ロビン・ダンバー「友達の数は何人?」インターシフト

公開日: : 最終更新日:2012/12/23 書評(書籍)



20120426224053





生物学づいている。身も蓋もない分析のオンパレード。ポリティカリー・インコレクト。しかし真理は真理だ

(女性)引く(若さ)イコール(ゼロ)。(男性)引く(仕事)イコール(ゼロ)とかね

正直、タイトルと副題の由来がわからない。不思議な本だったな



p11.脳は、一雌一雄関係を保つことにいちばん「頭を使って」いるのではないか。鳥類でも哺乳類でも、体格の割りに脳が大きい種はまずまちがいなく一雌一雄だ。反対にその他大勢の群れをつくり、乱交にはげむ種は脳が小さい。さらに鳥類をくわしく見ると、脳の大きさにほんとうにかかわってくるのは一雌一雄関係だということがわかる。それもちょっとやそっとのことでは揺らがない、長続きする関係だ。一雌一雄関係にも2種類あって、ヨーロッパコマドリやシジュウカラなどは繁殖のたびに相手が新しくなる。そのいっぽうで、フクロウなど獲物を捕まえて食べる鳥や、カラス、オウムなどは一度決めた相手と死ぬまで添いとげる。そして後者の脳は、相手を一年でとりかえる鳥よりはるかに大きい。体格や食性などの生態を考慮しても、この事実は変わらないのだ。哺乳類になると、一雌一雄関係は全体のわずか5パーセントと少数派に転落する。それでもイヌ、オオカミ、キツネ、レイヨウの仲間は一雌一雄だ。彼らの脳は、大きな社会集団のなかで相手かまわず交尾する種より大きい

p14.ダラム大学のロブ・バートンを中心とするグループが、霊長類のさまざまな種を対象に行った研究はもっとわかりやすい。それによると、脳の新皮質の大きさは集団内のメスの数に比例し、大脳辺縁系(情動反応を起こすところ)の大きさはオスの数に比例するという。集団に多くのメスがいられるのは、メスたちが高度な社会的スキルを持っている証拠だ。新皮質はそうした能力をつかさどるところだから、当然の結果と言えるだろう。いっぽう霊長類におけるオスどうしの関係は、生殖で有利になるための順位争いが基本なので、闘争意欲を生みだす大脳辺縁系が発達するのもうなずける

p17.女は男より豊かな色彩世界に生きている。カリフォルニア工科大学のマーク・チャンギジーを中心とするグループが、居心地の悪い事実を突きとめた。色の感受性に性差があるのは、人間のみならず霊長類に共通する話らしいのだ。たとえば新世界ザルのメスは三色視だが、オスが認識できるのは二色まで。さらにこれは顔の皮膚の露出面積と関係があるという。皮膚がむきだしになっている部分が多く、血流の変化で顔色がはっきり変わる種は、例外なく三色視ができる。これはもう関係が明白だ。ということは人間の色彩感受性がすぐれているのは、やはり「裸のサル」だから? さらに傷口に塩を塗りこむような指摘もある。「こんなに遅くまでどこにいたのよ?」と問いつめられ、事実からは少々距離のある答えを返したとき、女はまずまちがいなくそれを見やぶる。この驚異的な能力の背景には、色彩(とくに赤)への強い感受性があるのではないか。つまり相手のほんのちょっとした顔色の変化を察知して、言い訳がウソだと見抜くのだ。そうだとしたら、進化はずいぶん薄情なことをしてくれたものだ

p23.ビジネス組織論では1950年代からよく言われてきたことだが、組織の規模が150人ぐらいまでなら、ひとりひとりの顔がきちんとわかるレベルで仕事が回る。それ以上になったら、序列構造を導入しないと仕事の効率は落ちる。分かれ目は150-200人で、それを超えるとさぼりや病欠がぐっと増えるのである

p24.軍隊の編成にもこのルールが生きている。近代的な軍隊では、最小の独立部隊は中隊だ。中隊はふつう戦闘小隊3個と司令部、支援部隊で構成され、ひとつの戦闘小隊は30-40人の兵士が所属するから、中隊の人数は合わせて130-150人となる。共和国時代の古代ローマ軍も、基本部隊である歩兵中隊はおよそ130人編成だった

