大竹文雄「競争と公平感」中公新書

公開日: : 書評(書籍), 大竹文雄



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中公新書って、その装丁のリジッドな割には、中身は平易ですらすらと読めたりして、なんかお手軽に知的な装い? この本もそう

格差社会が広がったから問題とか、解雇規制を合理化せずに若年労働者のために新卒扱いを作るとか、最低賃金を上げるとか、そんな政治のろくでもないところは、経済学者がもっと声を大にして口を極めて罵って欲しい。この辺の理解がもっと市民権を得ていくのが社会のためだ

長時間労働者は仕事を先延ばししているだけで業務効率は悪い、とか、もう自分に都合のいいように引用したい、素晴らしい調査結果ではないか。本当にそう思うね。ワーカホリックの幸せを、そうでない人に敷衍するのは勘弁してほしい

この薬指の長さの話は前からときどき聞いていたけど、あらためて調べてみると面白いな。自分でも測ってみた(人さし指と比べて薬指が長いほどペニスが大きい傾向が明らかに – GIGAZINE)。人差し指が65mm、薬指が75mm、その比率は0.867とかなり強めの薬指の長さになるようだ。男でよかった。しかし、それほど理系であるとも、競争意識があるとも思っていないけど、どうだろうか。花粉症ほか重いアレルギーもあるし。でも、確かに交通規則はあまり守らないなどの乱暴なところはあるかも

また、義務教育時代の夏休みの宿題。自分は恥ずかしながら最後まで溜めてしまうほうだったけど、幸い、たばこや酒などの中毒財の虜にはなっていないな。でもガジェット厨のタンブラ厨だな



p16.どうして、日本人はこのように市場に信頼を置かないのであろうか。ハーバード大学のディ・テラ教授とプリンストン大学のマカロック教授の研究によれば、資本主義への支持と強く相関するのは、運やコネでなく勤勉が成功につながるという価値観や汚職がないという認識だという

p16.2005年に調査があった日本は運やコネが大事だと答える人の比率は41%で、先進国のなかでは高いほうである。日本人は勤勉な国民で、それが高い生産性の原動力になってきたとされている。しかし2005年時点では、そのような価値観がずいぶん薄れてしまい、運やコネを重視するようになっている

p21.「運やコネで人生が決まる」という考え方の広がりが、反市場主義をもたらす理由を考える上で、参考になるのが、シカゴ大学のジンガレス教授の研究である。ジンガレス教授は、市場主義が根付いたのはアメリカの特徴であって、ヨーロッパでは市場主義が根付かなかったことを4つの歴史的な環境から説明している。第一に、アメリカではヨーロッパと異なって民主主義が産業化に先行して生じた。そのため、人々が経済政策においても不公正であることを許容しなかったという。それが、大企業への独占禁止法をはじめとする規制であり、市場主義的な政策がアメリカで採用された背景にあるという。一方、ヨーロッパでは、大企業の活動に対する反感は、社会主義的な反市場主義的動きとなって現れた。第二に、アメリカで資本主義が発達した段階では、小さな政府であった。政府の役割や規模が小さければ、民間企業を作って成功させるのがお金を儲ける方法である。しかし、政府が大きく、参入規制も強ければ、新たに企業を作ることも難しいため、政府とのコネを作って利権を獲得することがお金を儲けることにつながる。そのためには、政治家や官僚に賄賂を贈ることが利益の獲得につながる。第三に、第二次世界大戦後に発達した国では、効率性が高かったアメリカ企業の影響を逃れるために、経済取引において地域的なコネが重要な社会を作ってアメリカの侵入に対抗していった。第四に、アメリカでは、マルクス主義の影響がほとんどなかったために、市場主義と大企業主義を区別することができた。これに対し、マルクス主義の影響が強かった国では、市場主義と大企業主義は、マルクス主義という共通の敵と戦うために団結せざるを得なかった。その結果、市場主義と財界主導(大企業主義)の区別があいまいになり、財界主導の政策がとられるようになった。以上の四つのジンガレス教授の指摘は、日本で市場主義が根付かなかったことをもうまく説明している

p42.もし、生物学的な理由で、女性が競争を避けているのだとすれば、女性の昇進に一定枠を確保するといった割当制度を用いれば、男性との競争を意識させないことで、より競争にチャレンジする女性が増えるという効果があるかもしれない。女性の競争に対する意識を変えることには時間がかかるので、女性枠を設けることは、能力は高いが競争を好まない女性を活躍させる方法としては有効だろう

p46.十両や前頭下位で引退した力士よりも、横綱や大関といった上位に昇進した力士のほうが、平均的には薬指が人差し指より相対的に長く、その差は統計的にも有意であることが明らかになった。瞬間的な判断力を必要とする職種では、テストステロンの量が重要な資質として機能するようだ。女性ホルモンが競争を好まないことと関係しているのと同様、男性ホルモンは、競争を好むということとも関係があるかもしれない

p115.もともと後回し行動をとるタイプの人は、中毒財から抜け出すことが難しい。「中学生の時、夏休みの宿題をいつやりましたか」という阪大21世紀COEアンケートの質問に「夏休みの最後のほうにやった」と答えた人は、たばこを吸いやすく、ギャンブルをしていることが多く、借金を背負う確率も高い

