アミール・D・アクゼル「偶然の確率」アーティストハウスパブリッシャーズ
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最終更新日:2012/02/20
書評(書籍)
思っていたより簡単。思っていたほど内容が薄い。文章も薄い。超速で読み終わってしまった。しかし面白かった。帯が面白いではないか。「なぜ、自分は不運なのか?/この投資は儲かるのか?/最良の結婚相手を見つけるには?」と。特に最良の結婚相手の見つけ方が気になる人も多いのではないか
客観的な確率と主観的な印象のギャップに驚かされる。誕生日が同じ人を探す話。私も小学校や中学校のころ、自分の誕生日と同じ人が多かった記憶がある。それが凄いとも凄くないとも思わずに、ただ多いんだなとしか思わなかった。人によってはそこから論理的な思考に発展する人もいるのではないかな、とは同時に読んでいる別の本からの示唆。私は残念ながら単にその事実に気がついただけで終わった。要は凡庸な幼少時代を過ごしたということだ
こういう、理屈で説明する本はスッキリしていて面白い。平均寿命の話も面白かった。アメリカ合衆国の寿命が意外と長いなと以前より感じていたが、これも移民が多いことによるのだろうか。それなりに寿命が長いと安心して、あのような食生活をしているアメリカ合衆国の人の真似をすると痛い目に遭うのではないか、という戒めになった気がする。この仮説が正しいかどうかは、すぐに調べる気はないが、これが分かっただけでも大きな進歩だ
ギャンブルの話も面白かった。昔、人から聞いた、ルーレットへの「勝つまで2倍で賭け続ける」という話も出ていて、筆者は実際にそれをやっていたというのも興味深かった
いくら可能性が低くても独立試行で継続すればいつかは実現する、という話も興味深い。直ちに想起されるのは、KFCのカーネル・サンダースが自分のフライドチキンのレシピの事業化のために投資家を探して、1,009回断られ、1,010件目でようやくパトロンを見つけることができたという話。起業における熱い努力というのが本旨だが、なるほど確率としても客観的に説明がされるだけの話か、とトーンダウン。本著ではサルがタイプライターでハムレットをタイプするという印象的な喩えで説明している
p6.古代の神々への信仰や占星術や迷信はみな、説明のつかないものを説明しようとする試みだった。とにかく、それを考え出した人々の努力は認めなければならない。彼らは彼らなりに考えをめぐらせ、この世の出来事が偶発的に起こりうることを信じまいとしたのである
p40.デ・フィネッティのゲーム。テストの成績が100%満点だと主観的に考える友人に対して、98個の赤いボールと2個の黒いボールを入れた袋から赤いボールを取り出すことと、試験結果で満点を取ることのいずれかにより100万ドル得ることを選択させる
p58.一社に就職できる確率が0.5%でも、2,000社に求職して最低でも一社に就職できる確率は99.9956%である
p60.独立事象の和集合の法則を極限まで推し進めると、確率がゼロでないことは十分な機会を与えられればなんでも起こるということになる。しまいには、サルが「ハムレット」をタイプすることもできる
p77.大胆な賭けこそが最善の策なのだ。それは直感的な論拠もある。カジノ側の不当な優位に影響される機会をできるだけ減らす戦法が最適ということになる。要するに、賭ける回数が少ないほど安全
p93.パスカルの三角形。コイン投げの回数が増えるにつれ、結果が五分五分になる確率は減っていく
p97.インスペクション・パラドックス。今日生存している人は予測寿命よりも平均して長く生きる。すでに生存を開始している人や物の予測寿命が、まだ生存していず、あなたがすでに切り抜けてきた原因によって尽きたり縮んだりしうる可能性がある何かの予測寿命よりも長いからだ。たとえば今日生存している人は乳児期に死ぬことはできないし、いま90歳の人は75歳で死ぬことはできない
p101.人口の大部分を移民が占めている国では、平均寿命がいちじるしく長くなってしまう
p124.一生のうちに出会う花嫁・花婿候補の約37%とつきあったあと、過去のどの相手にもまさる次の候補者と結婚することに決めれば、自分に最もふさわしい伴侶を得る確率が最も高くなる。37%という数字は1/eの近似値―この場合のeは自然対数の底、すなわち2.71828―である
20051001135136
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