない。ただ、人からアプローチがあったときの初動は遅れがちだ

また、ひとつの作業を行っているときの連想を、別途記録しておく、というのは、そこまで気が付かなかったがいいアイデアだ。この現在の本線に対しての脱線が恐いと思いつつ、いや脱線でなく、これも幅を広げるために大事なんだけどな、などと、複数のことを考えていると、またシングルタスクにならなくなってしまう。やはり、愚直に書き出すのがいちばんということなのだろう。出先だとiPhoneしかないので、ちょっとそういうメモはやはりペーパーでやるべきなのかなと思いはじめている。なんとかiPhoneでもストレスなくメモ取れないかな。ポケモンキーボードでも持ち歩こうかな

あと、くだらないアウトプットでも続け、また吉田松陰の読書は筆記せよという言葉は、勇気づけられるな。このような無駄に長い読書メモをつけている身としては



p33.量子力学の礎を築いた理論物理学者のニールス・ボーアは「専門家とは、自分の分野でおかしうる、すべての間違いを経験した人のことだ」と語っています。また、熱電球の試作に1万回失敗したトーマス・エジソンは「私は失敗した訳ではない。1万回のうまくいかないやり方を発見しただけだ」と語っています。なんと身軽な考え方ではないでしょうか?

p61.1週間には24時間×7日で168時間があります。このうち、睡眠や食事、入力などに使ういわゆる「必需時間」は日本人の平均で1日10時間と、ここ30年以上ほとんど変化していません。この必需時間をのぞいた時間、約100時間が私たちの実質の活動時間です。このうち、何時間が仕事や家族など、社会的義務によって拘束を受けている「拘束時間」でしょうか?

p76.ホワイトノイズという、電波の入っていないラジオから聞こえてくる「シャーッ」という音は、人間の会話が持っている音程やピッチの変化を打ち消してくれ、周囲の会話を耳に入りにくくする効果があることが知られています。手元のスピーカーから自分だけに聞こえる範囲でホワイトノイズをかけておくだけで、急に周囲の会話が小さくなったように感じられるから不思議です

p86.「あれをしなきゃ」「このことを忘れないようにしないと」という考えは、頭の中にとどめている限り、思考の一部分を常に浪費してしまいます。GTDではそうした考えをすべて頭の中から取りだして、信頼できるシステムに書きとめるべきであると提唱しています。たったそれだけの習慣でストレスが大幅に減り、頭脳が余計な記憶作業に手間取らなくなるために集中力が向上するというわけです。これは「器が有用であるのは、それが中に空をもっているから」とした、老子の思想にも通じるとても重要な考え方です。空っぽになった頭は、力を生み出すのです

p93.現時点の行動を完了させるために別の行動が必要になったり(たとえば、ウェブで検索を行うなど)、「これもやらなきゃ」と思いついたりした場合は、リストの一番下か、別のリストに書き加えておき、今やっている作業からは脱線しないようにします。現時点でそのタスクが完了できない場合は、次に何をするべきなのか、リストに書き加えます

p103.私のかつて上司には、アポイントを立てて部屋にうかがったとしても、途中で鳴り始めた電話のせいで、いちいち話が振り出しに戻ったり、途中でやってくる来客にアポイントをとっていた私が追い出されてしまうという、「割り込み」に振り回されている人がいました。こうした人は「多忙」であることを「充実感」と誤って認識している場合が多くありますが、本当はちょっとした交通整理をするだけで、永遠にモグラたたきゲームを続けているような状況を、レーシング・ゲームのような爽快さに変えることができるのです

p104.たとえば、ほとんどの人は午前中に最も集中力が高まっているので、こうした時間を自分だけのためにとっておき、メールの返事もしなければ、電話もなるべくでないようにするという一種の「鎖国」時間としてしまうのが一案です

p113.もともとメールはリアルタイムに近い通信のために考案されたものではありません。郵便と同じで、それは受け取った側が、自分の都合に合わせて読むはずの物でした。しかし瞬時に相手に届くという特性もあって、メールは電話をちょっと下回るくらいのリアルタイムの通信手段だという認識が蔓延しています

