久恒啓一「見晴らしを良くすれば仕事は絶対にうまくいく!」実業之友社
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最終更新日:2012/01/30
書評(書籍)
著者は昔、日本航空にいらっしゃったそうだ。個々の従業員は素晴らしい人も多いのに、どうしてこの会社は全体としてあんまりなんだろうと思う。同じくこの会社の従業員であり、私のもっとも私淑する方々の一人である、さる有名な書評家に勧められたから、この本を読んだんだと思う。有名なメルマガのアレで、早朝とかBSCとかのあの方です
「見晴らしを良くする」という切り口から、ビジネスのいろいろな局面におけるあるべき行動パターンを説く一種のハウツー本であり、自己啓発本である。おおむね賛同できる内容である。ただまとまりには欠ける。読み散らして、気になる記述を留意するイメージ
丁度2年前くらいに購入して貯めておいたものの一つだ。だからもう店頭には並んでいないかもしれない
p16.多少の能力の差よりも、実は全体を見晴らす位置取りこそが、パフォーマンスに大きな差をもたらすのではないか、という仮説が浮かんだのです
p20.後輩に頼んで、もう少し課の全体が見えるような場所に席を代わってもらったことがあります。すると今度は、部長のところにだれが来てどんな相談事をしているかとか、どこのマスコミが来ているかといったことが実によくわかるのです
p38.例えば、東京と九州・鹿児島、北海道・札幌、そして韓国・釜山はほぼ等距離であることに気づきます。また大阪や神戸からですと、ソウルは青森と同じくらいの距離で、札幌よりもはるかに近いということがわかります。国境という概念を離れ、純粋に理知的な観点から見ると、実は隣国の韓国はほとんど日本国内と大差ない距離なのです。これはロシアについても同様です。東京-ナホトカ間は東京-鹿児島間とほぼ等距離です。そしてその向こうには、豊富な地下資源が埋蔵されているアムール川が横たわっています。さらにその向こうは広大なシベリアの平原が広がり、ヨーロッパとは地続きにつながっているのです
p50.分けていって、どうなっているのかと調べることが養老先生の手法です。解剖を続けているうちに、いろいろなものが見えてきて、先生は一つの強力な武器を手にしました。解剖学をベースにした、普遍的な方法論です
p66.私は現在、いろいろな仕事をかけ持ちしているので、実に多様なジャンルの人に会う機会が多いのですが、有名になっている人、業績をあげている人は、例外なくタイムマネジメントが上手です。偉い人ほど、時間管理に関しては、ものすごい理念とか独自のノウハウを持っています。仕事ができる人というのは、時間の管理にたけているのです
p82.キーパーソンというのは、見晴らしの良い人のことです。ある分野について熟知している人のことを、私はキーパーソンと呼んでいます。私たちは、個々の分野すべてについて見晴らしを良くする必要はありません。ふつうの人はそんなことができるわけがないのです。私たちは、だれがその分野で見晴らしが良い人なのかをつねにチェックして、情報としてストックしておけばいいのです
p85.もし、キーパーソンと知り合いになれたら、今度はたえずコンタクトを取り続けて名前を覚えてもらう、あるいは自分とい存在を記憶にとどめてもらう仕掛けをする必要があります
p87.パーティに出席した場合には、いつも同じ仲間で固まらないで、なるべく初対面の人と接しましょう。そして、名刺交換をしたら、あとで礼状を出したり、メールを送るなど継続的に付き合うためのコストと時間を惜しまないことです
p89.山では「道に迷ったらリーダーに従え」といわれています。リーダーになっている人の判断がだいたい正しいのです。不思議なもので、経験の豊富さよりも、リーダーという地位が正しい判断に導くのです
p91.チェアマンという立場には価値があるのです。幹事役や司会役はできるだけ引き受けるようにし、自分が成長するための機会としても活用しましょう
p102.早く出社すれば、雑用を引き受けられるというメリットもあります。雑用というと言葉の響きがあまりよくありませんが、実はとくに若いビジネスパーソンは成長のための道具として、けっこう使えるのです
p103.経験上、社会的に地位の高い人は、雑用をたくさん抱えているものです。しかし、偉い人の周りには案外、実務や雑用をこなしてくれる人がいない場合が多いようです。ですから偉い人は雑用にうんざりしているのです
p109.文章だけで書かれた書類は見晴らしが良くないので、なかなか意見が出ません。一般的な会議や行政の審議会などでは、見晴らしの悪い資料が多いのです。資料を作成した事務局は当然よく読んでいるので、資料の内容を熟知しています。ですから、出席者はとんちんかんな質問になることを恐れて、みんな発言を手控えてしまう。こうした会議や審議会は、非常に見晴らしが悪いわけです