p33.身内びいきはスコットランド移民の歴史のなかで大きな役割を果たしていて、それがもたらした利益ははかりしれない。18-19世紀にかけて、イギリス諸島から海外に出た移民集団のなかでスコットランド人が飛びぬけて成功したのも、ひとえに身内びいきのおかげと言える。大英帝国に関する決定はロンドンで下されていたとはいえ、この国は実質的にスコットランド帝国と呼んでもさしつかえなかった。行政や警察はもちろん、伝道活動、教育、地質調査、医療、看護、公益、輸送を仕切っていたのは圧倒的にスコットランド人だったからだ。イングランド人、ウェールズ人、アイルランド人より、スコットランド人が上昇志向が強いとか、高い給料に惹かれたというわけではない。むしろ故郷の共同体意識に強く縛られていたせいで、団結が強くなり、効率的に仕事ができたと考えるのが正解だろう。それに加えて教育システムも充実していた

p36.1620年、メイフラワー号でアメリカに到着したピルグリム・ファーザーズだが、ニューイングランドの冬は予想以上に厳しかった。栄養失調、病気、物質不足にたたられ、最初の冬で103名のうち53名が死んでしまった。そしてここでも生命を落としたのはひとり者で、家族連れは死亡率が低かったのである

p42.遺伝子は両親から半分ずつもらうものだが、なかには父親、もしくは母親からしか受けつがない遺伝子がある。Y染色体は父親から息子にしか渡されないので、男系の流れでとぎれることなく続いてきている。反対にミトコンドリア遺伝子は母親からしか受けつがない

p45.スコットランドの独立をうたった1320年のアーブロース宣言には、「大スキタイから旅だったスコットランド人は……たどりついた西の土地にいまも暮らす」とある。ところでスキタイ人とは何ものだろう? スキタイ人は紀元前800年ごろにモンゴル西端に出現して大いに栄えた遊牧騎馬民族である。アラル海近くの現在のウズベキスタン、カフカース南部のグルジアへと勢力を広げ、ウクライナを経由して東ヨーロッパへも侵入した。スコットランド人はこのスキタイ人の子孫なのか? おそらくそうではない。アーブロース宣言はローマ教皇に宛てたもので、スコットランド人がイングランドの民だったことは一度もなく、したがってイングランド王エドワード二世に支配される義理はないということを教皇に訴えたかっただけだ。どちらかというとこじつけなわけだが、とはいえこの表現は当たらずといえども遠からずだ――宣言の起草者は知る由もないが。私たちヨーロッパ人の起源をたどると、紀元前3000年ごろロシア南部の大草原から世界各地に拡大していったインド・ヨーロッパ語族になる。スキタイ人は時代がもっと下ってから出現したもので、しかも勢力範囲はいまのウクライナが中心だった。インド・ヨーロッパ語族の大量移入から2000年のうちに、それまでのヨーロッパ住民はすっかり駆逐されたことが最近の遺伝子解析でわかっている。今日ヨーロッパで使われている言語は、ほんのひと握りの例外をのぞいて、すべてインド・ヨーロッパ語族の言葉に端を発しているのだ。インド・ヨーロッパ語族の大流入に耐えしのび、民族的なアイデンティティ――もしくは遺伝子――を無傷のまま保ちつづけたのはバスク人だけかもしれない。急峻なピレネー山脈を住まいとするバスク人は、はるかふもとで次々と起こる侵略や征服に不安を抱いていたことだろう。しかし彼ら自身は険しい地形に守られて、ヨーロッパの様相を変える激動とは無縁でいられた。言語学者と遺伝学者が出してくる証拠をあわせると、そういうことになる。バスク語が特異な言語であることは昔から知られていた。ヨーロッパのほかの言語はたいていがインド・ヨーロッパ語族の仲間だが、そのどれとも関連がなく、どの言葉とも似ていないからだ(インド・ヨーロッパ語族に属さない数少ない例外として、フィンランド語とハンガリー語がある。どちらもモンゴル人の侵略を受けたことで、言語的にも影響を受けた。特にハンガリーのほうは、フン族の支配者アッティラとの結びつきが強い)。インド・ヨーロッパ語族は、西はゲール語に始まり、現代ヨーロッパのほぼ全言語はもちろん、イランとアフガニスタンで使われているペルシア語とパシュトー語、サンスクリット語とウルドゥー語およびその流れを引くインド北部の諸言語、そして東はバングラデシュで使われるベンガル語まで擁する一大語族だ。これらの言葉が近いことは日常的な単語を見るとよくわかる。たとえば「兄弟」を意味する単語はサンスクリット語でbhrater、ゲール語はbrathair、英語でbrother。微妙なちがいはあるものの、少し前まで祖先が共通だったことが明らかだ。ちなみに東アフリカのスワヒリ語では、兄弟はkakaになる。しかしバスク語はヨーロッパ言語の例外だ。バスク語の「兄弟」がanaiaであることからわかるように、インド・ヨーロッパ語族のどれとも共通点がない。言語としては完全に仲間はずれなのだ

