小川洋子「博士の愛した数式」新潮社

公開日: : 最終更新日:2011/11/20 書評(書籍)



帯に惹かれて購入。私の読後感は、その推薦に違わなかった。内容は気が利いているものの、静かであり、特に奇抜ではない。文章も平易である。しかし洗練されている。背広にクリップで留められたメモ用紙、野球選手のカード、阪神の試合の観戦。4人の登場人物の心象の変移。読み進めるに連れ、ジワジワと心に響いてくる。この辺の妙を味わえた。著者の本を読んだのは初めて。ほかの本も読んでみたくなった




p167.不意に博士が立ち上がった。「いかん。子供をいじめてはいかん」そうしてポケットから取り出したメモ用紙に、何やら書き付けたかと思うと、それを食卓の真ん中に置き、部屋から出て行った。あらかじめ、そうすべきことが決まっていたかのような、毅然とした態度だった。そこには怒りも混乱もなく、ただ静寂だけが彼を包んでいた。取り残された三人は黙ってメモ用紙を見つめた。いつまでもそのままじっとして動かなかった。そこにはたった一行、数式が書かれていた。




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