佐々木紀彦「米国製エリートは本当にすごいのか?」東洋経済新報社

公開日: : 最終更新日:2012/12/23 書評(書籍)



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著者のスタンフォード大学への留学記。に近い。留学にかこつけて、自分の歴史観などの思い入れの吐露も多い。まさに本人も言うところの、「海外留学して国粋的になったクチ」なのだろう。そういう意味での青い表現も多い

しかし、ほとんどすべてについて同意だ

討論のときは、前提となる知識はどんなに間違っていても討論の中での小さな合意を守り、集約させていくのであれば、例えば、そのように誘導できる指導者がいるのであれば、問題ない。何も話さないのは、討論としてはルール違反に近い。しかし、特に日本のエスタブリッシュメント企業においては、なるべく話さないほうがいい場合が多い。そうしないと自分が困るような場合にのみ、積極的に発言する、くらいでいい。どうせほかの人もしゃべらないのだから、合わせておけばいい

日米の学生、社会人でインプットの差が大きく異なるということには、まったくそのとおりだと思う。日本の学生、社会人の教養のなさ、その結果としての結論/判断の貧弱さというのは、経済社会でも政治でも多く見受ける

米国の大学にはカワイイ女の子が少ない。そのとおり。カワイイ女の子とはどこに行ったのか? いや彼の国には、もともと少ないのだと思っている

やっぱり教養というのは歴史を知っているということにほかならないのだと思った



p19.討論を重視するのは、米国の素晴らしい点ですが、しゃべることが先行しすぎて、基礎知識が疎かになっている学生が多いのはいただけません。米国人学生の多くはしゃべりの達人ですが、内容面で唸るような鋭い質問や発言に出くわすのはまれです。日本人は謙虚すぎですが、米国人は厚顔無恥すぎます

p27.先ほど「上澄みの学生は日米でさほど差はない」と書きましたが、全学生の平均値という点では、米国の一流大学のほうが断然上でしょう。その最大の理由は「米国の大学はインプットとアウトプットの量がとにかく多い」という点にあります。百本ノックのように、次から次に読書、レポート、プレゼンテーションの課題が降ってくるため、否が応にも知的筋力がつくのです

p31.つまるところ、日米の学生の差を生んでいるのは、インプット量、読書量の差なのです。米国のエリート学生は、大量の読書を強いられるため、平均値が高いのです

p34.とくに、私の知る範囲で、最も手際がよいのはロースクールの学生です。グループワークの際、ロースクールに通うチームメイトの仕事の速さには圧倒されました。一緒に会議をしていても、物事がサクサクと決まっていくので、気持ちがいい。東大法学部出身でも、仕事ができない人はいるでしょうが、米国の一流ロースクール出身で、仕事ができない人は少ないはずです。だからこそ、米国では会社側も、採用の際に学歴や大学の成績を重視するのでしょう

p35.最後に、私がスタンフォード大学で過ごした2年間で痛感したこと。それは「米国の大学生活は退屈である」ということです。そして、やや皮肉を込めていえば、この「勉強以外にすることがない」という環境こそが、米国の大学の強みだと思います

p36.より俗な話をすると、男の立場からすれば、カワイイ女の子が少ないから勉強に集中できるという面もあるのではないかと思いました。スタンフォードの女性の怒りを買いそうですが、2年間の留学生活で私がカワイイと思った女性は、わずか5人でした

p40.高学歴者が集う金融業界では、重役の多くは一流大学のMBA、法学博士、その他の博士号のいずれかを保有しています。これに比べれば、東大法学部を出るだけで出世コースに乗れる日本の学歴競争は、よくも悪くも、甘っちょろいのかもしれません

p44.ハーバード大学では、就職活動をしている学生のうち、卒業までに就職先が決まった学生は2010年で73%にすぎません。リーマンショックの影響をもろに受けた2009年にいたっては、わずか58%でした

p58.「日本人学生はすぐ日本人同士でつるむ」と日本でよくいわれますが、スタンフォードに来て以来、つるんでいる日本人に会ったことがありません。それは、日本人が成熟したからというより、つるもうと思っても、日本人が少なくなってつるめないからでしょうp61.日本人でもそうですが、むしろ海外生活を経験することで、自分の国を改めて強く意識し、西洋との距離感を見直すこともあります。かつて、夏目漱石も、岸田劉生も、近年では江藤淳も、留学から帰ってきて、むしろ国粋的な色彩を強めました