p65.人間の場合は音楽が尾羽がわりだという説にも、裏づけはたくさんなる。人気アーティストはセックス・アピールばつぐんだが、証拠はそれだけではない。進化心理学者ジェフリー・ミラーがジャズとポピュラーのミュージシャン、それんいクラシックの作曲家で調べたところ、生殖可能な年齢のあいだがいちばん多作であることがわかった。またヴィヴァルディの献身的な努力も忘れてはならない。かれはピエタ慈善院で親のいない少女たちにヴァイオリンを教え、自らが指揮をして演奏会を開いていた。彼女たちの多くはそこで見初められ、金持ちの男性のもとに嫁ぐことができた。私の学生のひとりコスタス・カスカティスは、ミラー説をもっと厳密に検証するため、ベートーヴェンからマーラーに至る19世紀ヨーロッパの作曲家と、1960年代ヴィンテージ・ロックのスターを対象に創作活動の変遷を調べた。新曲を書くペースは結婚と同時にがっくり落ちるが、離婚や死別をして次のパートナー探しをはじめると、とたんに上がる。そして新しい人といっしょになると……またペースが落ちるのだ

p68.言葉は一種の毛づくろいだからというのが、ひとつの答えだ。サルや類人猿が行う毛づくろいは、身体の清潔を保つというより、「あたしはあの子じゃなくてあんたに毛づくろいしたいの」と相手との関わりを表現する意味あいが強い

p69.男女の好む話題が大きく異なるのは、そもそも参加しているゲームがちがうからだ。注意ぶかく聞けばすぐわかるが、女たちの会話はもっぱら社会的にネットワークのためにある。たえず変化する社会のなかで、複雑な人間関係を構築し、維持していくためには会話が欠かせない。会話に参加できるということは、集団の一員として認められているからにほかならないし、それに誰かの最新動向をつねに知っておくのも重要だ。雑談だなんてとんでもない。おんなのおしゃべりは社会という回転木馬の中心軸、社会そのものを支える基盤なのだ。これに対して男の会話は自己宣伝が大きな目的だ。男がしゃべるのは自分のことか、自分のよく知っていることばかり。オスクジャクの尾羽と同じである。オスは繁殖なわばりのなかを行ったり来たりして、そこに入り込んできたメスに色あざやかな尾羽を広げてディスプレイする。メスはいろんなオスのなわばりを訪れ、尾羽をくらべて繁殖相手を決定する。ヒトのオスはそれを言葉でやっている。男だけで話をしているときと、そこに女が加わったときで、会話をくらべてみるといい。メスが近づいたとたん尾羽をご開帳するオスクジャクのように、女がいると男の話は突如自己宣伝モードになる。内容だけでなく話しかたもこれみよがしになって、笑いをとろうとがんばるのだ。でも知識をひけらかそうと、専門的な話ばかりされるのは正直うっとおしい。男の会話はいわば政治ゲーム。ライバルを蹴落とし、自分という人間を売りだすのが目的だ。言葉はまことに多面的な手段なのである

p73.男は自分自身の人間関係や経験を話すことが多いのに対し、女は他人について話したがる傾向がある。この男女差を考えると、言葉は女どうしのつながりを背景に発達したと言えないだろうか。人類学者の大半は、言葉は狩りなどで男どうしがやりとりするために生まれたと考える。しかし社会でより重要なのは、「その場にいない第三者」を話題にする女どうしのおしゃべりだ。ヒト以外の類人猿社会では、オス対オスよりもメスどうしの関係のほうが断然影響力が大きい

p75.オーストラリア南海岸ぞいで先住民が語りついできた物語にはタスマニア島とオーストラリア本土を隔てるバス海峡の海底地形が驚くほど正確に描写されている。たしかにそこはかつて陸地だったが、氷河期が終わった1万2000年前に海に沈んでいるのだ