p131.重要なのは「準備ができたら」「十分に学んだら」行うのではなく、定期的に行うほうが効果的という点です。アメリカのミュージシャンのジョナサン・クールトンは、インターネット上で毎週1曲を作曲して無料で提供するという活動を1年続け、大きな反響を呼びました。「よい曲が思い浮かんだら発表する」のではなく、よい曲想が思い浮かんでも、浮かばなくても、金曜日になったら必ず1つの曲を発表するという習慣です。不思議なことに、彼によるとぎりぎりになって無理に作った曲でも人気が出ることがあったり、「これは上手にできた」と思ったものでもそれほど人気が出なかったりというように、時間のかけ方はアウトプットの質には影響を与えなかったといいます。ただし、週を負うごとに、ファンは着実に増えていったのでした

p134.こうした学習法が有効なのは私たちの脳がデータを記憶するのは非常に不得意である一方で、パターンを認識する能力はどんなコンピュータよりも優秀だからです。あてにならない記憶に頼らずに多くのことを短期間で学ぶには、データで覚えるのではなく物事のパターンを覚えてしまうほうが近道です。こうしたパターン化を助けるために、情報整理の基礎トレーニングとして、すべての情報を「流れて消えていく」フロー情報と、「蓄積してパターンをみる」ストック情報に分けていくようにしてみましょう

p139.吉田松陰は「書を読む者は其勢力の半ばを筆記に費やすべし」として膨大な抄録を残しました

p170.回数と実績のカーブを描いていて、こうした「飽和」の兆候が見えたなら、それは次の難易度へと活動をステップアップさせるべきタイミングが知が付いていることを示しています。坂道を走っていて、アクセスを踏んでいてもなかなか坂を上りきれないと感じたときと同じで、そのときは活動を新しいギアに入れて自分に適度の負荷を与えながら自分の成長をコントロールしましょう

p172.大人になった頃から、私たちはこうした1週間の周期性を失い、平日か休日かという区別だけとなってしまいますが、あえて曜日の持つ力、1週間という単位が持つ周期性の力を利用することで、身につけようとしている習慣を日常の中にまるで塾のように埋め込んでしまうことが可能です。アメリカ建国の立て役者ベンジャミン・フランクリンは若い頃に、自らの修身のために13の徳目に分割した日を用意していたことを、著名な『フランクリン自伝』に書いています。彼の習慣形成法では、1週間にそれぞれの徳をどれだけ実践することができたかがきちんと回数として記録されていると同時に、毎週に1つの「キャンペーン中」の徳目が割り当てられていました。13の徳目に1週間ずつ充てるなら、それぞれに対して1年=54週間に4回ずつこうした集中期間を与えることができる、というわけです。この逸話はフランクリンの克己心の強さを示すものとして紹介されることがありますが、史実によれば彼はたびたび暴飲暴食に走ったり、この徳目に反する行動にふけったりしていたことが知られていて、この習慣形成法も生まれもった性癖を律するために、なるべく克己心に頼らないシステムを作ったのだと言えそうです

p178.趣味で山登りをする場合に、苦労して下山した終着地点に温泉があるようにコースをつくると下山の苦しさが気にならなくなります。これと同じ発想で、習慣を側面援護するようなほうびを用意しておくのがよいでしょう

p184.「けっして例外なく続けよう」と自分を追い込むのではなく、「これがダメなら、こちらをやったらどう?」と自分に逃げ道をあらかじめ用意しておく

p211.「最短距離を走りなさい。自分でテーマを複雑にして、それで何か仕事をしたつもりになってはいけませんん。本人は我と我が身を痛めつけて修行をしたつもりでいるのかもしれませんが、それでは人生は修行をしているうちに終わってしまいますよ!」先生はそう言って、励ますようににっこりと笑いました。このとき、私は偉人の言葉を思い出していました。ローマの哲人皇帝、マルクス・アウレーリウスの『自省録』に載っていた言葉です。「常に近道を行け。近道とは自然に従う道だ」この哲学が、本書の核となったのでした



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  • 名前:Max 年齢:人生の2合目くらい 誕生日:夏の暑い日 一言:他言無用ということでお願いします
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