三浦展「下流社会」光文社新書

公開日: : 最終更新日:2011/09/13 書評(書籍)



挿入されている写真が何ともいえない。パックツアーのパンフレットの「イメージ」の写真のようなもの。「昼下がりの青山を歩くリッチなお嫁系女性」とか、「希望を失った若者が街中に倒れこんでいる」とかいうタイトル



データが豊富であり、それが人をひきつける形で提示されている。下のメモを見るだけで、人の生活を覗き見たい、そして自分の程度を知りたいというスケベ心を持つ人間は楽しめる内容だと気づく。ベストセラーになる理由もわかる



しかし、最後の結論はひどい。これでこの本の価値は相当減ぜられた。データ集や話のネタとして価値がある。著者の分析は聞く価値はあるだろう。しかし著者の主張は聞くべきではない





p6.「下流」は、DVDプレイヤーもパソコンも持っている。しかし、意欲が足りない



p39.トヨタは、いつかはクラウンという典型的な階層上昇型消費モデルを提示してきた。そのトヨタが「一部の富裕層」に向けてレクサスを投入する。それはきっと「いつかはレクサス」という形では売られないであろう



p54.子供を夜10時まで保育園に預けて働きながら、毎週料理を習い、かつエステとベルリッツにも通っている!



p108.もちろん高度成長期にも希望格差はあった。そんなことは当たり前だ。問題は希望格差があったかどうかではなく、希望格差が拡大すると考える人が多かったか、縮小すると考える人が多かったか、そしてそれは誰だったかということであろう



p125.男性の所得;150万円未満では結婚の可能性はない。300万円未満でもかなり厳しい。300万円を超えるとようやく結婚が可能になり始め、500万円を超すと一気に結婚が現実になり、700万円を超えると9割、1,000万円を超えると100%結婚できる



p126.女性の所得;夫婦合計の所得として500万円以上になれば、ほぼ9割。女性は世帯の所得が500万円以上になる結婚を求めていることが明らかである



p132.年収700万円以上欲しさに子供を産み控えている夫婦も多いと推測される



p134.若いうちは親元にいて、その後、結婚して夫婦だけで暮らし、子供ができたらできれば親元に住むのが最も「下」になりにくい



p144.最近の、特に女性の大学院生というのは、裕福な家庭の娘の道楽のようなものらしい。30年前なら、ミッション系の私立女子大に行っていた階層の女性が、今は大学院に行くのかもしれない



p148.既婚総合職の女性の就労継続を可能にしている一つの要因は、その女性の母親の支援だということがわかる。「アエラ」の特集によく出てくるタイプだ



p154.最も重要でありながら、これまで、小倉千加子や山田昌弘を別とすれば、あまり誰も語りたがらなかったのは、80年代以降、階層化が進んで自由恋愛が困難になったという点ではないだろうか。一流商社マンはパチンコ屋で働くおねえちゃんとは結婚しないし、ミリオネーゼ系女性は自分のオフィスを掃除する男性とは結婚しないのだ



p155.不良女子高生の援助交際をあれだけ煽った社会学者・宮台真司さえ、トラウマ系バツイチ子連れジャーナリストとの同棲生活には不満だったのか、結局は、東大名誉教授の娘にして日本女子大卒の、いまどき珍しい純潔な20歳も年下の女性と「ふと目が合って激震が走」り、彼女の父親に「うちはクリスチャンなので離婚はできません」と釘を刺されながらも、めでたく入籍したという。一族みな東大、祖父も東大教授で昭和天皇に御進講をした生物学者だったという、そういう宮台家にふさわしい女性に、彼は反応してしまったのではないか。いくら既存体制の破壊者を気取り、売春合法化を訴える人間でも、こと自分自身の結婚においては階層性の壁を打ち破ることができないという事実の何よりの証左であろう



p160.「自分らしさ」「自己実現」の価値観の浸透が、好きなことだけしたいとか、嫌いな仕事はしたくないという若者を「下」においてより増加させ、結果、低所得の若者の増加を助長したと考えることができそうである。象徴的に言えば、村上龍の「13歳のハローワーク」を読んで、そうだ、自分が本当に好きなことを見つけて、それを仕事にしようと真に受けて自分探しを始めた若者は、結果としていつまでもフリーターを続けて30歳になっても低所得に甘んじ、低階層に固定化されていく危険性が高いかも知れない