p77.伝統的な社会では、男は若くて子どもをたくさん産める女を選びたがり、女は地位と富をもつ男に惹かれる

p80.男は年齢が高くなるほど若い女を希望するようになる。また年齢に関係なく男が求めるのは、受胎能力がピークにある20代後半の女だということ。これに対して女は自分より3-5歳年上の男を希望する。この程度の年齢差は、おたがい年をとればないに等しい。つまり男は自分よりうんと若い女を欲しがり、女はじぶんよりちょっとだけ年上を求める。これは永遠に解消しないミスマッチだ

p82.国や文化に関係なく、男性よりも女性のほうが相手選びの好みがうるさく、社会的な条件や本人の性格、資質といった数多くの基準で候補者を評価していることがわかった。女性は候補者の社会的地位や収入を条件からはずすことはぜったいにないのだ。いっぽう男性が相手選びで優先させるのは、女性の若さであり、外見だった

p84.ウエスト・ヒップ比率が小さい女性は、大きい女性よりもおおむね受胎能力が高いのである。思春期に入るのも早く、既婚女性を対象にした調査では、妊娠しやすいこともわかっている

p85.文化や人種がちがっていても、美しいと感じる要素は共通している。ルイヴィル大学の心理学者マイケル・カニンガムは、人種が異なる人びとにさまざまな顔を見せて魅力を評価してもらったところ、美しい顔とされる特徴は文化の壁を超えて一致していることがわかった。それはかいつまんで言えば、女性なら子どもっぽい顔、男性なら成熟した顔ということになる。

p92.人間はキスで何をしているかというと、どうやら相手の遺伝子構成を吟味しているらしいのだ

p94.エスキモーやマオリ人がこのあいさつで何をしているかというと、おたがいの匂いをかいでいるのだ。匂いはその人のほんとうの姿を知る最高のしるしなのである

p97.カーネギー・メダルとは、緊急事態に際して勇敢なふるまいを見せた民間人に贈られるものだが、記録を分析すると興味ぶかいパターンが浮かびあがってきた。男性受賞者が救出した(あるいは救出しようとした)のは若い女性が多く、女性受賞者が救ったのは血縁関係にある子どもだったのだ。言いかえれば、女性はわが子を生かすため、男性は子づくりのチャンスを増やすためにわが身を危険にさらしたということになる。やはり私の学生だったミナ・ライオンズは、さまざまな救出劇を報じたイギリスの新聞記事を分析した。すると救出者はほぼ全員が男性だが、社会的地位には偏りがあった。ヒーローになるのは裕福な男性ではなく、社会経済的に下層に属する男性なのである。ライオンズはその理由として、ヒーローになることで市場価値が高まり、伴侶を見つけやすくなるからではないかと推測している

p101.キリスト教は結婚のときに誓いを立てさせることで、人間は一夫一婦だという概念を植えつけてきた。それなのになぜイギリスでは結婚したカップルの3分の1以上、アメリカでは半数が分かれてしまうのか? それだけではない。生まれてくる子どもの15%は、戸籍上の父親と血がつながっていないというデータもある

p102.哺乳類のなかで単婚の動物はかなりの少数派だ。霊長類やイヌ科(オオカミ、ジャッカル、キツネ)など全体の5%を占めるにすぎない。そのいっぽう単婚が基本となっているのが鳥類で、すべての種のおよそ90%が、少なくとも繁殖だけは単婚になる。一見するとまことに喜ばしいかぎりだが、その幻想は10年ほど前の研究で吹きとんだ。DNAフィンガープリンティングという新しい技術で分析したところ、単婚とされる鳥が産んだ卵の5分の1は、パートナー以外のオスが父親であることが判明したのだ。父親は血のつながらないヒナにもせっせと食べ物を運んでいるのである

p112.ダーウィンが『人間の由来と性淘汰』で書いたように、長い進化史の産物である私たちには、その傷跡がいまも残っている。なかには意外なほど新しい歴史の名残もある。たとえば肌の色ができあがったのはせいぜい数万年前、アフリカから全世界に広がった人類の大移動をきっかけに、遺伝子が変異したためだ。そうかと思えば系統樹をずっとさかのぼった、より初期の種に由来するものもある。早産傾向もそのひとつで、これはほかの霊長類にはない特徴だ。哺乳類ではめったに見られない、オスの子育て参加をうながすためにそうなったのだと考えられる

