野口悠紀雄「英語力が国力を決める時代(「超」整理日記)」週刊ダイヤモンド2006/10/07
週刊ダイヤモンドの最新号は、「外国が日本のことをどのように見ているか」という、日本人好みといわれるテーマだ。肯定的な部分を強めに編集してあるようだ。産業もまだまだ頑張れる上に、文化では極めて素晴らしいものがある。ヨーロッパは日本のアニメを見ているし、アメリカはトヨタを買うことをアメリカを買うことだと思っている、とな
しかし反対に、「日本はいまや文化的には小国になった」とするのが、同じ週刊ダイヤモンドの1ヶ月前の野口氏のこのコラムである。相変わらず的確で鋭い指摘をなさっており、反論の余地のない主張で、大変に感銘を受けた
久しぶりに英語に力を入れようと素直に思った
運の巡り会わせで偶々話せた英語を使うだけで仕事をしていると認められている人を多く見てきた。その一方には、本当に仕事ができるけど自らの英語の不完全さを恥じ入り、英語の世界には足を踏み入れようともしなかった人たちがいた。後者が前者の存在を許していた。こういう2つの人種はなくなればいい
これまでも英語に関する本はここで2つメモしている。“本城武則「なぜ私たちは3カ月で英語が話せるようになったのか」実業之日本社”と“近藤藤太「デカい態度で渡り合え! 世界中で通用する人間関係10のルール」フォレスト出版”だ
・グーグルの新聞記事検索サービスは、過去200年以上の期間にわたって、欧米主要紙の記事が検索できる。これは「驚異」としか言いようのないサービスだ
・これまでは、古い新聞記事は事実上利用不可能な情報だった。歴史学では、従来の歴史観を覆すような新発見が多数得られるだろう。それだけでなく、人文科学、社会科学を中心とする多くの分野で、学問の基本的性質に大きな変化が生じるだろう
・これまで、「もの知り」はどんな分野でも重要だったが、その価値はほとんどゼロに低下する。重要なのは、いくらでも入手できる情報をいかに活用し、いかなる結論を引き出せるかだ
一つのもの、権威あるもの、既存のもの、にこだわることの危険性に留意だ
・注意すべきは、検索対象は英語の文献が中心になることだ。日本語は含まれないだろう。つまり、今後の世界においては、英語と日本語の差が、現在よりさらに広がることになるのだ。いや、「差が本質的なものになる」と言うべきだろう。別の表現をすれば、英語を読めるか否かによって、その人の情報能力には本質的な違いが生じることになる
・ITの進歩によって、10年前には考えもつかなかった経済活動が生じている。ところが、日本はこの大変化から完全に取り残されている。その大きな原因は、日本人の英語力の低さだ
・英語力を高めるしか方法はない。そのためには、英語を勉強する時間を増やすしか方法はない。生活にかかる負担は仕方のないことだ。ヨーロッパの小国はこれまでも、そうしたことを経験してきた。その結果、これらの国では、旅行者がどんなことをするにも、英語だけで用が足りて、まったく不便しない
・英語を勉強すると、自国の文化を衰退させるという人もいる。ヨーロッパの小国がそうでない例だ。逆に、英語を勉強しなくても伝統文化が衰退することはある。ほかならぬ日本がその典型例である
義務教育での英語強化に対して、「もっと大事なことがある」と、国語や歴史教育の重要性を主張するむきがある。この「もっと大事なことがある」というのは間違っているとは思わない。しかし、じゃあどうするのか、というと「両方やるんです」(“財政取材班「民間流、事業は縮まない(財政 経済が問う)」日経平成18年6月14日朝刊”)
・日本はいまや文化的には小国になったことを、はっきりと認識すべきだ。英語の能力が国力をきめる時代が始まっている
20061105002300
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これは読むべき本 「クローバー橋」でGoogle Mapで検索してしまった。昔ニューヨークはマンハ