坂本桂一「頭のいい人が儲からない理由」講談社

公開日: : 最終更新日:2012/09/19 書評(書籍)



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かなり刺激的な本だ。とりわけ、学校の成績や会社での評価の高そうなサラリーマンに対する辛らつな記載はメモしたとおりの舌鋒の鋭さ。しかし、なるほどと思わせる記述ばかり


ちり紙交換、オーロラ、筆王など、自らの経験に照らして主張している部分は説得力を感じる。筆王のマッキントッシュ版の撤退のために唯一のライバルと交渉するところは競争法が気になる。これは、ゲーム理論でも感じたこと。また、サクラを使うところは詐欺的ではないかという疑義を禁じえない。でもそういう常識でモノを考えていてはいけないのだというのがメッセージなんだろうけど、それはそれで…


ソフトバンクの孫氏に対する記述が多い。彼の携帯電話会社の既存ユーザーとしても、これまでの経営者とは異なる、一筋縄では行かないものを確かに感じる




p24.私など、これが癖になっているから、一緒に食事をしても、それこそワイングラスの持ち方ひとつからスーツの素材、どの話題のときどんな表情をしたかなど、気づいたことはすべて情報として取り込み、短時間で相手のシミュレーターをつくってしまう。だから、食事を終えるころには、目の前の人がどんな性格で、過去にどんなレベルの人たちとどういうつきあい方をしてきたかまで見えてしまうのだ。


p31.変化に弱いというのはビジネスマンとして致命的だ。仏教が諸行無常というように、この世はつねに変化し続けている。戦後の60余年だけみても、社会常識の50%は変わったはずだ


p40.ビジネスでは大企業ほど有利であるという根拠なんてどこにもない。それなのに、なぜかみんな小さい会社は大企業に勝てないと思い込んでいる


p42.彼らの理屈はこうである。最初のうちは広告やらマーケティングやらでカネがかかって儲けなんてほとんど出ないだろうから、こちらの利益も少なくていい。その代わり、十万個も売れるようになったときには、たいした努力をしなくても左団扇でカネが入ってきているはずだから、そうしたら半分はこっちにくれというものだ


p48.私が彼に求めたのは、献身的な努力でなく結果である。そして、きちんと結果が出せる人間だと踏んだからこそ、私は彼に任せたのだ。徹夜でふらふらになって、ここまで頑張っていますなどという姿など見せてくれなくていい。それより家に帰ってゆっくり風呂に入り、栄養のあるものを食べてたっぷり寝て、コンディションを整え2倍、3倍の能率で働いてほしかったのだ


p51.忙しい人が人より多く稼いでいるかといったら、決してそんなことはない。忙しい人というのは単に、時間の使い方、生かし方がそれだけ下手なのだ。そういう人がなにに時間を使っているのかをよくみてみると、たいていは、どうでもいいことに毎日何時間も費やしていて、肝心なことをやっていない


p54.人脈が何百人、何千人いると自慢する人というのは、そうやって一度名刺交換しただけの人を、たいして親しくもないのに人脈だといっているのだろうが、そういう浅い人脈なら私には必要ない。だいたい、自分の仕事にメリットがありそうだから友達になるなんていうことがあるのだろうか。そういうのは本当の友達とはいわないだろう。私は、いくらこの人は仕事にプラスになりそうだと思っても、私の人生にプラスにならないような人とは、付き合いたいとは思わない


p56.私自身この20年、新聞をまったく読んでいない。それまでは毎日5紙、それこそ隅から隅まで舐めるように読んでいた。でも、やめた。ムダだと気づいたからだ。それで、なにか不自由があったかというと、なにもない。新聞には、昨日政治や経済ではこういう動きがあった、どこそこでこんな事件があったということが、ほとんど検証も整理もされないまま等価の記事として掲載されている。そんな粗雑なメディアにいったいどれほどのバリューがあるのか、新聞が大好きな人は一度冷静に考えてみてほしい。のち、ウソだった、間違いだったという記事はたくさんある


p98.私は、筆王が市場からいなくなったら向こう3年間で宛名職人の売り上げと利益はこうなるという計算をし、それを持って宛名職人の販社であるライバル会社、アジェンダの社長を訪ねた。そして、「筆王をこのままつくり続けるのはウチにとってきびしい。私としてはできれば撤退したいのだが、そのためには社内の調整をしなければならない。なんとか協力してくれないか」と切り出し、おもむろに計算書を見せ、「筆王の撤退によって宛名職人にはこれだけの増益が見込める。その半分を3年分だけウチにくれ。そうすれば、開発の人間も他の役員も説得できる」という提案を突きつけた。もちろん、向こうに断る理由なんてあるわけがない


p101.筆まめが売れた理由のひとつは、筆という語感にあると私たちは最初からみらんでいた。たとえば「宛名職人」より筆まめのほうが、年賀状ソフトとしては断然しっくりくる


p112.正直にいうと、当初はちり紙交換という仕事が恥ずかしくてたまらなかった。東大生というプライドとちり紙交換に対する偏見が相まって、いくら借金を返すためとはいえ、かっこよくない仕事に携わっているという惨めな気持ちでいっぱいだったのだ。それが、ちり紙交換のメカニズムがわかりはじめ、自分の仮説を現場で証明するおもしろさに目覚めてからというもの、ちり紙交換こそ自分の天職ではないかと思えるくらい意識が変わっていた


p116.シンプルに行動する。店頭に商品を積み上げる必要があるなら、流通会社とマージンの交渉をして余計に仕入れてもらうなどということをしなくても、直接ショップに行って、「10万円払うから100本並べてくれ」でいいのである。あるいは、タダでいいから置かせてくれといえば、まず断られはしない。山積みの商品が一日で完売したという実績が欲しいなら、サクラでもなんでも使って空にしてしまうのだ


p132.ビジネスにこうすれば必ず成功できるなどという法則はない


p138.自分は一生サラリーマンで、電卓を叩いてエクセルの表を埋めるようなルーチンワークだけやっていればいいと思っているのなら、調べたり処理したりする能力だけあればいいだろう。だが、いずれビジネスの最前線で事業を起こしたい、市場を開拓したいという野心が少しでもあるなら、考える力がなければ絶対に成功しない


p146.成功した社長には、ある共通した特徴があることに気がついた。それは、執念深さだ。とくに、創業社長はみな例外なく、異常とも思われる執念深さの持ち主である


p149.その会社が大きく成功するかどうか知りたければ、社長を見ればいい。社長があっさりした性格だったり、非合理な努力を嫌うようだったら、たとえ現在どんなに調子がよさそうにみえても、その会社の未来はあまり明るいとはいえない。長嶋茂雄は気になることがあると、夜中でも起き上がって布団の上でバットをぶんぶん振ったという。誰でも王の半分練習すれば一流選手になれると、王貞治を育てた荒川博はいっていた。どんな世界でも常識で理解できる範囲の執念しか持ち合わせない人間では、成功者と呼ばれるようにはならないのである


p154.毎日毎日シェルターの壁を厚くしていって、人生最後の人をもっとも安全に過ごすことにどれだけの価値があるか、一度考えたほうがいい、それは、教習所の練習コースから一生出なかったようなもので、事故を起こさなかった代わりに、フェラーリやポルシェの快感も知らず死んでいくということなのだ。少なくとも私には耐えられない







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