p113.離乳後に新鮮なミルクを消化できる能力は、いわゆる白人人種であるコーカソイド(なかでも北欧人)と、サハラ砂漠南縁に暮らす一部の牧畜民にしかない事実だった。それ以外の人びとにとって、ミルクはやっかいな飲み物でしかなかったのだ。彼らが食べるのは、ミルクを加工したヨーグルトやチーズであり、飲むときは徹底的に加熱していた

p116.ジャブロンスキーとチャップリンは、人の肌色にこれほどバリエーションができた背景には、皮膚ガンよりむしろ2種類のビタミンの綱引きがあると考える。ビタミンB(葉酸)とビタミンD

p117.アフリカ人をはじめあらゆる人種で、女性と赤ん坊は肌色が薄い。女性は妊娠期から授乳期にかけて、カルシウムとビタミンDを大量に使う。伝統的な社会では、成人女性はそのどちらかの状態にあることがほとんどだったから、ビタミンD生成能力を高める必要があった

p117.博識を誇る生物学者ジャレド・ダイアモンドは、肌色が「場違い」な人びとは、それほど遠くない過去にかなり長距離の移住をしたのではないかと指摘する。たとえばアフリカ南部のバントゥー族の肌が黒いのは、数百年ほど前にアフリカ西部の赤道付近から移ってきたばかりだからだ。東南アジアのフィリピン人、カンボジア人、ヴェトナム人が緯度のわりに明るい色の肌をしているのも、彼らマレー系住民の起源は中国南部で、2000年ほど前にそれぞれの土地に移住したからである。これらの国にはネグリトと呼ばれる先住民族もいて、彼らは肌が浅黒い

p118.私たちは肌の色をもとに、近い祖先がどこに住んでいたかを推測する。ただし肌色が変化するスピードは、進化全体の流れからするとけたちがいに速い。現代ヨーロッパ人の祖先がいわゆる北欧に落ちついたのは最後の氷河期が終わってからで、ほんの1万年前のこと。スカンディナヴィア人の金髪碧眼は歴史がとても浅いのだ

p120.大きな脳。こうしてご先祖さまがたどりついた解決策、それは胎児が母親のおなかにいる期間を大幅に短縮することだった……本来ならば21か月必要なところが、9か月になった。ただこれには代償がともなった。生まれてくる赤ん坊が未熟で無力なのだ

p121.ヒトの赤ん坊はどれも同じような顔つきをしている。瞳の色も白人なら最初はみんなブルーだから、父親は邪推をしなくてすむ。ブラウンやグリーンに変わっていくのは大きくなってからだ。さらに念には念をということで、心理的な側面でも後押しする。新生児に接する機会があったら――できれば自分の子でないほうがいい――、周囲の人たちの感想に耳を傾けてみよう。カナダのマクマスター大学でマーティン・ダリーとサンドラ・ウィルソンが行った研究では、新生児と母親、母親の両親がいるところに父親が入ってくると、目・鼻・額・あご……がいかに父親似かという話題に急に切りかわるという。メキシコでの研究でも同様の結果が報告されていた。しかし正直なところ、どう見ても新生児に父親の面影などない。もちろん話すほうもそんなつもりはなくて、お父さんにこれからがんばってもらうための動機づけを提供しているのだ。それでいいのである。きっと

p123.鳥やチョウ、両生類は哺乳類と逆で、鳥の場合、卵を産むのはXY染色体を持つほうだ。派手な羽を見せびらかし、きれいな声で鳴き、なわばりを守るのにやっきになるのはXXなのである。混乱を避けるために専門家はW染色体、Z染色体と言いかえているが、哺乳類と正反対である事実は変わらない。こうなったのは偶然の産物で、性別の決めかたに「王道」があるわけではない。もっとすごい例もある。カメやワニは、卵がかえるときの周囲の気温で性別が決まる。しかもワニは暖かいとオス、涼しいとメスになるのに対し、カメはその逆。ミツバチのメスは染色体を2セット持っているが、オスは無精卵から生まれるので1セットだけ。サンゴ礁を住みかとするベラ科の魚は、社会的な状況で性別が決まる。生まれたときはみんなメスだが、オスがいないコミュニティでは、女ボス的な立場のメスがたちまちオスへと変身する。彼女(いや彼か?)が死ぬと、次にトップに立ったメスがオス化して子づくりに励むのだ。まさに「人生の転機」というやつだ。だが性別に関していちばん奇妙な生態を持つのは、地中海などに生息する長さ10センチほどのボネリムシだろう。卵から孵化した幼生の段階では、雌雄はまだ決まっていない。海中を漂い、岩などにくっついたところでメスになる。ところがメスのボネリムシに食べられた幼生は、メスの体内に定着してオスに変化し、そのまま一生をメスのなかですごすのだ

