ダニエル・ピンク「ハイコンセプト」三笠書房

公開日: : 書評(書籍), 大前研一, デザイン



20121014112137





ちょっと古い本だけど、早く読んでおけばよかった。評価の高い本だけのことはある

分厚くて事例たっぷりのアメリカの啓発書っぽさはある。しかし、無駄に冗長なところはなく、よく構成されていて、かつ、平易な内容なので、読むのに苦労はない

同じ著者の本を、前にも読んでいる。ダニエル・ピンク「フリーエージェント社会の到来」ダイヤモンド社。それよりもよかった

気づきが多い一冊。冒頭の大前研一のコメントは結果としては大仰ではないと思った

人間以外の機械、蒸気機関からコンピュータまで、そういうもので代替が不可能なもの。デザイン、物語、調和、共感、遊び、生きがいの6つが、ハイ・コンセプトでハイ・タッチな「6つのセンス」であり、それこそが、新しい時代に必要不可欠な感性だ

電気照明の時代にロウソクを買う人たち、おもしろい人物、ホモ・ルーデンス

各項において、おすすめの行動様式がまとめられているのが参考になる。デザインに関するウェブページのお薦めのいくつかは、ブログをRSS購読するようになった。ラフター・ヨガはいちど試してみたいと思った。またクラシックで聞く分野も広げる候補が増えた



p78.電気照明は一世紀前には非常に珍しいものだったが、今ではごく当たり前のものである。電球は安い。電気はどこにでもある。ロウソク? 誰がロウソクを使うのだろう? しかし、使う人はたくさんいるらしい。アメリカでは、ロウソクは年間24億ドル(3000億円弱)規模のビジネスである。照明用という論理的な必要性を超えたところに、最近の豊かな国々で見られるようになった「美しさや超越への欲求」があるからだ

p81.GEインドの最高経営責任者が、ロンドンの『フィナンシャル・タイムズ』紙に次のように語っている。「アメリカ、イギリス、オーストラリアなど、英語圏市場で行われている仕事なら、何だってインドでやれますよ。唯一、それを妨げるのは、(使う側の)想像力ですね」実際、想像力を働かせた結果、コンピュータ・プログラマーに限らず、幅広い職種の仕事がインドで行われるようになってきた。リーマン・ブラザース、モルガン・スタンレー、JPモルガン・チェースなどの金融サービス業は、企業会計や財務分析などをインド人MBA取得者に委託している。ロイター通信社では、金融情報サービスの簡単な編集業務を外注するようになった。こうして、アメリカ人のために所得申告を行う公認会計士やアメリカ国内の訴訟について判例検索をする弁護士、アメリカの病院から委託されてCATスキャンの画像を読む放射線専門医が、インド各地で見られるようになったのだ。だが、これはインドに限ったことではない。あらゆる種類の左脳主導型ホワイトカラーの仕事が諸外国へ移行しつつある

p91.20世紀には、人間の肉体的な力は機械に代用させることができると証明された。そして21世紀になり、新しいテクノロジーを人間の左脳の代わりに使用できることが証明されつつある。マネジメントに関する権威であるトム・ピーターズは、このことを見事に表現している。ホワイトカラー労働者にとって、「ソフトウェアは思考のフォークリフトである」というのだ。ソフトウェアにより、左脳型の仕事のすべてなくなるわけではないが、多くの仕事はソフトウェアに取って代わられ、それ以外の仕事の形態も変化していく。だから、ルーチン化された仕事、つまり、一連の規定作業や反復的手順に分割できる仕事は、コンピュータに取って代わられる可能性が高いのだ

p102.「左脳主導思考」はこれからも不可欠なものだ。ただ、それだけでは十分ではない、と言っているのである。「コンセプトの時代」においては、新しい全体思考が必要なのだ

p115.ゴールマンとヘイ・グループが共同で行った調査結果によると、組織内で最も優れたリーダーとされる人たちには、「おもしろい人物」が多いという(「愉快で楽しい人」という意味であって、「変わった人」ではない)。「おもしろい」リーダーたちは、普通の管理職と比べて、3倍もよく笑うらしい

p120.ハイ・コンセプトでハイ・タッチな「6つのセンス」こそが、新しい時代に必要不可欠な感性だという答えを導き出したのである。私はこれら6つの資質を「6つのセンス」と呼ぶことにした。デザイン、物語、調和、共感、遊び、生きがいの6つだ

p129.家具デザイナーなら、まっすぐに立って、それ自体の重みを支えられるテーブルを作らなければならない(実用性)が、同時に機能性を超えた美的アピールを備えたものにする必要があるのだ(有意性)。「実用性」のほうは「左脳主導思考」に近く、「有意性」は「右脳主導思考」に近い。今日、「実用性」の価値は広く認められ、安価に、比較的容易に実現できるようになった。そのおかげで「有意性」の価値も高まってきたのである

