西條都夫「自動車産業、勝負の分かれ目―日本勢「鍛錬」重ね快走(経営の視点)」日経平成17年8月29日朝刊

公開日: : 最終更新日:2011/09/07 書評(新聞)

著者は、編集委員
こういう「まじめさ」や、「継続性」を肝に銘じたい。時節柄思い出すのは、義務教育のときの夏休みの宿題。最後の数日で追い立てられるようにやっつけていく、心臓に悪い行動様式をとった性質の私。大昔のことを反省しても仕方がない。いまは大分違う人間になった、と思いたい
この記事ではホンダ関係者から聞いた話がベースになっている。そして、日産もそうだと付言されている。トヨタが触れられていないが、「カイゼン」で有名なトヨタはいうまでもないだろう。この時期、この記事もレクサスへの餞のようにも読める
トヨタのこの辺については、「トヨタ自動車社長渡辺捷昭(Key person interview)」週刊東洋経済2005.7.23「平野幸久氏 空港も顧客満足追求(編集長インタビュー)」日経ビジネス2005年5月30日号でも見てきた
「信頼」という言葉がある。ビジネスで若手がヘマをして「信頼」を失ったとき、「どうやったら信頼を回復したことになるのか?」と、よく問い詰めていたものだ。私としても自分なりの回答も持ち合わせないまま。この類のことは誰も明確にしてくれないし、国語辞典を読んでも、ストンと腹に落ちてこない、生煮えの、無難な、単なる言い換えの説明しかなされていない
それが、ある日、ある本を読んでいて、自分なりにこの疑問が氷解し、軽く開眼した気になった。理系による「信頼」の定義は「再び同じことが発生すること」なのだという
この定義によると、「信頼」には、”まじめに研鑽した結果、常に成果を出すことができる、したがって彼に任せればうまくやってくれる”という正の信頼がある一方で、”こいつにやらせると、いつも何かしらヘマをしてくれる”という負の信頼がある気がする
成功するかもしれないし、失敗するかもしれない。どちらの目が出るかわからない。そういう仕事の仕方は、いい意味でも悪い意味でも「信頼」がないということになる。「悪い信頼」は、それはそれで役に立ちそうだ。例えは変だが、子供向け正義ヒーロー物フィクションでは、悪役は常に正義に負けることになっており、勝ってもらっては困るのである。ヤッターマンとドロンジョさまのような
もちろん通常は、人が信頼されるということは、成功を続けることだ。成功し続けること、つまり実績を積み上げることは難しいけど、1回でも失敗することは簡単である。だから信頼を得るのは困難を極める半面、それを毀損するのは極めて容易なのだ
・ホンダの米国事業のトップを16年間務めた雨宮高一前副社長に「米国は自動車の母国なのに、米ビッグスリーはどうして弱体化したのでしょう」と聞いた。答えはシンプル。「まじめさが足りなかったから」
・GMのリチャード・ワゴナー社長(当時)は「ハイブリッド車を今年末から発売し、07年には100万台売る」と大々的にぶち上げたが、いつまでたっても実車は発売されず、その間に日本勢がハイブリッド市場で着々と地歩を固めた
・雨宮氏は「夏休みの宿題」とも表現する。投資家に何を言うか、自動車ショーで何が受けるか―。それは必死に考えるが、いざことが済めば本来の課題は置き去りにされがち。「夏休みの終わりにあわてて宿題を仕上げても、その後も継続しないと実力はつかない」
・製造業研究の第一人者である藤本隆宏・東大教授が提唱する「体育会系の戦略論」。その本質は宮本武蔵の『五輪書』が説く「千日の稽古を鍛とし、万日の稽古を練とせよ」のメッセージに近い。地道にひたすら改善を積み重ね、自社の能力を高める。それが大型買収や華麗なブランド戦略を上回る威力を発揮し、じわじわシェアを上げる。日本車の強みは際だち、世界的なプレゼンスは一段と高まる予感がする
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