p125.1940年以降に発生した335種類の新病を分析したところ、発生頻度は年を追うごとに高まっていることがわかった。過去半世紀だけを見ても、新病の発生数は10年ごとに3-4倍に増えている。有名どころではMRSAなど抗生物質が効かない「スーパー細菌」、重症急性呼吸器症候群(SARS)、AIDS、薬剤耐性マラリアなどがある

p133.夫婦は男の子をほしがるという事実。農業の働き手が不可欠な地方では、この傾向がとりわけ顕著だ。胎児の性別調べが安上がりにできることも手伝って、胎児が女だと判明した夫婦は人工中絶を選んだ。それから20年弱の月日がたった現在、一人っ子政策がつくりだした時限爆弾がはっきりした形で姿を現している。中国の100大都市では、女性100人に対して男性125人といういびつな人口構成になっているのだ

p137.地球上に生物が登場してから5億年になるが、大規模な絶滅によって動物相が劇的に入れかわったのはおのときで5回目になる。大規模な絶滅は、だいたい6500万年ごとんい起きている。理由はいろいろだが、そのとき存在していた種の70-80%が突然姿を消す。大絶滅の間隔からすると、そろそろ6回目の波が迫っていてもおかしくない

p138.野生のオランウータンを見たいと思っている人は、いますぐ航空券を手配したほうがいい。彼らが生息するスマトラ島とボルネオ島は森林破壊のスピードがすさまじく、オランウータンの個体数も激減している。おそらく2015年には、野生のオランウータンは姿を消しているだろう

p144.動植物と同じように、言語もまた絶滅する。私たちはいま、言語の大消滅時代にいる。世界で話されている言語は7000弱で、そのうち少なくとも550は話者が100人に満たず(それも高齢者ばかりだ)、10-20年以内に消滅すると言われている。残りの言語も、次世紀が終わるまでに半数が消えている可能性がある

p150.私たちはいま特権的な時代を生きている。それは系統のなかで現存する唯一の種ということだ。実は人類600万年の歴史のなかで、そんんあ特異な時代がはじまってまだ1万年しかたっていない。それ以前はかならず複数、最高で6種類の人類が共存していた。すでに絶滅しているものの、現生人類よりはるかに長く存在した種はたくさんある。なかには手を伸ばせば届きそうなぐらい、現生人類の時代のすぐ近くまで生きていた仲間もいるのだ

p206.いま生きているなかで私たち人間にいちばん近い親戚は、まぎれもなく大型類人猿だ。つい20年ほど前まで、類人猿は外見の特徴から大きく2系統に分かれるとされていた。ひとつは現生人類とその祖先、もうひとつは大型類人猿4種(チンパンジー2種、ゴリラ、オランウータン)である。ところが遺伝子解析が導入されたことで、この分類が実は的はずれであることが判明した。系統が2つあるのはいっしょだが、ひとつはアフリカ類人猿(ヒト、チンパンジー2種、ゴリラ)で、もうひとつはアジア類人猿(オランウータン)という分けかたになった。進化の枝わかれを調べるとき、外見はかならずしも正しい手がかりにならないようだ

p207.そもそも私たちを人間たらしめているものは何なのか? その答えを探っていくと、他者の心を理解できる能力にどうしてもたどりついてしまう

p225.IQの平均値は100で、85-115までの範囲に全体の3分の2の人がおさまる。ディアリが1932年のIQ一斉テストのデータを分析したところ、社会階層と社会的剥奪のレベルを統計的に処理すると、11歳時点でのIQが1ポイント下がるごとに、77歳までに死ぬ可能性が1パーセント高くなることがわかった。正常とされる範囲内でも、たとえばIQ=85の人が77歳の誕生日をお祝いできる確率は、IQ=100の人より15%低くなるのだ

p226.エディンバラ大学の心理学者ティム・ベイツが250人以上を対象に調べたところ、IQと身体の対称性(指、手、耳の長さで比較した)には、小さいが無視できない関係があることがわかった。対称性は私たちが美しさを感じる要素のひとつだ。つまり美しい人は概して知能が高いと言える