p66.日本と韓国に詳しい中国人の友人はこう言っていました。「日本人と韓国人について不思議に思うのは、あの労働時間の長さ。中国では、社長がテレビに出ると、いかに自分は働かずに、うまく仕事を部下に任せているかを自慢している。日本人のハードワークには感心するけれど、本当に集中して働いているのかは疑問」

p70.法学部がない米国で一番人気の学部はどこでしょうか。それは、経済学部です

p76.そもそも、金融界に多くの人材を輩出するハーバード大学のビジネススクールは、かつて軍の指導者を育てるための学校でした。軍幹部の中心的な任務は「限られた情報の中から、現状を正しく認識し、相手の出方を予測して手元の兵隊をうまく振り分ける」ことです

p81.名著『パワー・エリート 上・下』(鵜飼信成/綿貫譲治訳、東京大学出版会)で知られる社会学者のC・ライト・ミルズは、封建時代を経験していないことが、米国のエリート形成に決定的な影響を与えた、と指摘しています。封建時代を経験した日本やヨーロッパでは、貴族や武士が君臨し、商人を統治するという伝統が長く息づいています。それに対して、米国には上層ブルジョアジー(=経済エリート)をおさえつける貴族層が存在しませんでした。そのため、「経済エリート」は”敵対者をもたないブルジョアジー”となり、富だけでなく権力や名声をも手にすることになったのです。ミルズは、米国において、3代、4代にわたって富を保持したものは少ない、とも述べています。米国にも、貴族とまではいわなくても、欧州から渡ってきた旧上層階級は存在しました。そして過去、上層階級は成金と熾烈な争いを繰り広げました。南北戦争前後には、成金が旧上層を圧倒、1870年代-1920年代にかけて、旧上流は巻き返しを狙いましたが失敗し、成金の力が全国規模に広がりました。それ以来米国では、極端にいうと、財力があれば権力も名誉もすべて買うことができるようになったのです

p85.欧米とも日本とも違うのが、中国です。中国は完全な「政治エリート優位型」の国です。政治力をもつものが、富、権力、名声すべてを手に入れられるのです

p87.学生の就職活動に話を戻すと、金融・コンサル人気の理由は、「寄らば大樹の陰」的メンタリティと「給料の高さ」だけではありません。もう一つの理由は、「リスクヘッジ」です。つぶしが利くからです

p110.私が9年前、記者として初めに担当したのが自動車業界でした。1年半の担当期間の中で、最も印象に残った取材相手は、大手自動車会社ディーラーの社長です。千葉にその社長を訪ねた際、まず見せてくれたのが、分厚い千葉県の県史でした。社長いわく、「担当地域が決まったら、その県の歴史を徹底的に勉強する。そうすれば、県の特徴や県民性がわかり、販売戦略を立てやすくなる」。実際に彼は、その手法により、各地で結果を残していたのです

