吉越浩一郎「革命社長 なぜトリンプは社員が元気で、消費者からも愛されるのか?」日本実業出版社

公開日: : 最終更新日:2011/09/03 書評(書籍)

本書を貫く「成功するまでやり抜く」、「情報の共有が大事」、「ロジカルに物を考える」、「デッドラインを設ける」という考え方、そして吉越氏がこうやって会社のカルチャーを変えていく様に極めて共感。社員教育に関して若干の違和感
本の構成が面白い。プロローグとエピローグに社員のコメントを配置し、文中に挿話として別の社員のコメントのほか、MS会議見学者の感想を配する。項の最初のページに印象的な写真に重ねてその項のサマリーとなる一言を置く。本文自体は読者に語り掛ける話法で、軽快かつ平易な内容となっている
ただし、社長の本なので、社員のコメントはすべて割り引いて読む必要がある。新聞や雑誌の読者の投書欄と同じように。余談ながら、日経新聞にはそのような欄がないのは好ましい
ドイツ企業の日本法人を長年経営してきた筆者であるか故の、外資系の陥りがちな欠点や経営の勘所も紹介している
2時間もあれば読み終われるが、それに比して得るものは多い。一読を推奨する
p16.(プロローグ)「会社はコミュニケーションが大事だと思う。しかも情報を共有していないと強くならない。営業、マーケティング、物流、広告と別々に動くより、それぞれ権限を持っている人たちが一緒に集まって方向性を定め、約束事を決めていったほうがいいじゃない。木田さんは営業ができることは認めるけど、営業も他の部門に支えられてやってるんだから、皆で約束事は決めたほうがいいんじゃないのかな」
p17.(プロローグ)「この人は自分とひとつしか歳が違わないのにデキるなあ」と、素直に吉越さんの考え方が認められるようになってくると、不思議なものでだんだんと僕のほうが変わっていったんです
p22.計画どおりにいっていない時には、その理由を徹底的に追及する
p30.何でも凝縮してやることが会社の習慣になっている。忘年会でさえ1時間半で終わってしまう
p32.うちの会社では、何か悪いことが起こっても、すべてオープンにするんです。隠すと変な憶測が飛び交っていい方向では解決しない。何事も即刻オープンにして情報を共有するからこそ、緊急に手を打つことができるわけです。同時に再発防止の危機対策や、似たような問題が起きないようにシミュレーションして、横展開もできます
p37.毎朝の会議の議事録は、すべて会議終了の1時間以内にパソコンと携帯に流しています。たとえ出張中であっても、全国どこでも携帯画面で閲覧できる
p37.役員たちに個室を持たせないで、まとめてひとつの大部屋に入れ、デスクもくっつけるのが理想的。社員には、効率よく働くために個室を与えるといいと思う。日本の現在はその逆
p53.プライベートを充実させることで、仕事も集中して効率よくやる。そして自分のいない間、部下や後輩に仕事を任せることで伸ばしていくというスタンスが大事だし、仕事ができる人ほど休暇はきちんと取れるはずなんです
p60.どうしても週に5日はお酒がはいる。でも二次会には行きません。翌朝からフル稼働しなきゃならないんで。会議でテンションを高められることに標準を合わせていますから、夜はきちんと寝ます
p72.100%うまくいく見込みがあることにだけお金を使うなんて、どだい不可能なこと。多少の誤差があっても、社員の「本気」には投資していくべきだと思うんです。それが生きたお金である限りは、いいんじゃないかな
p78.どうしても男というのは時間をかけて訓練しないと。大器晩成型なんですね。そこへいくと女性のほうが発達が早い、これはもうしょうがないんです
p85.「NO残業デー」の導入:現在は毎日実施。18時25分には有無を言わさず、一度ボタンを押すと全社内の証明が自動的に順番に消えていく(この消灯システムに吉越氏は150万円を投入)
p93.他社に移ったほうがいいと思われる人には、きちんとそう伝えます。それはジャック・ウェルチも言っているように、マネージャーにはそうしたことをきちんと伝えるエッジ(厳しさ)も必要だということです
p93.以前、大手繊維会社から、一度に7人転職してきたことがあるんですが、全員続かなくて辞めてしまった。7人とも優秀な人たちでしたけれど、うちのスピードにどうしてもついてこれなかった。そのことが、みんなの前でオープンになってしまうから、特に前職でキャリアや自信があった人ほど耐えられないんでしょうね、なので、現実的に中途採用の人はうちではなかなか続かない。難しいと思ってます
p98.大勢応募をいただいて、採用する社員をどう選んでいるかというと、テストを2種類やっています。ひとつはSPI、それと「料亭の板前の技が盗めるような器量を持っているかどうかわかるテストにしてほしい」とリクエストして、外部の会社に作ってもらったテストなんですけど、こちらはまだ、どうもうまくいかない
p101.「技は盗め」が正しいと思っている。教育はしてもらうものではなく、自分で育つものなんだと。育つ人には場を与えます
p106.仮に彼女のやっていることをすべて聞き出し、それをマニュアル化して他のアドバイザーに教えようとしても、それは不可能でしょう。もちろんパターン化してマニュアルにできるものもあるでしょうが、暗黙地はマニュアル化できません
p112.「知っているか、その国民レベル以上の政治はできないんだぞ」