p112.石原慎太郎東京都知事は織田信長、ダイエー元会長の中内さんは坂本竜馬、ソフトバンクの孫正義さんはナポレオンを自分の師と仰いでいるそうです。彼らは歴史上の人物と自分を対比し、見晴らしを良くしながら、仕事をしてきたのです。トップになって人々をリードする立場にいる人も、実はみんな心の中にライバルを持っているものなのです
p119.仕事というのは、実は人の言うことや資料などを読んで理解する力、自分で考えることのできる企画力、人に伝えて巻き込むことができる伝達力、この3つの力があれば事足ります
p129.「仕事」には、行なうのにそれなりのノウハウや知識、創造性の必要なもの、自分でなくてはできないものが当たるといえるでしょう。「作業」は、マニュアルを作るなどして手順化すれば、だれでもそれなりにこなすことができるルーティン的な仕事が該当するといえるでしょう
p130.企画がなぜ楽しいのかといえば、企画にはつねに新しいものを考え、挑戦するという精神が不可欠だからではないでしょうか。進化しない上司は、自分の仕事がなくなると思い込んでいるので、部下に仕事を任せるのを嫌がります。しかし、その考え方は間違っています。自分が進歩して、自分で仕事を新たに開拓すればいいのです。上司と呼ばれる人には、こうした発想が必要なのです
p131.上司の中には、情報を制限して出さない人もいます。部下たちを分断して作業をやらせて、自分だけまとめようとする。こんな分断統治では、仕事はうまくいきません
こういう人は所詮は職人として一人分の仕事しかできないのだ。自分の手を動かして始めて対価が貰えるのだから、いつも忙しいし、もともと有限である時間を使って始めて対価が貰えるのだから上限も自ずと決まってくるのだ。それでも悪いことではないが、上司を名乗ることはできない
p137.仕事には人に任せられるものと、任せられないものがあります。雑用だけ秘書に任せるつもりでも、あの高杉晋作でさえ「人生の95%は雑用だ」といっているように、雑用というものはものすごく多いのです
p139.情報化時代の進展とともに、組織のあり方も変わりました。現在は、上司も部下も同じ情報を持っていたほうが、効率よく仕事ができるといわれています。情報を分断していた昔型のリーダーにはつらい時代です。半面、リーダーは部下に情報と権限を委譲して手が空いた分、緊急時に自分が先頭に立ってトラブル処理に当たれるよう、準備をしておくことが求められます
p140.説明をしてくれない上司、決断してくれない上司が一番困るのです。責任者だって間違えることはあるはずです。間違えない上司というのは、何もしないから間違えることもないというだけなのではないでしょうか
p143.通説というのは、一般にみんなが正しいと思っている説のことです。ところが、通説はいつも正しいわけではありません。みんなが正しいと思っている説でも、よくみると間違っているケースが多いのです
p171.顧客から安心と信頼を勝ち取ろうと思えば、顧客を見晴らしの良い場所まで引き上げればいいのです。見晴らし台を高くしてあげると、顧客は自然にこちらの考えに近くなってきます
p192.「マジックセブン」といわれるように、人間の脳が一度に覚えられるのは7つが限界だそうです
p195.私はマイホームページを持っています。ホームページの最大の利点は、自分のことが見晴らし良く見えることです
p196.私のホームページは、私の脳をそのまま移植している感じなのです。脳で考えていることを図にして、逐次ホームページに落とし込んでいるのです
こうやって落とし込んで吐き出すことによって、ぽっかり空いた脳に新しい考えが充填されてくる
p202.そもそも、万人に受け入れられる考えというのはそうたくさんあるものではありませんし、八方美人的なアイデアは、言ってみれば濃度の薄い情報です
p210.自分の脳は自分で見ることができません。見晴らしが利かないのです。しかし、ホームページをつくって、自分の脳を外に出せば、見晴らしが利くようになります。脳の見晴らしが良くなれば、自分のやるべきことがはっきりしてきます
p212.自分自身のナレッジ・マネジメントができないような人は、会社のナレッジ・マネジメントなどできません。インターネットもそうですが、個人的に活用している人はその知識を会社の中で生かすことができます
p220.「上、下を見ること3年、下、上を見ること3日」という戒めがあります。上司は部下を3年見なければわからないが、部下は3日で上司の力量を見抜くという意味です
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