文鳥「民営化の大義(大機小機)」日経平成17年7月26日朝刊

公開日: : 最終更新日:2011/09/07 書評(新聞)

日経新聞のマーケット面左上にある「大機小機」。それなりの名士が持ち回りで時事に対する評論を行う。匿名というところがミソ。好き勝手に書いているから必ず誰かの溜飲が下がる。表立っては言えない真っ当な意見あり、自らの利益に偏向した独自の見解あり。本日のは、私には後者の方のように思える
本日の執筆者はハンドルネーム「文鳥」氏。30年近く前に国家公務員試験を受けているということは、現在は50歳くらいか。今回のテーマが郵政民営化反対であるところや国家公務員試験を受けているところをみると旧郵政省あたりと利益を共通にする関係者だろうか
文鳥氏は「民間にできることは民間に」という考え方に対して、それなら経済見通しも、首相の警護も、税金や社会保険料の徴収も、戦争までも、民間に委託できるのに、なぜしないのか、という。こういうのを混ぜっ返しと言わないか
これまで日本は国鉄、専売公社などを民営化してきた。現在は、郵政事業を民営化しようとしている。将来は文鳥氏の指摘する分野も民営化されるかもしれない。これらを今、郵政とあわせて一気に行わなければ気が済まないのか。郵政から手をつけてはいけないのか。郵政民営化は現総理大臣の小泉氏がこれまで長年に亘り公約に掲げて何度も国政選挙に勝ち、そして与党党首になり、さらには日本の総理大臣にまでなってしまった、多数の付託ある正当性ある項目なのだ
指摘された郵政以外の事業の民営化も、所詮文鳥氏の混ぜっ返しなので、このような事業分野も含めて民営化はしない、が論旨のようだ。しかし、私には文鳥氏の列挙する事業の民営化は行ったほうがいいのではないかと思う。ただ、首相の警護や戦争は民間で行うことは少し無理を伴う場面もあると考えている。たとえば首相周辺には配慮を要する国家機密があるのだろうし、戦争は国を守ることと関わるビジネスであることから傭兵で賄える部分は限定されると考るべきではないか。傭兵はダメと言ったマキアベリがよく読まれ、国民徴兵制を採用する各国の現状も検討してからでなければならない
つまり、「民間にできることは民間に」というのは、それだけの意味ではなく、その前提として、「国が行う必要のあるものでなければ」という条件があり、これが明示されていない。そしてこの条件こそが、なかなか決められない難問
混ぜ返しはともかく、文鳥氏の反論の本筋は「利用者の経済力などによって、提供を受けるサービスが異なっていいかどうかが重要な基準になる」にある。その具体論として「へき地の郵便局などはいずれ廃止される」、「利益の見込める投資信託などの販売窓口が増える分、利幅の薄い小口貯金の窓口が徐々に減らされていく」とアラートする
前者については、ヤマト運輸の現状が十分に反論になっているのではないか
後者については、私にも心当たりがある。先日、ある銀行との取引を縮小する手続きのためどうしても直接に銀行に行かなければならないことがあった。そのとき、文鳥氏のおっしゃるとおり、諸手続きの窓口にはたくさんの列ができ、その一方で口座開設や資産運用などの窓口は広く、かつ、それほど混んでいなかった。閉店まで1時間程度あったにもかかわらず、処理は本日中には無理と言われ、出直しせざるを得なかったのには不愉快だった。このとき私はその銀行に引導を渡して別の銀行をメインにしようとしているところだったので、我慢した。その銀行とはサヨナラするつもりだし、ここで不満を言ってもその負担に対する利益がないので黙っている。一方、メインを乗り換えようとしている新しい銀行は、私のような小口預金者にヤサシイのだ。個人だからといって対応が悪くなることはない。24時間いつでも電話で対応してくれるし、銀行に来いと言われることなく如何なる手続きでも電話と郵送で対応できる。それも受取人払いの封筒をくれるのでポストで十分であって郵便局不要。このように、銀行業界をショッピングができることを幸せに思う。何かに不満を覚えればそれをビジネスチャンスとして新たな参入者が発生し、顧客のニーズに応えることを手段として収益を得る者がいるのだ。しかし郵便にはそのような選択の余地はないのが問題なのではないか。たとえば投資信託の窓口を増やしてみたところで実際に客が少なければ、窓口の調整も行われるだろう。顧客は勧められれば買うだけのお人好しではない。人生で結構大事な部類に入る財産のことだもの
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