中村彰彦「知恵伊豆に聞け」実業之日本社
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最終更新日:2011/09/03
書評(書籍)
「知恵伊豆」という言葉をときどき耳にするのだが、どのような人で、そのように呼ばれるようになった実績というものが知りたかったのが、この本をとった第一の理由。著者の後書きを読んで少し驚いたのは、同じ理由で著者がこの本を書くことになったという
よく読み継がれる日本史中のテーマの有名どころは大概、本、ドラマなどで押さえて来た中、そうでない部分にも興味が出てきたことが、この本をとった第二の理由。NHK大河の「葵三代」や先般のテレビドラマ「大奥」で、2代から3代にかけての徳川将軍周辺のことが面白くなってきたのが第三の理由
主人公は松平伊豆守信綱。実家から松平姓を名乗る親戚に養子入りし、秀忠、家光に仕えて頭角を現していく。最終的には家綱の代まで老中の地位にあり、最終的には川越藩主として10万石を越える所領を有することとなる。伊豆橋、伊豆殿掘と複数の地名に名を残す。ちなみにその養親も、現代まで残る有名な景勝地を残すこととなった
子供の頃の知恵は、本質を見極めて目的を達成する能力。小姓時代の知恵は、博覧強記。若年寄になってからの知恵は、社会の仕組みと人間の機知の理解と応用。老中以降は自分の知名度を生かした他の幕府の有力者との調整能力が際立つ。それらを貫いているのが、徳川幕府に対する揺らぎない忠義
全体のトーンが、松平信綱が如何に安定して素晴らしい実績を築いてきたか、ということにあるため、正直、物語としては退屈な感じもする。しかし、徳川幕府の初期を知るための物語としては、面白い一冊であった
20050827211000
実業之日本社 (2003.7)
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