p112.米国の二面性を知る近道は、北部、南部という切り口から米国を見ることです。そのためには、北部と南部の違いを生んだ歴史を押さえておかなければなりません。「ラディカルな中道」を掲げるシンクタンク、ニューアメリカ財団で政策ディレクターを務めるマイケル・リンドの考察に基づいて、その違いを解読してみましょう。彼は大きく米国の文化を2つに分けています。一方が、北部カルチャーです。具体的には、英国の植民地であった時代に、米国北東部のニューイングランド地方(コネティカット州、ニューハンプシャー州、バーモント州、マサチューセッツ州、メイン州、ロードアイランド州)んい入植した人々が形づくったカルチャーです。それは”ヤンキー文化”と呼ばれ、17世紀の英国のピューリタニズムを原点としています。その特徴は、「道徳的な潔白さ」と「社会改革」。政党でいえば、初代財務長官アレキサンダー・ハミルトンを中心に結成したフェデラリスト党から始まり、ウィッグ党、(昔の)共和党、そして、現在の民主党へと引き継がれています。北部カルチャーの対抗軸となるのが、南部カルチャーです。その中心は、東部のバージニア州、南部のサウスカロライナ州、メキシコ湾岸地域(テキサス州、ルイジアナ州、ミシシッピ州、アラバマ州、フロリダ州)です。その主体となったのは、17世紀のピューリタン革命時に、クロムウェルによって追われた王党派たち。彼らがつくり出したのは、プランテーション(大規模農園)中心の経済からなる、階層的、伝統的、かつ、貴族的なカルチャーでした。政党でいえば、第3代大統領のトマス・ジェファーソンが創設した民主共和党から始まり、第7代大統領のアンドリュー・ジャクソン、ルーズベルト兄弟施政下の民主党、そして、現在の共和党へと連なっています。北部と南部で大きく異なったのは、米国への移住目的とビジョンでした。北部は、米国を”新たなエルサレム”として位置づけ、「完璧な共和国」を目指しました。「米国は世界の模範とならなければならない」「世界を救済しなくてはいけない」という使命感を強く抱いていたのです。それに対して、南部にとっての米国とは、「大英帝国の後継国」です。移植者にとっての最大の目的は、「手っ取り早く金持ちになること」であり、南部の新興財閥にとって重要だったのは、神の摂理ではなく、あくまで利益でした。一般的にいって、米国のエリート文化は、ニューイングランド地方を中心とする北部カルチャーによって形づくられており、大衆文化(たとえば、ロック、ジャズ、R&B、ラップ)やライフスタイルなどは、南部、西武のカルチャーから生み出されています。その理由としてリンドは、「ピューリタンの文化は読書を推奨するが、バージニアやケンタッキーでは、読書を重んじないこと」と「1970年代以降、リベラル派によって、南部の作家や知識人がエリート大学から追放されたこと」をあげています。北部・南部のカルチャーの違いは、政策面でもはっきりしています。貿易面では、北部の「保護主義」に対して、南部は「自由主義」。製造業をメインとする北部が、自国マーケットを閉ざして他国との競争を避けようとしたのに対し、農業をベースとする南部は、輸出先としての海外マーケットを欲したという構図です。外交面では、北部が「平和主義」かつ「孤立主義」なのに対し、南部は「強力な軍隊」と「タカ派的な外交政策」を志向しています。北部が、第2次世界大戦など大半の戦争に反対してきたのに対し、南部は、1798-1800年のフランスとの戦争からベトナム戦争に至るまで、一貫して戦争を支持してきました。その背後にあるのも、カルチャーの違いです。北部は、社会的な争いを解決する手段として、暴力に訴えることを嫌うのに対し、南部は、戦士としての名誉が傷つけられた場合、暴力に訴えることを認める文化がある、とリンドは指摘しています。もちろん、北部・南部のカルチャーの分析として、これらの二分法は単純化しすぎている面もありますが、こうした大まかな特徴を頭に入れておくことで、米国をより重層的に見ることができるようになります

p117.よく知られたことですが、米国には全国紙がありません。世界のインテリが読む『ニューヨークタイムズ』も、購読層はニューヨーク周辺や西海岸のカリフォルニアなどに偏っており、部数は100万部足らず。読売新聞の10分の1にすぎません。米国には2009年時点で、日刊紙が1387紙、日曜限定紙が911紙ありますが、そのすべてが地方紙なのです。評論家の山本七平は著書『日本人とアメリカ人』(祥伝社)の中で、米国の日系人記者に「なぜアメリカには全国紙がないのか」と質問しています。それに対する相手の答えは、単純に「広いから」。広ければ、州をまたいだ交流は少なくなりますし、毎日の生活に即した話題は地域ごとに千差万別です。各地の自然条件が違えば、なおさらそうでしょう。外交や国政など、全米各地に影響するテーマならまだしも、日々接する実用的なニュースのニーズは、州によってまちまちです。それゆえ、米国で全国紙は成り立たないのです。国土が狭く、かつ、人種的にも自然条件的にも文化的にも同質性の強い日本とは、この点が大きく違うのです

p119.近年米国では、周りを外壁(ゲイト)で囲み、一定の所得者層のみだけが住むコミュニティ、通称「ゲイテッドコミュニティ」が増えています。米国勢調査局によると、全世帯の約6%がゲイテッドコミュニティに住んでいるそうです。金持ちは塀で囲まれたゲイテッドソサエティで安全を買っているわけです

p120.米国の著名な歴史家でジョージ・メイスン大学教授のピーター・スターンズは、「なぜ歴史を勉強するのか」という論文の中で、「歴史は人間や社会がどう動くかを示す倉庫、実験室である。歴史教育を通じて、証拠を評価する能力、異なる解釈を評価する能力、そして、変革を把握する能力が鍛えられる」と述べています