p140.アメリカ国務省は、長年使用してきたカーリア・ニュー12の書体の使用をやめ、新たにタイムズ・ニュー・ロマン14を標準の書体としてすべての書類で使用すると、2004年に発表した。この変更の理由を説明する内部文書には、タイムズ・ニュー・ロマンは、「紙面に占める大きさがカーリア・ニュー12と変わらない上、鮮明で引き締まった文字であり、より現代的に見える」とある。変更そのもの以上に驚くべきことは、国務省内のすべての人が、そのメモの意味を理解できたということだ。ひと昔前なら、とうてい理解の範囲を超えていたに違いない

p153.「実用的なものが美しいというのは間違っている。美しいものこそ実用的なのだ。美しさは、よりよい生活や考えかたを私たちにもたらしてくれる」家具デザイナー、アンナ・カステッリ・フェリエーリ

p170.事実というのは、誰にでも瞬時にアクセスできるようになると、一つひとつの事実の価値は低くなってしまうものなのだ。そこで、それらの事実を「文脈」に取り入れ、「感情的インパクト」を相手に伝える能力が、ますます重要になってくるのだ。そして、この「感情によって豊かになった文脈」こそ、物を語る能力の本質なのである

p178.「組織的ストーリーテリング」の目的は、組織の壁の中に存在する物語を認識し、それらの物語を組織としての目標追求のために活かしていくことである。この運動の発起人の一人であるスティーブ・デニングは、シドニーで弁護士としてキャリアをスタートし、後に世界銀行の中級経営幹部になったオーストラリア人である。「私は左脳型人間だった。大きな組織というのはこういうタイプの人間が好きなんだ」と、彼は語っている。あるとき、世界銀行で大改革が行われ、彼は好きな仕事を失い、世界銀行におけるシベリアのような部門に左遷させられてしまった。その部署は「ナレッジ・マネジメント(知識管理)」と呼ばれ、企業が抱える膨大な情報や経験を系統立ててまとめるところだった。デニングはそこの長となったのである。そして、最初はしぶしぶではあったが、改革を始めた(「英雄の旅」に似ていると思わないだろうか?)世界銀行にある「情報」とは何なのか、すなわち、どのような知識を管理しなければならないのかを理解しようと努めるうちに、デニングは、銀行の公式書類や報告書を読むよりも、カフェテリアで人々と話をしたほうが多くを知ることができることに気づいたのである。組織の情報は、「組織内で語られる物語の中にある」ことがわかったのだ。つまり、真に銀行の情報を管理する責任者になるには、25年の間に身につけてきた「左脳主導型」の弁護士的なアプローチを超えた考え方をする必要があったのである。そこで、彼は、知識情報を物語の中に込め、物語の形で伝達することにした。そして、そのようなアプローチを用いた先駆者として、世界銀行を「ナレッジ・マネジメント」のリーダー的存在にしたのである

p180.ゼロックスでは、修理部門の社員がマニュアルからではなく、他の社員と話を交わすことで機械の修理を学んでいくことを知り、社員が持つ「物語」をデータベース「ユーレカ(何かを発見したときに叫ぶことば)」としてまとめた。このデータベースは同社にとって、1億ドルの価値があると『フォーチュン』誌は推定している

p184.私はそれぞれのボトルを見た。2本のラベルにはワインにつきものの客の気を引く形容詞がずらりと並んでいた。だが、1本だけ、”2Brothers”の”Big Tatto Red”には、こんな物語が書かれていたのである

p220.豊かな時代には、斬新で人を惹きつけるものを考案し創造できる人が、最も多額の報酬を得ることができる。だからこそ、比喩を作れる能力が不可欠なのだ

p248.左脳半球に損傷があり、言語の理解や発話の能力が劣る「失語症」の患者は、とても上手に嘘を見抜くことができる。エトコフは、失語症患者は、相手の表情から70%以上の確率で嘘を見破ることを突き止めた。それは、言語というコミュニケーション手段の一つに頼ることができないために、より表現力豊かな手段で相手を理解する能力が研ぎ澄まされたからである

p253.うわべだけの笑顔の場合には大頬骨筋しか動かない。人は筋肉をコントロールできても、周辺の眼窩筋はコントロールできないからだ。後者は無意識のうちに収縮し、実際に楽しい思いをしたときにしか動かない

p256.医療の仕事の多くが標準化されている。つまり、さまざまな病気の診断や治療に繰り返し使える、決まった手順の集まりになっているのだ。このような医療の形を「料理本医療」と呼んで避難する医師もいるが、この手法には長所もたくさんある。規則に基づく医療は何百、時には何千という症例が積み上げられたものだからだ。そのおかげで、医療の専門家たちは、患者ごとに新たな治療方法をひねり出さなくてもすむ。しかし、実際には、このような仕事の一部はコンピュータでもできるのである。コンピュータにできないこと――人間関係になるとコンピュータは「手も足も出ない」のを覚えておられるだろうか――とは、人と共感することなのだ。医療分野では「共感」は強い力になる