p170.自分らしさが大事だから一人暮らし、親と同居、夫婦二人だけの生活を続けているとおぼしき傾向が見て取れる。自分らしさ派では、結婚して子供を作るという普通の人生に自分らしさを感じられないのだとも言える



p177.「ドラゴン桜」の面白さは、社会にある不平等を、自由、個性、オンリーワンなどという言葉で隠している大人の欺瞞を暴き、子供たちに社会の真実を知らしめ、だからこそあきらめずに努力しろと主張するところにある。そして、東大に入れるかどうかは先天的な能力の差ではなく、挨拶をするとか、脱いだ靴を揃えるといった当たり前の生活態度が基礎にあり、その上で問題をテキパキと解いていくことが重要だと主張する。まさに、社会の下流化にパンチを浴びせる傑作である



p186.団塊ジュニア男性の「下」ほどスポーツ観戦が好きであり、またフジテレビをよく見ている。「朝のニュースを見るテレビ局」としては、「上」は33.3%がNHKで最も多いのに対して、「下」は39.6%がフジテレビなのである



p194.自分らしさ志向の強い「下」は、買い物が大好きが54.2%もおり、ブランド、メーカーにも自分なりのこだわりがあるが47.9%である。年収が高いほうがブランドやメーカーにこだわりがあるという一昔前の常識とは異なる。低階層はベンツ、BMW、ロレックス、オメガといった有名ブランドにも関心が高い



p198.団塊ジュニア女性の腕時計で好きなブランドは、ロレックス、カルティエはむしろ「中」「下」の支持の方が高い。「上」のみで多いのはシチズンだけというあたりにも堅実さがうかがえる



p205.「上」の男性は、性格が明るく、人の好き嫌いがあまりなく、人づきあいがよく、気配りができて、実行力があり、依存心が弱い。逆に「下」の男性は、性格が暗めで、優柔不断で、依存心が強めだと言える



p221.郊外下流クラスタの食生活。よく行く飲食店:マクドナルド、ガスト、サイゼリア、ロッテリアなど低価格訴求の店が上位を占める。ふだんからよく食べるもの:チョコレート、ハンバーガー、アイスクリーム、ポテトチップス、あられ・おせんべい、ピザ、中華まん、のど飴、ビスケット・クッキーなど、他のクラスタと比較してお菓子やファストフード類を非常によく食べている



p238.雅子妃のお生まれは目黒区洗足。つまり日本のプリンセス御生誕の地はまさに第2山の手から第3山の手へと移動したのだ



p243.男女共通した傾向としては、横浜・川崎居住者の階層意識がやや高いと言えそう



p246.団塊ジュニア女性は1都3県出身者ではほぼ2割前後が「上」なのに、地方出身者では「上」は非常に少ない。女性の場合、1都3県出身であることが、階層意識にとって有利に働いているようである



p254.吉祥寺とか世田谷とか目黒とか調布とかは、客をどんどん取られている。つまり、もう都心にでてこなくてもいいのである。立川には高島屋も伊勢丹もある。原宿の人気ブランド、ユナイテッドアローズも立川ルミネにある。でも吉祥寺にはない。郊外がだんだんと商業地として都心から自立し始めているのである。



p258.私は地方出身者だからよくわかるが、私が学生時代でも、実は東京の街を歩き回りたがるのは地方出身者だった。東京の街がすべて珍しいし、東京のことを何も知らないという劣等感があるから、やたらと東京をすみずみまで歩き回るのである。ところが、東京出身者に聞いてみると、彼らは自分の家のある沿線以外にはほとんど行かない。東横線に住んでいる者は池袋には行かないし、吉祥寺にもあまり行かないのが普通であった



p265.少数のエリートが国富を稼ぎ出し、多くの大衆は、その国富を消費し、そこそこ楽しく「歌ったり踊ったり」して暮らすことで、内需を拡大してくれればよい、というのが小泉―竹中の経済政策だ。つまり、格差拡大が前提とされているのだ



p269.大学入試で、親の所得の低い家庭の子供は合格点数を下げればよい(ついでに所得の高い親の子弟は合格点を上げてもよい)





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