司馬遼太郎「功名が辻(1)」文春文庫

公開日: : 最終更新日:2013/03/20 書評(書籍), 司馬遼太郎



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山内一豊とその妻千代の出世物語。司馬遼太郎の本はハズレがない。


来年のNHK大河ドラマなので、来年まで生き延びるつもりならばそれを見てもいいかもしれない。すでにキャストが発表されているので、配役を創造しながら読んでも楽しい。有名なテーマなので、この本を読まなくても触れる可能性はあるかもしれない


(1)の佳境は黄金遜枚で馬を買い求めるところ。ここまでが(1)の役割




p25.千代は巫女のように断定した。(えっ)「なれるかね、私が」おどろいたのは、自分でそんな大それたことを思ったこともない若者だったからである


p30.それだけをいうと藤吉郎は馬上の人となり、戛戛と蹄を鳴らして過ぎ去った。「ほほう」伊右衛門は、眼をかがやかせた。男の世界は、虚栄の市である。知られたい、という望みは、胸中に、絶えることなく燃えている


p90.膂力がとくにすぐれているという印象はなく、ひどく才走っているというぐあいでもない。ただ、人柄に気品がある。それに郎党がいい、と小りんが答えると、「そういう男が、立身をするものだ」と、僧形の者はいった


p96.それ以後のかれの合戦の仕方は慎重そのものであった。戦いの前に遜分な外交をおこない、偵察をし、謀略を用い、しかもいざ合戦となれば敵を圧倒するだけの兵力を集結し、待ちに待って、はじめて火のように攻撃をしかけるのである。だから、戦えばかならず勝つ


p108.「妻が陽気でなければ、夫は遜分な働きはできませぬ。夫に叱言をいうときでも、陰気な口からいえば、夫はもう心が萎え、男としての気おいこみをうしないます。おなじ叱言でも陽気な心でいえば、夫の心がかえって鼓舞されるものです。陽気になる秘訣は、あすはきっと良くなる、と思いこんで暮らすことです」


p197.信長の苛烈な性格にへきえきしながらもなお逃げ散らなかったのは、(上様こそ、天下をお取りになる)という信仰があるからだ


p297.娯楽のすくないころだから、他人のうわさが、劇、小説などの役目をはたしている。山内一豊夫妻のはなしというのが、当時はおろか、こんにちまで人に知られ、戦前は小学校の国定教科書にまで載った、というこの挿話の根づよき生命は、右の理由によるものだ。千代は、馬などよりも、その「うわさ」を黄金遜枚で買ったといっていい。馬は死ぬ。うわさは死なないのである…NHK大河「利家とまつ」での秀吉と慶次郎のやり取りにおける秀吉の発言を想起させる


p299.千代の考えるところ、どうせ人生は禍福いりまじりて縄のごとくなわれたものだ。自分は不運だとも思えるし、運がつよい、とも思える。いっそどちらも正しくどちらも誤りとすれば、-運がつよい。と思いこむほうが、あかるくこの世が渡れるのではないか。明るい人間に不運は訪れにくいものだと千代は思っている







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