p227.身長が高い人ほど社会的、経済的に成功するというのはまぎれもない事実だ――ウォール街でもイギリスの金融市場でも、背が高い人ほど、同じ仕事でも金を多く稼いでいる。同様のことがIQでも当てはまりそうだ。実際、IQと社会的成功の相関関係を示す研究がいくつか発表されている。ある研究は、アメリカのベビーブーム時代、正確には1957-64年生まれの人を長期的に追跡した。この年代は、第2次世界大戦後にやってきた出産ラッシュの末期に相当する。この研究では、IQが1ポイント高くなるごとに、年収は234-616ドル増えるという結果が出た(それがかならずしも生活の豊かさを反映しているわけではないが)。別の研究でも同様だったが、ここでは両親の社会的・経済的地位の影響もあることがわかった。親は慎重に選んだほうがいいということだが、もしそこで失敗しても、おつむのできさえ良ければ自力ではいあがることは可能である。傷口に塩を塗りこむような話で申し訳ないが、美しい人は裕福になれるだけでなく、子宝にも恵まれる。私がヴロツワフ大学のボグスワフ・パウウォフスキーと共同で、ポーランドの医療データベースを分析したところ、背の高い男性ほど既婚率が高く、子どもを持っている割合も多かった。これは進化的に適応度が高い、つまり種の遺伝子プールへの貢献度が高いことになる





google adsense

関連記事

no image

日垣隆「ラクをしないと成果は出ない」大和書房

20110719233440 つまらないことから撤退する。あらかじめ枠のある新聞、テレビの

記事を読む

no image

立花岳志「サラリーマンだけが知らない好きなことだけして食っていくための29の方法」大和書房

20140919235055 サラリーマンだけが知らない好きなことだけして食っていくための29の方

記事を読む

no image

日経産業新聞編「ウェブ2.0で稼ぐ!」日本経済新聞出版社

最初に書き留めておきたいのは、この本を読んでも決してウェブ2.0で稼ぐことはできないということだ

記事を読む

no image

久恒啓一「見晴らしを良くすれば仕事は絶対にうまくいく!」実業之友社

著者は昔、日本航空にいらっしゃったそうだ。個々の従業員は素晴らしい人も多いのに、どうしてこの会社は全

記事を読む

no image

普通であること/森博嗣「常識にとらわれない100の講義 」大和書房①

20130217011236 著者の本って、縁がなくて。これが初めての本。本業はフィクショ

記事を読む

no image

近藤勝重「書くことが思いつかない人のための文章教室」幻冬舎新書

20120208213420 スキル/テクニックを教える本を読むときは、意識して外枠から攻める。表

記事を読む

no image

八代尚宏「新自由主義の復権-日本経済はなぜ停滞しているのか-」中公新書

20120310184644 最近iTunes Uで法学の学際をテーマとした一連の講義を聴いた。そ

記事を読む

no image

改定・保育士養成講座編纂委員会編「改定・保育士養成講座2006第4巻 精神保健」全国社会福祉協議会

保育士試験受験シリーズ(5/11) この試験には悪問が多い。正答を予定せずに問題を作るという無計画な

記事を読む

斉藤賢爾「これでわかったビットコイン」太郎次郎社エディタス

20140615061107 これでわかったビットコイン: 生きのこる通貨の条件著者 : 斉藤賢爾

記事を読む

no image

横山秀夫「半落ち」講談社文庫

20140823142713 半落ち (講談社文庫)著者 : 横山秀夫講談社発売日 : 2005-

記事を読む

google adsense

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

google adsense

MediaPad M3 LTE プレミアムモデル購入して2か月

20170409130135 もう2か月が経ってしまったけど、記

Windows10アップグレード導入

20160307001116 2台のノートPCにつき、無料のWi

Nexus 6Pが届いた

20151105221617 無事に届いた。 海外荷物受付

Nexus 6Pが発送された

20151103103105 「発送しました」って内容のメールが

Nexus 6Pを発注した

20151031100625 それまでもネット経由でいろいろ調べ

→もっと見る

  • 名前:Max 年齢:人生の2合目くらい 誕生日:夏の暑い日 一言:他言無用ということでお願いします
  • あわせて読みたい
  • にほんブログ村 本ブログへ
PAGE TOP ↑