佐藤優「サバイバル宗教論」文春新書

公開日: : 書評(書籍), 佐藤優



20140712165447
普段は接しないようなことを言うという価値が、著者にはあると思う。日米同盟なのにロシアからの見方をするとか、現代なのに宗教から見方をするとか、日本を沖縄から見るとか、イスラムの話とか。
普段は接しないというのは、普通のマスコミが言わないこと、とも言い換えられると思う。テレビは論外として紙面も事実報道だけで解説が拙いとか。
また、各地の文化と融合したキリスト教があるという話は興味深かった。

p19.父親自身は銀行に勤めていたのに、銀行員にも絶対なるなと言っていました。父親は、銀行の文化というのを非常に嫌っていました。
p28.通常の学問では、論理、整合性が高い方、理屈が通っている方が論争に勝つんですが、神学論争では常に論理的に弱い方、無茶なことを言う方が勝ちます。その勝ち方というのは狡猾で、軍隊が介入して弾圧を加えるとか、政治的圧力を加えるという形で問題を解決するんです。つまり、神学は非常に強く政治と結びついています。
p33.魚木先生は、純粋なキリスト教など存在しないと言っています。キリスト教というのは、それぞれの地域の文化に触発されて類型をつくってきたというのです。最初にパレスチナにあったキリスト教はユダヤ類型、その次にパウロによって広がったキリスト教はギリシャ類型、そして、カトリックになってラテン類型、その後、宗教改革によって、ゲルマン類型であるとか、アングロサクソン類型であるとか、あるいはロシア類型、スラヴ類型というものが生まれてくる。そして、19世紀以降に出てきたものとして、日本類型というのがある。
p54.イスラエルは核を保有しています。それと同時に、「全世界に同情されながら死に絶えるよりも、全世界を敵に回してでも戦い、生き残りを試みる」というのがイスラエルの国是です。もしイランが確実に核能力を持つということになれば、イスラエルは先制攻撃をするでしょう。
p75.イギリスのサッチャーさんがサウジアラビアを公式訪問し、ファハド国王と会談したことがありますが、そもそも女性がこんなことをするのは、ワッハーブ派の原理からするとおかしいはずなんです。実は、イスラームのジェンダー論というのは、一人の人間の中に男の要素と女の要素があると考えます。そこで、イスラーム教の宗教評議会は、サッチャーさんの過去の行動をいろいろと分析して、見た目は女性であるけれども、明らかに男性であるという認定のもとで受け入れたのです。
p76.ロンドンにある「結婚あっせん所」は、イスラームの宗教人が経営していいます。それで、写真を見せて、「はい、この娘は結婚時間2時間、慰謝料は3万円」と。これを「時間結婚」と言います。イスラーム教では4人まで結婚できますから、金持ちが3人と結婚して、4人目はあけておいて、時間結婚をやるわけです。ですから、600回結婚したとか、700回結婚したという人がたくさんいます。
p85.キリスト教会も、日本人の霊性を反映したあり方をしています。不思議なことに、死んで7日目に記念会というのがあって、49日目にも記念会をよくやります。「初七日」とか「四十九日」という発想は、キリスト教からはどうひねっても出てこないはずなのですが。
p88.ここにおられる僧職についている皆さんは、大変な訓練を受けています。前回の講座で、私が一番感銘を受けたのは、皆さんが笑わないということです。それから、びっくりした声もださない。
p95.ウクライナ、ベラルーシ、あるいはロシアの西部でかつてナチスドイツに占領された地域に行きますと、「ここでファシストによる惨殺が行われた」という碑がたくさんあります。その犠牲者のほとんどはユダヤ人です。しかし、ユダヤ人虐殺とは書かなかった。実は、ソ連の中にもナチスと相通じるような反ユダヤ主義があったことを隠したいからです。その雰囲気を淡々とグロスマンは書いています。
p97.日本人が物事を真剣に考えていくと、最終的には必ず西田幾多郎、田辺元たちを始めとする京都学派の発想になってきます。
p102.啓蒙の思想というのは理性を基本にしています。理性とはもともと「ratio」とか「rate」と言い、「分割」、「計算」という意味です。市場経済というのは、まさにこの理性の思想から来ています。
