三宅伸吾「穴だらけ買収・防衛ルール、ドタバタ整備―想定外の行動に大慌て(法務インサイド)」日経平成17年8月15日朝刊

公開日: : 書評(新聞)

日経の企業買収に伴う法務の解説は基本的に感心しない。今回の記事もその1つ
この記事に「ともに直前の金融庁の判断が違っていれば司法の結論も変わっていた可能性がある。」との主張がある。なぜそう思うのか
ビジネス側の感想をまとめ、予断とあわせて紙面を埋めただけという印象を持つ。行政や司法からは異なる感想があるのではないか
行政の見解と裁判所の判断が同一という事実が重なるのは、いずれも現状の理屈にあわせて解釈すると同じような結論に至るということではないか。行政は求められた見解を出すにあたっては司法に否定されて各方面に迷惑をかけないように公務員としての矜持をもって理屈の構成に汗を流すであろう。司法は、行政の見解に対しては、これに追従することなく、恣意的なものを排除するべく、独自の判断を行って法の支配の直截の担い手として力を注ぐのではないか。それがオーソドクスな結論にともに帰着することのほうが多いのではないか
このように国権分立の一態様として司法が行政に対する判断を行うことが予定され、実際に行政訴訟などで機能している以上、この記事のような主張はまず疑うべきである。この主張を行う者は、それなりに説得力ある立証を行わなければ読者の支持や共感はおろか、理解すら得られない
残念ながら、この記事にはその辺のサポートする事実の記載がまったく書かれていない。したがって、この記事はまったく信用できない。ニュースソースの秘匿で書けないのならそう表明すべきだ
マーケット欄や株価欄のない月曜日経の余白を埋める程度の雑文にも、もう少し神経を配ったらどうか。そのような内容が書けないのであれば、変な解説を入れるのでなく、各関係者のコメントなどを端的に紹介するような書き方にしてはどうか
・ニッポン放送、ニレコ、日本技開と、この半年間に司法の場に持ち込まれた買収・防衛関連の3案件のいずれも地裁では民事八部の鹿子木康氏が担当したが、直前の行政サイドの言動がその判断にも影響を与えたのかもしれない
・ニッポン放送事件では、ニッポン放送側はライブドアによる「時間外取引」が不当な買い占め行為だと主張したが、金融庁は早々と、「違法ではない」と国会答弁。地裁、高裁は行政判断を支持した
・TOB期間中を基準日とする日本技開の株式分割問題では、金融庁がTOBで分割後新株も対象にできるとの見解を司法判断の前に示した。先月29日の地裁決定はこの行政判断を認めたうえで、TOBへの影響は少ないとみて分割の差し止め申請を退けた
・ともに直前の金融庁の判断が違っていれば司法の結論も変わっていた可能性がある
・ニレコのケースも、地裁決定直前に経済産業省と法務省が公表した「買収防衛策に関する指針」補足説明において、社名こそ伏せたがニレコの防衛策をとりあげた。法廷闘争まっただ中に行政が先に「不公正」と断じる動き
・できれば、政策関係者や自主規制団体の証券取引所が想像力を働かせて攻防の構図をきちんと予測し、攻守バランスのとれた事前ルールを早急に整備するのが望ましい。その都度ドタバタするのは効率が悪い…奇麗事かつ危険。このようなルール作りが経済活動に関する国民の自由を阻害する可能性を恐れる。言論の自由という武器の行使をこれまで一身に担ってきた新聞社が、規制を作れとは如何。「きちんと予測」って簡単に言うけど、やる方はたまったものではない。こちらのほうが効率が悪い。「想像力を働かせて」というのが幼稚。事実に立脚して必要なものだけ決めたらいい。このまま訳の分からない想像力の産物のルールを作ることこそ、「大慌て」の形容が似つかわしい
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