p260.最近、オーストラリアの情報技術会社のマネージャーたちに行った調査によると、90%が「自分の子どもには、ソフトウェア・エンジニアリングという左脳思考寄りの職業にはついてほしくない」と答えたという。では、親たちは代わりにどんな職業を勧めたいのか? 「子どもが看護師を目指してくれたら嬉しいですね」「国内でも海外でも、世界中で需要のある仕事ですから」

p276.ブリティッシュ・エアウェイズでは、専任の「企業内道化師」まで雇い、同社の航空路線に「楽しさのセンス」をさらに吹き込もうとしている。他の5つのセンスと同様、「遊び」もこれまでは軽視されがちだったが、今は陰から飛び出し、スポットライトを浴びるようになっている。「ホモ・ルーデンス(遊ぶ人)」は「ホモ・サピエンス(考える人)」と同じくらい効果的に仕事をこなせることが証明されつつあるのだ

p279.大佐は、この計画を国防総省の幹部たちに説明した。彼らも人員不足には頭をかかえていたので、どんなことでもやってみようという空気があった。こうして国防総省から十分な予算を得たウォーディンスキー大佐は、軍隊生活の実態を伝えつつ、やる気にさせる、魅力的なゲームの開発に着手したのである。それから1年かけて、海軍大学院の学生たちによるチームは、プログラマーや芸術家の助けを借りながら『America’s Army』を作り上げ、2002年7月4日にウェブサイトGoArmy.com上で無料で公開した。公開後、最初の週末にはアクセスが殺到し、陸軍のサーバーがクラッシュしたほどだ。今では、ディスクでの配布もされていて、徴兵事務所やゲームマガジンなどで入手できる。現在、200万人以上の登録ユーザーがいる。通常の週末には、およそ50万人がコンピュータの前に座り、陸軍作戦のシミュレーションに興じている

p284.実際、数々の調査結果の積み重ねにより、テレビゲームをすることで、「コンセプトの時代」に不可欠なスキルの多くに磨きがかかることがわかってきた。たとえば、2003年に『ネイチャー』誌に掲載された重要な研究発表では、テレビゲームをするとたくさんの利点を得られることがわかった、と述べられている。視覚認知のテストでは、ゲームをする人のほうが、しない人よりも30%も高い得点を取った。テレビゲームをすることで、周囲の状況の変化を察知する能力や、情報を同時に処理する能力が向上するのだという

p298.彼はヨガの先生をしている妻に、笑いを生み出すエクササイズを創作できないかともちかけた。そして、「ヨガの呼吸法と笑いを組み合わせて、『笑いヨガ』にしてみたらどうだろう」という結論に達したのだ。こうしてこの運動が生まれた。「もし、私が医者でなければ、みんな私のことを笑いものにしただろうね」と、カタリアは言う。そう考えるといつも笑ってしまうのだそうだ。そして彼は、目を閉じ、頭を後ろに反らせて笑った

p300.小さな子どもは本当にユーモアを理解しているわけではないが、それでも赤ちゃんのころからよく笑う、とカタリア医師は指摘する。実際、一般に、子どもは一日に何百回と笑うが、大人はせいぜい10回程度だと言われている。彼によれは、グループになって「笑いヨガ」をすることで、大人の「条件つき幸福」を子どもの「無条件の喜び」へ変えることができるらしい

p313.フランクルは収容所における自らの体験だけでなく、他の捕虜たちの経験や精神状態を記述し、捕らえられる前から書いていた理論を練り上げていった。彼は「人間のおもな関心事とは、喜びを得ることでも、痛みを避けることでもなく、自らの人生に意義を見出すことなのである」と言う。私たちの根底をなす活力、人間を動かす「動機」というエンジンは、「生きがいを追求すること」にある。ギリシャ語で意義を示す「ロゴス」から「ロゴセラピー」と呼ばれるフランクルのアプローチは、急速に心理療法の世界で影響力を及ぼす動きになった。フランクルらは想像を絶するほどひどい強制収容所の中でさえも、意義と目的を見出そうと努めていた(これは私が好きな一節である。「もうこの世には何も残っていない人間でも、愛する人に思いを馳せることで、ほんの一瞬ではあるが至福を味わうことができる」)

p319.ダライ・ラマはこう語った。「科学と仏教はとてもよく似ています。なぜなら、どちらもリアリティの本質を探ろうとしているからです。そして、どちらも、人類の苦しみを軽減することを目標としているのです」





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