p110.特定の宗教が寛容であるとか不寛容であるという議論自体が間違っているわけです。ところが、「一神教は不寛容だ」という説は、かなり安易に通用しています。政治エリートでもそんなことを信じている人がたくさんいます。
p151.最も強い宗教というのは慣習という形であらわれます。「宗教」という形ではあらわれない。
p156.宗教改革の父であるルターは、ドイツ農民戦争のときに、こう言っています。「権力に逆らうのは神に対する罪を犯すことだ。今、農民たちは権力に逆らって反乱を起こしている。少しでも早く農民を皆殺しにして魂が汚れていないうちに救済せよ。そうすれば終わりの日に復活が可能になる。」
p172.世界の歴史を見ても、国家の長を直接選挙で選ぶようになると、王政はなくなる傾向にあります。
p206.帝国というのは、ばらばらで、まだらな領域があるということです。文化も秩序も違う様々な領域を維持していくことが、これから国際的なトレンドになっていくと思います。EUも、本質は帝国です。ギリシャとドイツとフランスでは文化が全然違います。歴史的な伝統も違います。それがとりあえず同じ枠の中にある。それからTPPも、アメリカの広域帝国主義政策です。またロシアも、ユーラシア同盟をつくっていくという帝国主義政策を行っています。
ニューギニアやアフリカの先住民には、狩猟採集を基本に生活している人たちが現在でもいるわけですが、その人たちに対する調査研究があり、3、4時間程度という結果が出ています。1日3、4時間働けば、人間は1日食べていくことができるわけです。ということは、8時間労働とか7時間労働というのは、狩猟採集時代の人間と比べて働き過ぎということになります。
p221.重要のは、定住に至るときに、必ず宗教が生まれるということです。
p223.宗教団体が課税されるようになると、その次はファシズムに向けた道が開かれます。宗教団体はファシズムに対抗する砦として、民主主義を担保する根本である、ということを認識してください。
p226.聖職者が独身制をとっている国というのは、例外なくその社会で宗教が実態として力を持っているところなんです。そういうところでは、独身制にしておかないと子供に権力を継承させることになり、財産や権力というものが特定の門閥に集まることになります。
p231.沖縄の離島に、久米島という島がありますが、人口は8000人台です。そこでは生活保護の不正受給はありません。逆に生活保護を受けないといけないのに、世間体があるから受けない人のほうが多い。
p231.実は、高福祉高負担の国家というのは、人口1000万を超えるところはありません。300万人であるとか400万人であるとか、多くても600万人ぐらい。それは、いわば村の延長線上あります。お互いに何をやっているかがわかる社会なんです。
p235.実は、北朝鮮の人でも、ビザをとらないでパスポートだけで入国できる数少ない国の一つが、スウェーデンなんです。「どうしてスウェーデンは北朝鮮に対して甘いのか」と聞いたら、笑いながらハレヴィは、「ああいう北欧の高度福祉国家や第二次世界大戦で中立国だったスイスやスウェーデンというのは、たいへんな警察国家なんだよ」と言うのです。
p240.これは、平安時代の京都に来てゆっくり話せば、多分通じたと思います。遣唐使が中断されてから沖縄方言と大和の言葉は離れていきました。
p253.小泉さんは、本当のところ官僚と戦ってはいない。小沢さんは、本当に本丸である財務省と戦っていますから、この戦いはそう簡単にはいかないでしょう。
p259.我々はみんなクイスリングの犠牲者だ、ノルウェーはナチスと戦った、というパルチザン神話をつくって、戦後のノルウェーは福祉国家の道を進みました。
p260.束ねるというのがイタリア語の「ファシオ」なんです。ファシオは日本語に訳すと「きずな」という意味です。「きずな」というのはファシズムです。
p262.アメリカでも、日本でも、ロシアでも、知らず知らずのうちに国家、官僚が中心となって、ばらばらになった国民を束ねて強化していこうという発想が出てきます。




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