p128.なぜ所得格差が継続的に拡大してきたのだろうか。この疑問について、筆者は、拙著『日本の不平等』で詳細に論じた。傾向的な所得格差の拡大の多くは、人口の高齢化で説明できる。日本では最近の20台を除いて、同じ年齢層内の所得格差は変わっていない。それにもかかわらず、日本全体として所得の不平等化が進んできたのは、人口の高齢化が原因だ。日本では年齢が高い人のほうが年齢層内の所得格差が大きい。人口高齢化によって日本人のなかで所得格差が大きいグループが増えてきたため、日本全体の所得格差が広がってきたのだ。日本は若いころの所得格差が小さく、所得格差は40歳以上になって顕著になる。年功的処遇のものとで、競争の結果が出るのは40歳を過ぎてからだ。人口の高齢化によって結果が出てきた年齢層の人口比率が高まったのである。ただし、1990年代の終わりから2000年代の初頭にかけては、若年層での所得格差が拡大している。この若年層の格差拡大は、超就職氷河期で急増したフリーターと失業者が原因である。超就職氷河期が発生したのは不況が原因だ。実際、その後の景気回復で2008年までの新規学卒者の就職状況は好転していった

p171.筆者がかつて行った研究によれば、日本の有給休暇の取得行動は、労働組合がある企業とない企業では大きく異なる。労働組合があるところでは、景気が良くなると有給休暇の取得率が低下し、労働組合がないところでは有給休暇の取得率が上がる。労働組合がある企業では、雇用保障が強い代わりに有給休暇の取得を含んだ労働時間の変動は、仕事の忙しさに応じるという傾向があるのではないだろうか。一方、労働組合がない企業では、景気が悪化した際に解雇の対象にならないように有給休暇の取得を労働者が自粛しているのかもしれない

p173.日本の特徴は、ヨーロッパのように有給休暇の取得時期の決定権を企業に付与する代わりに、祝日という国レベルの強制的休みを増やすことで、休暇の取得時期の決定権を国が保持し、休暇数を増やしてきたと考えられる。こうしたやり方のメリットはある。休むタイミングが一致しているほうが、ばらばらに休むよりも生産性が高くなることは十分に考えられる。経済活動は、財やサービスの取引である。全員が同じタイミングで取引活動を行うほうが、ばらばらに行うよりも、よりよい取引相手を見つけることができる可能性が高まるのは明らかだろう。毎週土曜日と日曜日は休むとか就業時間は9時から5時までというように決まっているのは、それも大きな理由だ。しかし、ゴールデンウィークや夏休みといった長期の休暇については、休暇中に取引活動がなくなるわけではなく、レジャー産業という取引活動が行われる期間でもある。その場合、レジャー産業が活発化するタイミングが、全国一律に決められている場合には、さまざまな非効率性が発生する。レジャー産業の繁閑の差が大きくなることから発生する非効率性である。

p181.ワーカホリックには周囲に歓迎される場合と迷惑がられる場合の2つの可能性がある。職場においてワーカホリックが歓迎されるのは、同僚がワーカホリックになってくれたケースである。この場合、同僚は仕事自体が好きなので低賃金でも長時間労働をしてくれる。そのおかげで職場の生産性は高くなって、ワーカホリックになっていない人は通常の労働時間働くだけで、高くなった生産性から高い賃金をもらうことができる。ワーカホリックになった本人が健康を害してしまうと問題が生じるが、周囲はワーカホリックの社員が健康を害さない程度に長時間働いてくれることを一番歓迎する。ワーカホリックになった本人は、仕事が苦ではないのだから問題ない。この場合、ワーカホリックを減らすべき必要性はない。問題になるのは、ワーカホリックになった人が昇進して、職場全体を長時間労働にさせる権力を持った場合である。この場合、部下の多くは長時間労働を望んでもいないのに、ワーカホリックの上司のために残業させられ帰宅できない、という負の外部性が発生する。これが多くの職場で観察される現象ではないだろうか

p184.岡山大学の奥平寛子准教授と私は、子どもの頃夏休みの宿題をいつやっていたかを先延ばし行動の指標にして、それと長時間労働との関係を統計的に調べてみた。そうすると、管理職については、夏休みの宿題を最後のほうにしていた人ほど、週60時間以上の長時間労働をしている傾向があることが確認できた。もし、仕事を引き受けすぎて長時間労働をしているのであれば、そういう人たちは所得が高かったり、昇進しているはずであるが、残念ながらそのような傾向は確認できなかった。つまり、管理職の長時間労働の一部は、仕事を先延ばしした結果、勤務時間内に仕事が終わらず、残業をしている可能性が高い。そうだとすれば、残業をしにくい環境にすることで、人々は所定の勤務時間内で仕事をせざるを得ないようになって、生産性も上昇することになる可能性が高い

p208.移民が自国生まれの労働者の賃金を引き下げるか否かについては、まだ確定的な結論が出ているわけではない



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