p121.ジョージ・ケナン(ソ連の封じ込め戦略の策定者)「単純かつ自然な状態における人間の本性を知る唯一の方法は、歴史の学習である」、マーク・トウェインの「歴史は繰り返さないが、循環する」

p128.まず、保守派の愛国心は”過去志向”です。彼らは、愛国心とは偉大なる過去からの継承であると考えます。「われわれは祖先の行いを尊重すべきであり、過去を尊重しないことは、自分自身をも否定することになる」というのが基本スタンスです。他方、リベラル派の愛国心は”未来志向”です。彼らは、過去は尊敬するものではなく、乗り越えるべきものであると考えます。「国を愛するということは、今の現実と、米国という国の理想(民主主義、平等、法の支配)とのギャップを埋めるために闘うことである」というのがその心構えです

p145.のちにマクナマラは1995年に記した回想録で、米国側の判断ミスを生んだ理由として、ベトナムの歴史や文化や政治、そして、ベトナム側のリーダーの性格や習慣を完全に無視した点をあげ、もっとベトナム側の立場にたって物事を考えるべきであったと、振り返っています。彼の回想録や、ベトナム戦争を振り返った発言は、自己弁護という面も強いですが、それでも無言を貫くことに比べれば随分ましです。翻って日本では、失敗の片棒をかついだ人間が、その教訓を後世に残すという責任から逃げることが多すぎます。典型例が、山崎豊子の小説『不毛地帯』のモデルになった瀬島龍三です。太平洋戦争時に大本営作戦参謀を務めた彼は、敗戦の教訓を語るべき最高の立場にありながら、伊藤忠商事会長に上り詰めるまでの成功伝ばかりを語り、都合の悪い話には口を開かぬまま鬼籍に入りました。歴史に対する責任を放棄したといっても過言ではありません

p153.実際のところ、各民族の間で盛んに交流があるかというと、私の経験ではどうもそうではありません。むしろ「スタンフォードという大きい町の中に、米国村、韓国村、中国村といった民族別の村が多数存在する」といったほうが実態に近いと感じます。まずもって、大半の米国人学生は、留学生に興味がありません。これは、彼らの立場であれば無理もない話です。ビジネススクールの日本人の友人も、「米国人の学生にとって、留学生との交流は優先順位が低い」といっていました。高い学費を払いながら、激烈な競争に身をさらしているのに、さして目先の得にもならない異文化交流に励む時間はない、と思うのは自然です。米国の大学の最大の目的は、米国人のエリートを育てることです。留学生は、内向きになりがちな米国人学生に、自国にいながら国際経験を積ませるための脇役です

p161.欧米社会において、戦略構築を担うのは、政治、経済、法律、安全保障、歴史などを総合的に学んだ人間です。英国がその典型で、英国のトニー・ブレア、デヴィッド・キャメロンはともに、オックスフォード大学でPPE(政治学・哲学・経済学)を専攻しています。ウィンストン・チャーチルもかつては歴史家を目指したほどの歴史通です。国の経営者たる地位に就く人間自身が、一流の専門家である必要はありません。大事なのは、経済、安全保障、政治、歴史を深く理解した上でビジョンを示し、各分野の一流の専門家たちを使いこなす能力です

p168.池田勇人の秘書を務めた伊藤昌哉はこんなエピソードを残しています。1962年秋、ロンドンでマクミラン首相と会った後、池田は伊藤に「日本に軍事力があったらなあ。俺の発言権はおそらく今日のそれに10倍したろう」と語ったといいます。そしてその数カ月後に池田は信濃町の私邸で「日本は宦官のようなものだ。キンタマを抜かれた男というところか……」とこぼしています。またタイム・ライフ編集局長が「池田総理は、軍事的解決と、政治的・経済的解決のいずれを重要と考えますか」と質問したときには、「文句なしに軍事的解決です」と答えています。池田は外交の舞台において、自分の国を自分で守れず、経済力だけを追求する、日本という国の限界を痛いほど感じていたのです

p200.いまだに、「日英同盟が破棄されていなければ、日本は米国と戦争をせずにすんだ」との声は根強く聞かれます。チャーチルも戦後、岸信介との対談において日英同盟の破棄は失敗だったと吐露しています。「日英同盟を破棄したことはイギリス外交の大きな失敗です。あれが存続しておったら、こんどの世界大戦の様相も非常に変ったろう。しかし当時のアメリカがその廃棄を強く迫ったのでやむをえなかったけれども、やはりイギリス外交の誤りでありました」 当時の米国は日米同盟を隠れ蓑として日本が拡張政策をとることをおそれていました。英国側は、政権中枢の多くは日英同盟継続を指示していましたが、米国を味方に引き入れたほうがアジアの軍事バランスを有利に保てるとの判断から、米国の要求を聞き入れたのです。一方の日本側も、同盟の重要性を十分に認識しておらず、同盟継続のための努力が十分ではありませんでした

