ポール グレアム Paul Graham「ハッカーと画家」オーム社

公開日: : 書評(書籍), ブランド, デザイン



20130128225245





コンピュータ関係の仕事に関係するならば読んでおかなければと思ったのがきっかけ。こういう刺激的な本にいつも出会いたい。最近はハズレばかりという気がしている

ルールを破る人が大事だということ。なかなか政治的に正しい考えではないな。また、次世代技術は外部の人間により作られるというのも興味深い

コンピュータと画家という一見無関係なことを上手く説明していたり、こういう慧眼が多く読み取れるのがこの本だ



p14.ジョン・ ナッシュはノーバート・ウィーナーを崇拝するあまり、廊下を歩くときに壁を触るという癖を真似していた

p28.ソフトウェアがプロダクトマネージャたちによって設計されるような大企業とデザインで勝負する方法を見つければ、彼らは絶対あなたには勝てない。でもそういう機会を見つけるのは簡単ではない。大企業デザインで勝負の土俵に引っ張り出すのは、城の中にいる相手に一対一の勝負に応じさせるのと同じくらい難しい。例えばマイクロソフトのWordより良いワードプロセッサを書くのはたいして難しくないだろう。でも独占OSの城の中にいる彼らは、おそらくあなたがそれを書いたことに気づきさえしないだろう。デザインで勝負に打って出るべき場所は、誰も要塞を築いていない新しいマーケットだ。そこでなら、デザインに大胆なアプローチを採り入れ、そして同一人物がデザインと実装を受け持つことで、大きく勝つことができる。マイクロソフトだって最初はそこから始まったんだ。アップルもそうだし、ヒューレットパッカードもそうだ。おそらくどの成功したベンチャー企業もそうだと思う

p41.ガリレイが、パドゥアの人々は身長が3メートルあると言っていれば、害のない奇人だと思われていただろう。だが地球が太陽の周りを回っているということは別問題だ。それによって人々がものを考え始めるようになることを、協会は知っていた

p44.例えば、 「政治的に正しい」言葉づかいの波が最高潮に達した1990年代初めのころ、ハーバード大学では教授と職員に対してパンフレットが配られた。その中に、他の諸注意に混じって、同僚や学生の服装を褒めることは不適切であると書かれていた。もう「 いいシャツだね」って言っちゃいけないんだってさ。こんな規則は、世界の様々な過去や現在の文化の中でも、非常に珍しいものだろうと思う。人の服装を褒めることは逆に礼儀正しいことと考えられている文化のほうが多いだろう。したがって、これはおそらく、未来からの旅行者が行き先を1992年のマサチューセッツ州ケンブリッジに定めた場合に避けたほうがいいタブーの例になるのだろう

p55.醜い解答と、独創的な解答には、共通点がある。両方とも、ルールを破っているということだ。そして実際、ルール破りの単なる醜いやり方(ガムテープでオートバイのどこかを修繕しておくとかね)と、ルール破りの素晴らしい独創性(ユークリッド空間を捨て去るとかね)とは、ひと続きのスペクトルの両端にある

p57.事実、コンピュータと次世代技術を見てみると、外部の人間により作られたもののほうが多いくらいなんだ。 1977年には、 IBM内部から次世代のビジネスコンピュータが生まれるとは誰もが疑わなかった。だが、違った。次世代のビジネスコンピュータは、まったく別の場所から現れた。 ロスアルトスのガレージで、共にスティーブという名の2人の長髪の若者が創り出したんだ。それと同じころ、同様の力が、次世代のオペレーティングシステムとなるべきMulticsに注がれていた。ただ、 Multicsは複雑過ぎると考えた2人の若者が、自分たちのOSを書いて、 Multicsを茶化した名前を付けた。それがUnixだ

p60.私たちの国を築いた人々が、国を率いる人々について語った言葉は、むしろハッカーに似ている。ジェファーソンはこう書いている。「政府への反抗の精神は、ある種の状況では非常に価値のあるものだ。だから私は、そのような精神が常に保たれることを望む」 今日のアメリカ大統領がそういうことを言うと想像できるかい。年老いたおばあさんの忠告のように、国の創始者たちの言葉を聞いて、自信のない後継者たちは自らを恥じてきた。これらの言葉は、私たちはどこから来たのかを思い出させる。ルールを破る人々が、アメリカの富と力の源だということを

p72.ユーザからのバグ報告が上がって来て1分もたたないうちに、サポートスタッフはプログラマの横に立っていて、プログラマが「あちゃー、君の言う通りだ。これはバグだね」というせりふを聞いている。ハッカーから「君の言う通りだ」と聞くことを、サポートスタッフは大いに喜んだ。彼らの以前の経験では、バグをプログラマのところに報告しに行くと、まるで猫が殺したての鼠をくわえてきたかのような顔をされていたのだ。このことによって、サポート要員はバグの重大性についてより注意深くなった。自分の名誉がかかっているわけだから

p82.どうしてデスクトップコンピュータが台頭したんだろう。私の考えは、デスクトップのほうにより良いソフトウェアがあったからだ。そしてマイクロコンピュータのソフトウェアのほうが良かった理由は、小さな会社がそれを書くことが可能だったからだ

p93.ベンチャー企業は通常、新しい技術と関連がある。だから「ハイテクベンチャー」というのは冗長な言い回しとも言える。ベンチャー企業とは、困難な技術的問題に挑戦する小さな企業だ

p95. IBMがこの過ちを犯していなくても、マイクロソフトはまあまあ成功した企業になっていただろうが、こんなにはやくは大きくはなっていなかっただろう。ビル・ゲイツは裕福になっていただろうけれど、多分Forbes 400の下のほうに、同年代の起業家と一緒に並んでいたんじゃないかと思う

p110.実質的に、買収しようとしている企業は、顧客こそが一番の技術を知っていると仮定していることになる。これはそれほどおかしな考えではない。ユーザはあなたが富を創り出したことの唯一の現実的な証明だからだ。富は人々が欲しがるものであり、人々があなたのソフトウェアを使っていないのなら、それはマーケティングが下手なだけじゃないかもしれない。それは、あなたが作ったものは人々が欲しがるものではなかったということなのかもしれないんだ

p123.ブランドは唯一、技術で安価にできないものだ。現在、ブランドのことをしょっちゅう耳にするようになったのはそのせいだ。裕福な者と貧しい者の物質的な差が消滅して、ブランドだけが残されているんだ。でも自分の物にどんなラベルが付いているかなんて、それを持つことと持たないこととの差に比べれば取るに足らないことじゃないか

p124.物質的にも社会的にも、技術は富める者と貧しい者の格差を拡げるのではなく縮めている。レーニンがYahoo!やIntelやCiscoのオフィスを見学したら、社会主義は勝ったと考えただろうね。だって全員が同じ服を着て、同じような調度を備えてオフィス(というよりブース)で仕事し、お互いを尊称ではなく名前で呼び合っている。すべてがまさに彼が予想した通りではないか。ただ、銀行の口座を見たらびっくりするだろうけどね。技術が格差を拡大するとしたら、それは問題だろうか。今のところ、そのようには思えない。収入の格差が拡がっても他の多くの格差が縮まっているからだ





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