幸田昌則「下がり続ける時代の不動産の鉄則」日本経済新聞社

公開日: : 最終更新日:2011/09/07 書評(書籍)

ちょうど2年前に出版されている。内容は若干古くなっているが、先日発表された路線価を思い起こしても(都心等一部の一等地で上昇しているところがある一方、全国的に概ね下がり続けている)、筆者の分析の正しさが裏付けられている。
データも豊富な良質な本。それが2年の経過で若干アウトデートなのは残念。各国の人件費の比較や、横浜と深センの進出コスト比較など面白い。これらが登場するほど、本書の分析は広い。これをアップデートしたものがあっても売れるのではないかと思う
最近、不動産投資に若干の興味を覚え、関係する本を漫然と読み散らしている。サラリーマンでもできる不動産投資みたいな、インカムゲインを仕組んで自分の年金を作ろうみたいな。大家になって副収入とか、お金に働いてもらおうとか。不動産投資は片手間でできる、と言う人から、難しいビジネスだから素人は手を出さないほうがいい、と言う人。競売がいいと言う人、イヤ旨みはなくなったからこれから参入するのはやめておけ、と言う人
この本は、そういうノウハウよりももっとマクロ的な視野から、主に需給を切り口に、全体として地価は当面下がり続けるのだということを説く。そういう鳥瞰を行うのにはもってこいの一冊
p15.国土法価格を不動産業者も金融機関も金科玉条のごとく取引の指標としたのは、いまから考えればこっけいなことであった。これは不動産の価値・価格の本質や、取引の基本を全く無視したことから起こったのであって、喜劇であり、最後には悲劇的な結果となってしまった
p18.最初に現れた購入希望者は、その不動産が売り物件としてチラシや住宅情報誌などで広告される以前から、その地域の物件を探していた人であることが多い
p23.昔から、「隣地は倍でも買え」とよく言われた。一段と利用価値が高まるという考えから
p44.何を基準に不動産価格を見ていけばいいか。1つは、その不動産の現在と将来の収益性。次に重要なことは、自分に本当に必要なものか、という判断
p53.中古住宅は同じ立地条件でも、設備も劣るし、何よりも他人が使用していたことに心理的嫌悪感を持つ人も少なくない。特に女性にその傾向が多く見られる
p56.日本ではエネルギー供給について不安定な状況にあることがいつでも指摘されながら、停電したり、ガソリンの不足で自動車が走れないという経験もほとんどない国になっている
p57.戦後、長い間、日本では「国土が狭いうえに、山地が多く、人間の住める土地は少なく足りない」という認識をしていた人が多かった
p57.土地神話とは人口の絶えざる増加という「神話」から発生してきたものである
p59.バブル期には、大幅な金融緩和で「仮需」が生まれていたが、その仮需がなくなった今は、不動産の「実需」の減少という事実が浮かび上がってきた
p67.不動産のプロと呼ばれる人たちでも、土地やマンションの個々の物件内容を知っているだけで、その物件が現在の不動産市況全体の中でどんな位置づけになっているのか、総合的に判断できる人は数少ない
p74.不動産は、取得時に人間の判断力を狂わせる「不思議な魔力」を持っている。数千円や数万円の買い物のときの慎重さに比較して、住宅や不動産を購入するときには、金額が桁違いに大きい割に慎重さが薄れる
p83.軽井沢は東京駅から約1時間余りで手軽に行けて酷暑の東京から逃避できるということで人気を保っている
p93.90年をピークとしたバブルは「価格のバブル」であるのに対して、94年から97年ごろまで続いた「住宅バブル」は大量供給という「量的なバブル」
p102.日本の社会的、経済的構造変化と地価下落によって、住宅、オフィスの都心回帰は当分の間続くことになる
p129.以前は、土地などは全部、資産として評価されてきたが、最近では「価値あるもの」と「価値のないもの」とに峻別され、同じ町の中ですら二極化現象が生まれてきた
p131.最近のディベロッパーは、より通勤に便利な中心部での土地仕入れに腐心しており、郊外のターミナルから1時間もかかる地域は、当初から仕入れ対象としていない。同時に、駅から10分以内、さらには5分以内へと仕入れの対象地域を絞り込んでいる
p140.賃貸住宅に魅力的なものが少ないことも、持ち家への取得意欲に拍車をかけている
p170.地価の問題にしても現在に至る10年を超える連続的な下落の原因は、不況による影響という側面はむしろ小さくて「人口の増加がない」という事実が背景にあることを認識すべき
p172.一人・二人世帯の合計の全世帯に占める割合は約53%。東京都など一部の都市では65%にも達する
p196.条件のすべて揃ったものは予想以上に高く、条件が1つでも欠けたものは驚くほど安くなってしまうのが現実の姿なのだ
p212.人口が毎年減少していくのに住宅価格や土地の価格が上昇するのも何かおかしいし、我々の所得が毎年のように低下していくのに、住宅価格が下がらないのもおかしい。最近ではレストランのメニュー価格も安くなっているし、衣料品も安くなっている。そこで不動産価格だけが上昇することがありえるのか―。こんな疑問を持つことから始めよう
p214.物件ごとに年に1回はキチンと評価をしてみることが大切となる。評価については、収益、保有コスト、課税評価額、実勢価格などを定期的に実施しておく
20050818002855

下がり続ける時代の不動産の鉄則

posted with 簡単リンクくん at 2005. 8.18
幸田 昌則著
日本経済新聞社 (2003.8)
通常2??3日以内に発送します。

 

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