野口悠紀雄「経済学は金銭に換算できるものだけを対象にしているわけではない(通説粉砕WOW!WOW!経済塾)」週刊東洋経済2006.6.3

公開日: : 最終更新日:2012/02/10 書評(雑誌), 週刊東洋経済, 野口悠紀雄



野口氏のこのコーナーは非常にオーソドクスな考え方をしっかりと伝えてくれている。こういうことを分かった上で物を言っているのか、とマスコミや言論人には問い質したい




Q企業経営の目的が企業価値の最大化であるとされると、企業は金儲け主義に走ることになります。企業は、金銭で換算できない社会的責任を重視すべきではないでしょうか?


・「企業価値」とは、企業の将来にわたる利益の割引現在値である。公開されている企業の場合には、株式の時価総額と負債の和が企業価値に等しくなる。


・ところで、企業価値の最大化は、拝金主義や、(通常言われる)「金儲け主義」を意味するものではない。ある程度の期間を考えれば、拝金主義のみによって企業が企業価値を最大化することはできないだろう。


・例えば、従楽員を低賃金でこき使う企業には良質の人材が集まらなくなるから、好業績を継続することはできないだろう。また、粗悪品を販売したり法令違反をする企業は、ごく短期的には莫大な利益を得ることができるかもしれないが、やがては消費者が離反することになり、やはり利益を継続することはできないだろう。地城社会に受け入れられない企業も同様だ。


・だから、企業価値で表わされる長期的な利益を最大化しようとする企業は、従業員を人事にし、顧客や地域社会を大事にする。それが賢明な企業の行動だ。それらをわざわざ「企業の社会的責任」と呼んで強調する必要はない。


・そして、低い企業価値(あるいは負の価値)しか実現できない企業は、市場から撤退せざるをえなくなる。つまり、市場経済が適切に機能するなら、通常「企業の社会的責任」として要求されている事柄は、自動的に達成されることになるのである。


・ところが、現実の経済においては、さまざまの(不必要な)規制などのために、企業価値を最大化しない企業が生き延びられる結果になっている。参入規制が行なわれている産業では、それが顕著だ。こうした現実があるために、「社会的責任論」が叫ばれるのだろう。しかし、重要なのは、不必要な規制を撤廃して市揚本来の働きを実現させることである。


・なお、市場経済において企業などの経済主体は、いかなる行動も許されているわけではない。その行動は、まず法的な規則に服さなければならない。さらに、環境基準などの社会的な規制にも制約される。市場経済は決して「何でも許される経済」ではなく、きわめて厳しい行動ルールを前提として初めて機能しうる経済体制なのである。


・こうした行動ルールは、公的な仕組みで設定されるべきものである。それらを私的な企業の自己判断にゆだねてはならない。つまり、これらの設定は、企業の社会的責任の問題ではない。それを行なうのは、基本的には政府の役割だ。


・「企業が社会的責任を追求すべきだ」とするのは、企業の傲慢である。参入規制によって存立が保障されている企業がそうした主張をするのであれば、とくにそうだ。




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