p203.米国人が国際政治を語るとき「インスティチューショナライズ(制度化する)」という言葉が頻繁に出てきます。どういうふうに制度をつくれば、世界がうまくまとまるか、米国の国益を最大化できるか、つまりは、”世界統治のビジネスモデル”を常に考えているのです。制度ばかりにこだわる姿勢には、システム万能論的な危うさを感じることもありますが、何らかのアイディアを優れたルール、仕組みに落とし込むことへの執着心には頭が下がります。こうした思考パターンや技術は、今の日本人に最も欠如しているものです。これは政治に限らず、ビジネスでも何にでも当てはまることです。山本七平は、著書『日本人とアメリカ人』(祥伝社)の中で、日本人のファッションデザイナーに共通した欠陥についてのエピソードを紹介しています。彼がニューヨークで会った有名な日本人のファッションデザイナーは、日本のデザイナーが成功できない理由を語っています。「若い方は、本当にいいアイデアをお持ちなんです。しかし、アイデアは浮かぶもので、それを浮かべるのが仕事ではございませんでしょう。アイデアを構成するのが仕事でございますわね。一つのアイデアを製品として構成するにはどうしたらよいか、それが生みの苦しみで、その間のあらゆる障害を排除することが仕事でございましょう。それが全然、理解できず、アイデアをもっているから自分はデザイナーだと思い込んでいる方がございましてね」

p204.彼女いわく、米国は「新しいアイデアを構成に移すことだけでやってきた国」であり、何らかのアイディアを、具体的な仕組みに落とし込むスキルは卓越しています。その昔、サンフランシスコに旅行した勝海舟が感動したのも、米国の技術ではなく、そのシステムでした。選挙や民主主義といった優れたシステムを構想したからこそ、勝は建国の祖であるジョージ・ワシントンを深く尊敬したのです

p204.吉田茂は、日本の戦後処理を担当した米国人のニュー・ディーラー(ニューディール政策を主導したリベラル派)たちについてこう語っています。「彼らは、古い政治構造を破壊し、徹底的な社会改革を行うことが日本人の生活にどんな影響を与えるかについても単純に楽観的であった。彼らのなかでニュー・ディーラーはその典型であり、計画や理念を重んじ、その実行に努力を集中して、それが日本の実情に合致して、よい結果をあげうるかどうかは、あまり意にかいしないようであった。のみならず、日本政府側の担当責任者が改革実施上にいろいろ進言忠告を試みることは、たとえ計画推進を円滑もしくは有利にしようとするものでも、しばしば占領行政に対する抵抗として受け取られ、ときには妨害と解された場合さえあった。どうもアメリカ人は理想に走り、相手方の感情を軽視しがちである。机上で理想的なプランをたて、それがよいと決まると、しゃにむにこれを相手に押しつける。相手がそれをこばんだり、よろこばなかったりすると怒る。善意ではあるが、同時に相手の気持ちとか歴史、伝統などというものをとかく無視してしまう」

p214.社会全体の仕組みという点では、日本はまだまだ米国に学ぶ必要があります。しかしながら、日常生活のレベルや文化の面で、感動することはほとんどありません。日本のほうが、サービスの質や便利さでは断然進んでいますし、米国の文化を学ぶよりも日本の歴史や文化を深掘りするほうが面白い。留学中、40代の経営コンサルタントの方から「米国での日常生活を通して、これを日本に輸入したら、流行ると思ったビジネスはありますか」と尋ねられたことがあったのですが、まったく答えが思いつきませんでした

p215.「米国への留学生を増やさなければ」といった懸念の声をヨーロッパ人から、ついぞ聞いたことがありません。ヨーロッパからの留学生と話すと、東欧圏から来た人間は米国に残りたがりますが、西欧圏の学生は「ヨーロッパの生活のほうが楽しい。早く帰りたい」という反応が多数派です。日本人の若者は、ある意味、ヨーロッパの若者のようになってきているのでしょう





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