井上靖「風林火山」新潮文庫

公開日: : 最終更新日:2011/09/19 書評(書籍)



井上靖は有名であるものの、自分には縁遠い。昔、「敦煌」が映画化されたとき、原作は読んだ。「額田女王」など、買ったけど読んでないものもあった


この本は、今年の大河ドラマの原作だったから読んだ。もともと歴史小説は好きだ。戦国時代のものは読めば読むほど人物や話が繋がっていくのでどんどんマイナーなものを読んでいくようになる


人に聞かれたら、まず司馬遼太郎を読んでもらうのだろう。まず「国盗り物語」で道三と信長と光秀を知る。つぎに、「新史太閤記」で秀吉の視点から天下統一までを通覧していく。そして「関ケ原」で秀吉後の動きを見る。これで一通りの知識は得られる。


それからメインストリートではなかった戦国大名のことを見ていくといい。この作品もそのような位置づけかもしれない。あくまで甲斐武田氏のことだけを書いているし、地理的な広がりも隣国にとどまるのだ


内容もハッピーエンドではない。カタルシスはない。正直、この原作を忠実になぞるだけでは1年の大河ドラマはできない。その証拠に、前回までの大河ドラマの内容は、原作には存在しない。おそらく明日の内容もそうだ


表記法はすこし嫌だ。とくに「併し」が嫌だ。「筈」が嫌だ


当然ながら、今年の大河ドラマも見ている。だって受信料払っているし、大河ドラマの豪華な映像が見たいんだもの




p29.彼は平生遠隔の地から来た旅人に会うと、そこから詳細に亘っていろいろな知識を引張り出すことを忘れなかった。記憶力や想像力は、自分でも驚くほど非凡だった。一度聞いたことは決して忘れなかったし、ただ一つの知識の欠片から、際限もなくいろいろなものを引き出すことができた


p33.板垣信方だけには、晴信が勘助をかばう秘密が判っていた。父信虎に疎まれて、不遇な幼少時代を送った彼は、妙に異相の武士とか、人から信用されぬ逆境にある武士とかの肩を持つ性癖があった


p158.信濃での合戦であってみれば、こちらから少しでも先きに踏み込んで行きたいところである。それを反対に、相手に踏みこませ、海野平でそれを迎撃しようとするのは、満々たる自信である。誰の眼にも合戦の場としては、一応川中島が映る筈である。併しまだ一度も槍を合わせたことのない相手と、川中島で顔を合わせれば、勝てばよし、負ければ命取りになる。川中島での合戦は、地形の関係上、どちらにとっても決定的なものになる筈である。それを避けたところは、やはり晴信の持っている慎重さと見ないわけには行かぬ。海野平なら、双方とも軍を引くのに都合がよい


p168.これでいいのだ。長尾景虎を討つのは他日を期すべきである。いま追い討ちをかけたところで、雑兵の百や二百は討つかも知れぬが、甲斐勢の騎馬長槍の追撃戦の妙を、徒に敵方に披露するだけのものである


p205.晴信はこの返信を認めると、勘助一人を招んで、これを彼に示した。すると、勘助は、「これで結構でございます。ただ、”合戦を始めようと思うなら”の次に、”貴殿より合戦を仕掛けて来て戴きたい”という一行を書き加えて戴き度うございます」と言った。「どうしてであるか」晴信は訊いた。「なるべく、今のところ、景虎を刺戟しない方がよろしゅうございます。こちらには積極的な合戦の意志のないことを、繰返し繰返し、先方へ強調すべきでございましょう」


p209.この使者が立った翌日、午の刻に、景虎はさっと陣を払って、越後へ軍を回した。こうした景虎の仕打ちは、勘助には恐ろしいものに見えた。20歳前後の若い武将のやることではなかった。軍を退くことに何の未練もなかった。景虎は何回も北信を侵して、晴信を甲斐から出動させ、最も自分に好都合な決戦の機を覘っているもののようであった


p233.「勘助」信玄は烈しい声で叫んだ。「その時は北条へ行っている姫はどうなるかな。そして今川から妻を迎えている義信はどうなるかな」勘助は、この時、自分の体が次第に細かく震えてくるのを感じていた。信玄は、勘助の心の底の底まで見抜いている風だった


p276.勘助が自分の老いを感じたのは、武田氏へ仕官して以来、この時が初めてであった。自分は高坂昌信に敵わないと思った


p324.勘助は暫くの間義信の面から眼を離さないでいた。永年、この若い武将を取り巻く勢力に、勘助は対抗して来た。勘助はこの勢力から、由布姫を護り、於琴姫を護り、そして勝頼を初めとする妾腹の子等を護り抜いて来たのであった




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