国定浩一「マネードラマの結末を懸念(十字路)」日経平成18年5月23日夕刊

公開日: : 最終更新日:2011/09/07 書評(新聞)

著者は大阪学院大学教授。このコーナーのこの人の書き物を何度か気になってメモしてきた
“国定浩一「『ライブドア事件』の効果(十字路)」日経平成18年2月23日夕刊”
“国定浩一「株は値下がりもある(十字路)」日経平成17年10月20日夕刊”
今回も気になる。

・村上ファンドが保有する阪神電気鉄道株についての阪急ホールディングスとの交渉は大詰めを迎えているようだ。ファンドの意図は「高値での売却」の一点なりと考えればドラマの決着は見えてくる。ファンドの主張する1,200円は論外だが、時価(1,000円近辺)に近いような価格での妥結を懸念する。ファンドが「大もうけ」をして立ち去る、そんなドラマを目にしたくないのである
・「カネは汗して稼ぐもの」と常々学生に話しているが、落ち着かない。大阪商工会議所の野村明雄会頭も4月の記者会見で「公益事業がお客、従業員、地域社会とともに営々として蓄積したものを、短期的な価値の追求にかえるのはいかがなものか」と述べた。阪神電鉄との経営統合に向けて解決を目指す阪急側の動きは高く評価するが、結果的に「マネーゲームの勝利」となるようなことだけは避けていただきたい

投資ファンドのビジネスは「汗して稼ぐ」に当たらないとの主張のようだ。ブルーカラーということか。金融業以外の仕事ということか。定義もせずによくも言う。なんとも情緒的な評価ではないか。株価のおかしいところ、顕在していない価値を見出して、資本の力を使ってリスクを取りに行く。それが他人にできないから成果を得られるのだ。抽象的な意味では多分に汗を掻いているはずだ。目で情報を読み取って(目は実際、脳の一部といってもいいそうだ)、脳みそで分析し、度胸を発揮している
ただ、使用者側からすれば、「汗して稼ぐ」と学生に教育してくれるのは、使いやすそうな労働力を供給してくれる期待が高まり、ありがたい、と思うこともできそうだ。昔、NHKの「映像の世紀」だったか、戦後の警察予備隊の創設時の映像で、隊員志願者の採用面接の際に「特定の政治思想を有しているか?」という質問に対して「いえ、まったくありません」と即座にキッパリと答えたのを見て、アホかと苦笑したのを思い出した
感傷にドライブされた理想を語るのもいいかもしれないが、学生さんにはもっと現実に近いことを教えたらどうか。なぜ村上ファンドはこれだけの利益を上げられるのか。現状、法律違反などの話がない以上は(将来なにが出てくるか、また、出てこないのか分からないけど)、正常な商取引をしているのだから。運ではここまで来られない
また、著者は大阪商工会議所会頭の言葉を引用して、短期的な価値追求に疑問を呈している。これがそのとおりならば、村上ファンドだけの問題ではないはずだ。彼等にこれだけ大量の株式の取得を許したのは買い注文に呼応した売主がいたからだ。前所有者がその当時の価格で売却に合意しているのであるから、売り手も同罪だろう。すなわち株式市場の参加者の多数に対する苦言と理解していいのだろう。大きく出たものだ
逆に、チンタラやっていた阪神の経営陣に対しての問題提起はしないのか。しかほどの公益事業に上場(したがって今回のような買占めの可能性)を許してきた国や証券市場の責任はないのか
この辺の指摘はない。要は村上ファンドのみが嫌なのだ
私は別に村上ファンドの肩を持つつもりはない。また村上ファンドに対して嫉妬を感じないわけでもない。しかし、このような利益を上げる者に対する情緒的な反発を恥ずかしげもなく表明することは下品だ
仮に、こういう事情で村上ファンドが日本に居続けられなくなって海外に逃避するのであれば、悲しい。この国にその種の自由はないということだ。海外逃避は別の事情もあるのかもしれないけど、犯罪違反行為が裁判所によって確定しない限りは、そういう言い方をしてもいけないということだろう
200605292337

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