p117.「アンケートを取ります」というのがいい例で、僕はそれが大嫌いです。直接本人に聞きに行けばいいことなんです。たとえば「契約社員がどう考えているのか」という話になった時、自分の部下にも契約社員がいるのだから、直接生の声を聞いてみればいい
p122.ことなかれ官僚主義とセクショナリズムがはびこっていて、外資系の悪いところがすべて揃っていた。英国人社長と社員の間に意思の疎通はないし、英語ができるというだけの人間が幅を利かせ、役員も管理職も責任をなすりつけ合っている。早急に手を打たなければならない情報でさえ、経営陣には伝わっていなかったんです
p129.情報の共有化ができていない段階では、どんなにやり合っても、何の結論も導き出せない。たとえば「これは白だね」という、同じ認識をみんなが持っていれば、まだ話がしやすいのですが、ピンクがかった白やブルーがかった白を「いや、これが白です」といってくる人がいると、それをベースにした次の話がかみ合わない
p135.毎朝8時30分から1時間、今では全国7か所をテレビ会議で結んで、総勢約70名がMS会議に参加しています
p137.最初の問題を解決しようとすると、これもつながってる、あれもつながってる、ということばかりが露出してくるわけです。それをとにかくコツコツと諦めずに、しかも次々と解決していくしかなかった
p142.日本企業では、失敗した部下を誰もいない別の部屋に呼んで説教することが多いと思いますが、僕はそれを全員の前でやるわけですから。みんなの前で傷口を全部さらけ出して膿を出し、そこに塩をすり込むという荒療治をされる
p144.どんなことでも成功するまでやれば、必ず成功する―。今ではこれが僕の一番のモットーです
p148.バックオフィスでも工場のラインのように、だーっと仕事を流していく仕組みを作ってしまえばいいと考えたのです
p151.うちに新卒で入社して、他社に転職した人は「暇で暇でしょうがない」って言っているらしい。逆に他社から転職してきた人は、ついて来れないってことになる
p154.情報を共有するための会議は続けるべきだし、むしろ、会議を続けられなくなった時のほうが、会社の危機じゃないかと僕は思うんですよ。確かに、ただ組織を大きくしてしまったら会議はできなくなる
p157.業績をあげるためには、気づいたことはすべてやってみること、そしてやり切ることに尽きます。そうすれば、結果が必ずついてくる。間違えを正しながら前に進んでいけばいいんです。特にITに関してはそう思いますね
p157.電子稟議システムは3日間返事をしなければ自動承認となるシステムにしてある
p158.月が変わった第一営業日の朝8時には、部長以上の全員に前月の全社及び担当部門の損益計算書がメールで回ります。必要であれば店舗別のものも引き出せる
p160.サイズが細かいということは、着け心地が微妙なので返品率も高い。インターネットだと、中には同じ商品を3サイズ注文して、いちばんフィットした商品以外の2つを返品してくるという人もいますし
p164.外資系企業というのは、本社が何かと茶々を入れてコントロールしようとするんですよ。でも、本社のやるべきことは、資金であったり、人であったり、いわゆる経営資源のリロケーションのはずです
p164.「トラスト・イズ・グッド、チェック・イズ・ベター」。そのうえでフリーハンドを与えていく
p165.アメリカに本社がある会社で働いている友人は3ヶ月に2回アメリカに行く。その前後3週間は仕事にならない
p185.知名度が低かった頃は百貨店の課長が来てくれただけで大騒ぎしていた。展示会を思い切り目立つものにしようとショー化したら、招待されることが業界内でステータスになり、招待されない人からクレームが来るほどになった
p187.年間、情報番組に何分取り上げられた、雑誌にこれだけ取り上げられた、というのをすべて広告費に換算して計算していくと、2004年度は27億円くらいになっている
p197.本社には、縫製時の様々な特殊技術が豊富にあります。一切外部に出さない門外不出の技術。特許を取るとその技術が流れてしまうので、ノウハウとしてずっとトリンプの中だけで蓄積されているものです
p201.うちのように女性が一対一の対面で売る商品は、アドバイザーの能力が大きな決め手となるわけです
p211.(エピローグ)男性客はアドバイザーに声をかけにくいから、アイコンタクトでニコッとして見せる。相手が照れるから声は出さないほうがいい、とか。そういう小さなことを自分で書き留めて、手書きのオリジナルマニュアルを作っていました
p214.(エピローグ)”すぐに良くなるチェックシート”というものをつくり、ごく当たり前のことを36項目にまとめ、全店で毎日チェックさせた
p214.アルバイトを使った抜き打ちの店舗調査を行い、点数化して店舗ランキングを作成してオープンにしている。クレームもオープンにしている
p218.(エピローグ)「松ヶ谷さんってコワイだろ、また怒られちゃった?」って、アドバイザーたちに声をかけるんですよ。そして「本当は優しい人なんだよ。でもね、やらなきゃならない立場だから。わかってやってね」と言われたんです
20050817051343

革命社長

posted with 簡単リンクくん at 2005. 8.17
吉越/浩一郎??著
日本実業出版社 (2005.7)
通常24時間以内に発送します。


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