速水敏彦「他人を見下す若者たち」講談社現代新書

公開日: : 最終更新日:2011/12/09 書評(書籍)



取り沙汰されているし、キャッチーなタイトルだし、新書だから読みやすいかと思って手に取ったのがこの本


巻頭に置かれた断り書きがこの本の性格を正しく表している。いろいろな証拠らしきものをもとに論説を展開していくのだけれど、本当に証拠になっているのかイマイチなところがあり、読んでいてフワフワ感がある


事例集としては面白いと思う。人の心を読むという感じを得たり、身近な人に当てはめてレッテル貼って楽しむためには参考になる本だと思った


まあ、新書程度の価値はあるかな、と




p16.最近の若者の奇異な行動は、彼らの感情の持ち方が以前の若者と変わってきたことに連動していよう。しかし、どのように変化したかを確かめることはむずかしい。過去の人間が感じた感情を拾い集めて現在のそれと比較する、客観的かつ妥当な方法はない


これって相当致命的な気がする。この本を読んでいても論拠不明と感じる部分が多く、どのように評価していいか悩ませられる


p45.既に何年か前から現代人は「悲しみ」よりも「怒り」を感じる時代に突入していると考えられる。事実最近の、特に若者にあっては、「キレる」とか「むかつく」という言葉が氾濫し、怒りを露わにするような事件が、頻繁に起きていることからも類推できる


p50.千石保氏が指摘しているように、子どもたちは自己決定することをあたりまえと感じるようになった。しかしこの風潮は子どもたちに、何でも自分たちで決めればよいのだ、といった考えを助長してきたことは確かであろう


p62.子どもたちが大志を抱こうとしないのは、大人側にも責任があろう。子どもや若者たちが大きな志を抱こうにも、周りにモデルとなる大人が存在しない




子どもを産み、育てる大人以外にどこに責任があるというのか。過去と現在では生まれながらにして子どもの感情にも違いがあるとでもいうのか




p64.つらい苦しい試練を伴うクラブ、例えば、山岳部やワンダーフォーゲル部というようなクラブは、どの大学でも崩壊寸前という。また、女性との接触がほとんどない男声合唱団などは、どの大学でも衰退の一途を辿っている。男女混合が好まれるということで言えば、大学でも、女子大などは人気がなくなり、男女共学に鞍替えしているところも少なくない。大学は異性と楽しむ要素がないと魅力がないという傾向が生じていることは事実であろう


p67.今の学生達は前のめりの姿勢ではない。あまり気張っていないと言う方がよいかもしれないが、一定の方向にエネルギーを思い切って投入するというよりも、よく言えばバランスよくエネルギーを放出している。大学の授業だけを見れば、特に最近の学生の出席率はすこぶるよくなっており、昔の学生のように、朝から雀荘に出かけたりする無茶な学生は、少なくなった。適当に勉強をして、親しい者同士の飲み会や旅行などを中心に、毎日の生活を楽しく工夫して過ごしている。ある意味ではより堅実ないきかたをするようになったのかもしれない


p78.高度産業社会では、誰もが何かの専門を学んで各人がプロ意識を持つために、それが一人の個人を全体として有能な人物としてみなすことになり、相対的に他者をバカにすることに繋がっているのかもしれない


p103.現代社会は選択の幅が広いために、誰もが「オンリーワン」の気分を持ちやすい。オンリーワンというのは独自性があることで、必ずしも優れていることには繋がらないはずだが、総合的に判断する場合、比較対象がないことで好意的な主観的判断に陥りやすく、誰もが自分が並み以上という感覚を持ちやすい


p110.中退率が高い高校で、「自分には、他の人と違った才能があると思う」と言うのであるから、彼らの中には、いわゆる「オンリーワン」の夢を抱いている者が多いのかもしれない。おそらく、学校の成績という次元で考えれば、これまでの学習経験から、彼ら自身が特に才能に恵まれているとは考えがたいであろう。そこで彼らは「他の人と違った才能」というものを仮定するのである。「自分には他人にない何か優れたものがあるにちがいない」という思いを信念のようにして抱こうとするのである。しかし、おそらく、それがどのような才能であるかと問われるならば、彼らは答に窮するであろう。能力の内容はよくわからないが、とにかく自分には何人にもない特殊な才能があるはずだ、という根拠のない自己肯定をしているのである。前にもふれたように最近の社会では、「オンリーワン」という言葉が流行歌の歌詞にもなり、非常によいイメージが持たれているが、この考えには落とし穴がある。なぜなら、多様な比較の次元を持つことは人間にとって幸福なことではあるが、誰もが勝手に好ましい自己評価をし、自分にもすばらしいところがあるにちがいないという、楽天的な見方を構築しやすいからである


p121.あまり自分が経験したことのない領域や、自分に対して評価が定まっていない領域で、仮想的有能間は生じやすいと予想される。例えば、「数学の能力」といったものではあまり機能しないが、「将来を見通す能力」などといった漠然としたものに仮想的有能感は反映されやすいと言える


p128.彼らの関心はかうまで自分にある。自分を友人がどう見ているかという観点で、友人を意識しているのである。自分が友人をどうみるかということにはさしたる関心もない。友人が生真面目な人であれ、ルーズな人であれ、相手を詳しく知って自分の参考にしようという志向も弱いように思われる


p195.最近のテレビでは座談会形式やゲーム形式の番組が多く、そこに登場する司会者たちが巧みに聴衆の笑いを誘うように話を展開させる。また、そこに集まっている人たちも、俳優や歌手といった日頃観客を相手にしている人が多く、笑いをとるツボを心得ていて、司会者の働きかけに、実にうまく対応し、笑いを拡張させる。そのようなやりとりを見ていると、聴衆を意識して笑いを生む公式、技術のようなものを彼らは十分に修得しているように見える




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