改定・保育士養成講座編纂委員会編「改定・保育士養成講座2006第1巻 社会福祉」全国社会福祉協議会
保育士試験受験シリーズ(1/11)
今日から変わった書籍のまとめを連載していく。初めて保育士資格の試験を受けた。今月の2日と3日の話だ。そのために読んだ本が面白かったので試験そのものについての雑感とともに整理しておく
この本は、保育士試験を受験する人たちの間で有名なテキストだ。おそらくこの出版元が保育士試験の対策講座を開くときのテキストにしているからのようだ。確かによく試験問題とよくマッチしてまとめられている。しかし、テキストに書いてない範囲がテストに出ないわけではない
保育士試験科目は10あり、この本はシリーズで11冊ある。この本をテキストとして買う人も、最後の1冊は試験範囲ではないので買わないものらしい
この手の本によくあるように、複数の執筆者による個性が文章中に垣間見えて、その統一性のなさが気に障る。ある部分は担当執筆者自らの著作ばかりが引用されていたり、非常に退屈な文章がダラダラつづいていたり。一方では、場所によってはきれいな図表に合理的にまとめられていたり、担当執筆者の執筆部分に関する熱い思いが語られてて目を話せなかったりというよいところもある
索引は比較的しっかりしている。問題を解く練習をする際に、利用するかと思っていたが、ふたを開けてみるとこまごまとした調べ物は実際はインターネットで検索したほうが便利だった。
このテキストは何回か読み直そうかと考えていた。しかし、結局1回ずつ通読しただけで終わってしまった。大体1日2時間ぐらいで、少ないときは1/4冊くらい、多いときは丸1冊を読み進める感じ。例によって、自分の興味あるところに付箋を貼りながら。
試験を受けるつもりのない人はこの本を買わないだろう。そして試験を受ける人も、この10冊を買って通読した人は何人いるのだろうか。巷にはこの10冊でない、A5の大きさのコンパクトな1冊に内容を凝縮した本もあった。しかし、情報量こそすべてと思い、このテキスト10冊読破の修行に臨むこととし、後で買うかもしれないと思っていたこの類のまとめ本は結局は買わずじまいだった。これといった決定版がなかったことにもよる
このテキスト、試験対策を抜きにしても、読み物として面白い。特に福祉を食い物にしている人たちだから、福祉の必要性と最近の小泉改革の関係には非常に繊細に書かれているような気がする。福祉に関してはイギリスの歴史を知ることが重要だそうで、このテキストにも多くの紙面を割いてその辺の事情が説明されている。そこでも「ゆりかごから墓場まで」のスローガンからサッチャーの改革まで、なかなか興味深い説明がされており、退屈しなかった
p15.社会福祉サービスは、最近では利用用件を緩和し、また利用者負担を求めることで、利用者の普遍化が図られている。その結果、行政の直営による供給主体は、次第にその割合を低下させつつある
p27.劣等処遇の原則は、救済を受ける貧困者の生活水準が、独立自活している最底辺の労働者より「好適さ」の少ないものでなければならないという見解に基づいている。すなわちこれは、低所得労働者の勤労意欲の維持を掲げ、故意に公的救済の適用を制限したものであったが、当時から最底辺の労働者の生活水準は貧困線上に位置し、それより劣るものにするということは、事実上救済の否定を意味するものであった
p29.初期のフェビアン協会は、知識を浸透させれば議会制の範囲内で社会主義国家を実現できるという楽観主義の側面を有していたものの、新しいイギリス社会主義の浸透は、マルクス主義を排除して、1889年には労働代表委員会を誕生させ、1906年の労働党結成及び第二次世界大戦後の労働党政策綱領につながっている。その意味からフェビアン協会の主張がイギリスの福祉国家の理念確立に果たした役割はきわめて大きいといえる
20060806014700
全国社会福祉協議会 (2006.3)
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